【特許請求の範囲】の表現形式

(01/06/01改訂)


 日本では、クレームの表現形式につき、特に規定はなく、書き手の書きやすい方法に従って記載しているのが通常です。但し、請求項毎に、一項で記載することが習慣となっております。これは、大正10年法におけるクレーム形式のなごりとされております。いずれにせよ、発明の性質に応じて、最も表現がしやすく、しかも、わかりやすくて、誤解のない記載方法によるのが好ましいことは言うまでもありません。以下、慣例的に使用されている表現形式を例示します。

<順次列挙形式(方法的記載)>

 AにBを立設するとともに、このBの先端にCを設け、このCにDを取り付けて形成した装置X。

 この形式は、方法クレームのように、あたかも物を製造するかのように、時系列的に順次構成要素を説明して行く記載方法です。必ず前に述べた構成を受けて次の構成を説明するので、構成要素間の有機的結合関係の説明を漏らすことなく記載できるというメリットがあります。

<構成要素列挙形式(一項記載)>

 Aと、

 このAに立設したBと、

 このBの先端に設けたCと、

 このCに取り付けたDと、

 を備えた装置X。

 メリット:構成要素が明確に分かる。米国の comprising〜(オープンタイプ)クレームに訳しやすい。

 デメリット:油断すると各構成間の有機的結合関係を記載し忘れることがある。


<構成要素列挙形式(箇条書)>

 以下の構成を備えた装置。

  (1) A。

  (2) 前記Aに立設したB。

  (3) 前記Bの先端に設けたC。

  (4) 前記Cに取り付けたD。

<ジェプソン形式:おいて形式>

 Aと、

 このAに立設したBと、

 を備えた装置において、

 このBの先端に設けたCと、

 このCに取り付けたDと、

 を備えたことを特徴とする装置X。

 メリット:発明の特徴部分を強調して表現しやすい。

 デメリット:この形式をそのまま訳して外国出願すると、国によっては、おいて以前が従来例であると解釈されることがある。

 おいて以前の構成の絞り込みがどうしてもあまくなりがちで、不用意な限定をしてしまうことが多い。

 

<変形構成要素列挙形式>

 Aと、

 Bと、

 Cとを備え、

 前記Aは・・、

 前記Bは・・、

 前記Cは・・、

 であることを特徴とする装置X。

<マーカッシュ形式>

 a,b,c,dの群から選ばれる1または2以上の物質。

 a,b,c,dの群から選ばれる1または2以上の物品と、V、W、X、Y、Zの群から選ばれる1または2以上の物品とを備えた装置。

 メリット:複数構成の組み合わせ毎に請求項を作らなくともよく、費用が安価となる。

 デメリット:すべての構成の組み合わせを、組み合わせ毎に詳細な説明に書いておかないと、後日、特定の組み合わせに限定することが不可能となる(発明の認識がなかったとされる)場合がある。

東京地裁平8(ワ)14828号・148333号:徐放性ジクロフェナクナトリウム製剤事件では、3つの物質を発明の構成要件として選択的に記載したクレームにつき、その一つ(HPという物質)が他の2つと異なる特徴を有する場合につき、次のような趣旨を判示している。

「本件発明において、原告は、HP基を有するために構造的に安定している皮膜を用いたという点に技術的特徴を有すると主張する。しかし、他の2つの物質はいずれもHP基を有していない。原告の主張は、特定の3種の物質を特定用途として用いることが択一的に表現されている本件特許発明において、これらの内の一種についてだけの特徴を本件特許発明の技術的特徴であるとするものであって失当といわざるを得ない。(筆者が要約した)。」

 すなわち、一つの請求項の中で、マーカッシュ形式のように選択的に構成要素を特定した場合、すべての構成要素に共通する技術的意義が特徴的部分として保護されるのであって、その中の一つの構成要素のみに特有な事項は、発明の特徴部分として扱われず、保護範囲外とされるというのである。

 もし、択一的な形式をとらずに、一つ一つに分けて請求項と作成したならば、個々にその独自の特徴部分が保護されるということになります。

 

 

 


