よく問われる質問の一つに、ノウハウは出願すべきかということがあります。これに対し、私は次のように答えるのを常としております。
@隠しておくに値するノウハウか否か
ノウハウではあるが、その技術分野において通常の知識を有する者が、通常の業務の中で、自ずと明らかとなるノウハウであるなら、隠しておいたとしても、同業者は、いずれそのようなノウハウに至るでしょう。従って、先にそのノウハウを開発した者は、そのノウハウにつき出願した方が得策です。
A次に、ノウハウについて特許を取得しても、侵害の立証が困難であり、@のような場合でも、出願するメリットはないのではないか、との疑問がわくかも知れません。
ノウハウ特許の侵害立証が困難であることは、確かにその通りです。しかし、他人のノウハウ特許の公報を見てそのノウハウを実施した者は、常に侵害していることの意識にさいなまされるはずであるし、侵害の事実を知られるのを恐れ、うかつに工場見学会などを開催できないこととなります。このような点から、通常、大きな会社では、他人のノウハウを真似るようなことはしないと考えられます。このようなことを考慮すると、いずれ他人の気づくこととなる@のようなノウハウは、積極的に出願しておくべきでしょう。
B結論
以上のことから、ノウハウは、「他人が絶対追従できない」ものだけを秘蔵し、それ以外のノウハウは出願すべきでしょう。