はじめに


 特許実務に携わる者にとって、最良の明細書とは何かということは、永遠のテーマでありましょう。私自身このテーマに取り組み、諸先輩のご指導を受けながら、また、自分なりの法解釈に従い、自分なりの明細書スタイルを構築してきました。

 この明細書スタイルは、時代とともに、さらには、特許法の改正に伴い、種々変遷していかざるをえないものであります。特に近年では、特許出願の国際化により、日本出願とともに外国への出願も多く、基礎となる日本出願明細書作成にあたっては、外国での開示要件をも念頭に置く必要性も出てきております。

 しかも、特許明細書の作成方法は、発明の種類や技術分野毎にその技術の特質に応じて異なるものであります。

 とはいうものの、明細書の作成に要求される基本条件は、どのような時代であれ、また、それがソフトウェアに関連するものであれ、バイオテクノロジーに関するものであれ、変わることのない普遍的な面もあります。

 時折、ソフトウェア関連発明やビジネス関連発明、バイオ関連発明の明細書は難しいという声を聞きますが、よくよく聞いてみますと、特許における基本的ルールを知らないことがその主たる理由であったりします。最先端の技術を扱うとき、その技術の特殊性にばかり注意が向いて、特許法の基本的ルールからの発明分析を怠ってしまうとき、そのような落とし穴に陥るように思えます。

 そこで、今回は、「特許明細書を作成する」という視点で特許法全体を見渡し、明細書作成に必要な基礎知識を紹介するとともに、提案された発明を明細書に仕立て上げるために、どのようなテクニックが必要なのかについて、平成5年改正法や、平成6年改正法等、平成11年改正法など最新の改正法を交えて一般的に解説することとし、その理解の上で、ソフトウェア関連発明、ビジネス関連発明の明細書作成方法に言及することとしました。

 


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