<means+function形式>

 これは、ソフトウェア関連発明に特有の表現形式で、発明の各構成を、機能の集合として捉え、機能毎に対応して機能実現手段が存在するものとして特定する表現手法です。

 このmeans+function型に具体的なハードウェア資源を取り込んだ特定手法も可能です。

 メリット:機能で特定するため、権利範囲を広くカバーできる。

 デメリット:具体的な機能実現手段を数多く例示しないと、権利範囲が事実上限定されると考えられる。特に米国では112条第6パラグラフで、このクレーム形式の権利範囲は、実施例とその均等物の範囲とされている。
 機能実現手段で発明を特定した場合に、明細書に開示した事項との関係で、限定解釈される場合があります。
 東京地裁平八(ワ)第二二一二四号平10・12・22 実用新案 磁気媒体リーダー事件では、以下のように判示しています。

 実用新案登録番号 第一八〇二四七六号の請求の範囲の記載

A 磁気ヘッドを媒体に摺接走行させて情報の記録或いは再生を行う磁気媒体リーダーにおいて、
B 上記磁気ヘッドをレバーに回動自在に支持すると共に、
C 該レバーを前記媒体に沿って走行させる保持板に回動自在に支持することにより、
D 上記磁気ヘッドが上記媒体との摺接位置と上記媒体から離間した下降位置との間を移動可能とし、
E 上記磁気ヘッドと上記保持板との間に、

(α) 上記磁気ヘッドが下降位置にあるときは上記磁気ヘッドの回動を規制し、
(β) 上記磁気ヘッドが媒体との摺接位置にあるときは上記磁気ヘッドを回動自在とする回動規制手段を設けたことを特徴とする
G 磁気媒体リーダー

 争点に対する判断として、裁判所は、構成要件Fの該当性について、右(明細書の記載)によれば、「構成要件Fに係る実用新案登録請求の範囲のうち「上記磁気ヘッドが下降位置にあるときは上記磁気ヘッドの回動を規制し、」との記載は、「磁気ヘッドがホームポジション又はエンドポジションで停止しても磁気ヘッドが正常な姿勢でいるようにした」という本件考案の目的そのものを記載したものにすぎず、「回動規制手段」という抽象的な文言によって、本件考案の磁気媒体リーダーが果たすべき機能ないし作用効果のみを表現しているものであって、本件考案の目的及び効果を達成するために必要な具体的な構成を明らかにするものではないと認められる。」とし、さらに、

このように、実用新案登録請求の範囲に記載された考案の構成が機能的、抽象的な表現で記載されている場合において、当該機能ないし作用効果を果たし得る構成であればすべてその技術的範囲に含まれると解すると、明細書に開示されていない技術思想に属する構成までもが考案の技術的範囲に含まれ得ることとなり、出願人が考案した範囲を超えて実用新案権による保護を与える結果となりかねないが、このような結果が生ずることは、実用新案権に基づく考案者の独占権は当該考案を公衆に対して開示することの代償として与えられるという実用新案法の理念に反することになる。したがって、実用新案登録請求の範囲が右のような表現で記載されている場合には、その記載のみによって考案の技術的範囲を明らかにすることはできず、右記載に加えて明細書の考案の詳細な説明の記載を参酌し、そこに開示された具体的な構成に示されている技術思想に基づいて当該考案の技術的範囲を確定すべきものと解するのが相当である。
 ただし、このことは、考案の技術的範囲を明細書に記載された具体的な実施例に限定するものではなく、実施例としては記載されていなくても、明細書に開示された考案に関する記述の内容から当該考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が実施し得る構成であれば、その技術的範囲に含まれるものと解すべきである。」とした上で、
 「これを本件についてみると、右に認定したところによれば、本件考案の構成要件Fの「回動規制手段」につき本件明細書で開示されている構成には、保持板及び磁気ヘッドホルダーの双方に回動規制板を設け、その一方に係合部を、他方にピンを設けるという構成、並びに、保持板及び磁気ヘッドホルダーのいずれか一方に設けた回動固定板に係合部を設け、他方にピンを固定するという構成しかなく、それ以外の構成についての具体的な開示はないし、これを示唆する表現もない。したがって、本件考案の「回動規制手段」は、右のとおり本件明細書に開示された構成及び本件明細書の考案の詳細な説明の記載から当業者が実施し得る構成に限定して解釈するのが相当である。」とし、被告装置は本件考案の構成要件Fを充足せず、その技術的範囲に含まれるものではないとした。

 この判決は、機能実現手段で発明を特定するときは、その機能を実現するための具体的手段をできるだけ多く開示しておく必要があるということを示唆するものです。

請求範囲表現上の注意点

@「〜できる」と表現しない。

  「できる」というために、どのような構成としたかが問題とされるからです。

  「〜できる」を使用しなければならない時でも、他の表現、例えば「〜する」「〜される」という表現で同じような意味を表すことができる場合があります。

  「水に浮くことができる本体と、」 →「水に浮遊する本体と、」

 

A できるだけ「上」・「下」・「左」・「右」等と表現しない。「一端」・「他端」・「先端」・「基端」と表現する。理由:無用な限定を避けるため。

B 外国も意識しておく。例:米国明細書スタイルに対応できるように、「〜と、〜と、〜とを備えた装置」としたり、ヨーロッパ形式に対応できるよう、「 〜において、〜を特徴とする装置」とする場合、おいて以前を従来例とする等の考慮をする。

C 「〜有する」、「〜備えた」という用語の使い分けで、構成要素を階層的にするとわかりやすい。

 例

  ・・・・を有するAと、

  ・・・・を有するBと、

  ・・・・を有するCと、

 を備えた装置。

D 構成要素列挙方式(〜Aと〜Bと〜Cと)で記載する場合、以下に注意

  *各構成要素の文「〜A」中には「と」を用いない。

   理由:構成要素がわかりにくくなる。

  *「〜A」、「〜B」の文中には読点を使わない。

 

欧米とのクレーム形式の相違点(外国特許明細書を意識した明細書作成のために)

 

 

 クレームの表現形式としては、様々な形態があります。クレームは、発明を特定し、その保護範囲を規定する機能を有することから、その記載のあり方には注意が必要です。特に、クレームの記載形式の法的な意味は、欧・米・日とで異なります。従って、この3つの特許システムで共通のクレーム形式を考慮し、統一的な扱いを普段から心がけておくのが、発明の国際的保護の上で必要となってくるでしょう。

 

1.クレームの表現形式( Claim format )

(a)日本の場合

 日本におけるクレームの表現形式については、テキスト本文の94頁から96頁に記載した通り、

<順次列挙形式> 

<構成要素列挙形式(一項記載)> 

<構成要素列挙形式(箇条書)> 

<ジェプソン形式> 

<変形構成要素列挙形式> 

<マーカッシュ形式> 

等が一般的です。

 

(b)米国の場合

 米国の場合、クレームは、前提部分(preamble)、移行部分(transition)、 本体部分 (body)からなります。

 前提部分は、導入部であり、単に「装置X」と短く記載することも可能であるし、「Aと、このAに立設したBとからなる装置X」と長く記載することも可能です。

 移行部分は、前提部分と本体部分を繋ぐ橋渡し役を果たします。

 通常、移行部分に用いられる用語は、

 (1) comprising; あるいは which comprises;

 (2) consisting of; あるいは、which consists of;

 (3) consisting essentially of; あるいは、

    which consists essentially of;

です。

 米国のクレーム形式で、この移行部分の用語によって権利範囲が異なってくるので注意を要します。これは日本と大きくことなるところです。

 (1) comprising; あるいは which comprises;は、オープンエンド(open end)形式といい、クレーム以外の構成も権利範囲に含んで解釈されます。

 例えば、Apparatus X, comprising; A、B、C、D。というクレームの場合、

 A、B、C、D、Eからなる装置も権利範囲となります。

 他のオープンエンドの用語としては、including を使用することができます。

having はオープンエンドとして使用しないとのことです。

 

 (2) consisting of; あるいは、which consists of;は、クローズドエンド(closed end)と呼ばれ、クレーム記載の構成は exclusive であると判断され、クレームに無い構成を除外しているものと解釈されます。

 例えば、Apparatus X, consisting of ; A、B、C、D。というクレームの場合、A、B、C、D、Eからなる装置は権利範囲外となります。

 

 (3) consisting essentially of; あるいは、which consists essentially of;は、セミオープンエンドと呼ばれ、前記(1)と(2)の中間を意味します。この場合クレームの本体部分で特定された基本的で新規な特徴部分に影響を与える他の不特定構成要素は権利範囲から除外され、影響を与えない要素は除外されないと解釈されます。この形式は特に、化学分野で多いと思われます。

 例えば、薬X, consisting essentially of ; A、B、C、D。というクレームの場合、A、B、C、D、Eからなる薬は、Eの性質如何によって解釈が異なります。

Eが例えば水や増量剤などで、A、B、C、Dに何の影響も与えない場合、権利範囲となるであろうし、そうでない場合は権利範囲外となります。

 このような考え方自体は、日本でもありえますが、移行部分の形式だけからこのように解釈されるということはありません。

 

 ○また、米国でもジェプソン形式やマーカッシュ形式もあります。日本でのジェプソン形式は単に形式を輸入したのみで、その法的性格までも導入したわけではありません。日本では、ジェプソン形式における「おいて」以前のプリアンブル部分の記載が必ずしも従来例であると決めつけられるわけではありません。この点米国では従来例であると自白したこととなるので、注意を要します。

 但し、我々実務家がジェプソン形式を使用するとき、「おいて」以前の記載は「従来例である」と主観的に思いつつ記述しているということも事実であります。

 いずれにせよ、将来外国出願を希望し、しかも、ジェプソン形式を使用するときには、「おいて」以前の前提部分はできるだけ短くするのが好ましいでしょう。

 

 ○次に、米国で、すでに構成として記載した事項 (antecedent feature)を受けてさらにその内容を詳細に説明するとき、wherein を使用します。これは、通常従属クレームで使用することが多く、独立クレームではあまりないように思えます。

 例えば、(1)Apparatus X, comprising ; A、B、C、D。というクレーム1に従属して、Apparatus X according to claim 1, wherein A having a,b and c.

 さらに、従属クレームで、親クレームにない構成を付加する時は、

further comprisingを使用します。

 例えば、(1)Apparatus X, comprising ; A、B、C、D。というクレーム1に従属して、Apparatus X according to claim 1, further comprising E.

 

antecedent basis>

 米国で、antecedent basis = 先行詞、がないような表現は、拒絶理由とされます。

 例えば、「A bottle comprising ; a body and a lid attached on the opening of the body.」という記載をすると、opening は antecedent basis = 先行詞がないという拒絶理由をもらいます。この場合、「A bottle comprising ; a body having an opening and a lid attached on the opening of the body.」というような補正をすれば拒絶理由を回避できます。

 このような拒絶理由は日本にはありません。開口部のないボトル本体は通常ないので、「本体と、本体の開口部に設けた蓋体からなるボトル」と記載することは当然のこととして許されます。

 しかし、日本の場合であっても、antecedent basis = 先行詞 がないような表現は、発明によっては、構成を特定する用語が不意に出てきて、発明をわかりにくくする可能性があります。そこで、このような表現はできるだけ避けたほうがよいといえます。これを私は<不意打ち禁止の原則>といっております。

 例えば、「液体を収容可能な容器本体と、この容器本体の取手の反対側側面に設けた液体注出口とを設けた散水容器」という表現の場合、

 容器本体の「取手」はそれ以前になんらの説明もなくいきなり不意打ち的にでてきます。このような表現は、できるだけ避けるようにすることがわかりやすい明細書を作成する上で望まれます。

 日本のクレームや明細書でも、このような表現にしておくことで、翻訳したとき、米国での、「antecedent basis = 先行詞」がないとの拒絶理由を避けることができます。

 

(c)EPの場合

2パーツ・クレーム・ルール

 EPC規則29条1項は、「クレームは前提部分あるいは前提特徴部と、特徴部分の2パーツを含まなければならない」としております。

 (1)前提部分(preamble or pre-characterising portion)は、保護を求める事項を明示するために必要であるが、その組み合わせ自体は先行技術の一部である技術的構成を含むようにしなければなりません。

 (2)特徴部分(characterising portion)は、技術的特徴部分を含むようにしなければなりません。

 EPCの2パーツ・クレームで、(1)前提部分(preamble or pre-characterising portion)は、米国の前提部分(preamble)に相当し、(2)特徴部分(characterising portion)は、米国の本体部分(body)に相当します。

 では、米国の移行部分(transition)に相当する部分が、EPには存在しないのかといいますと、答えは否であります。通常、EPでは、

characterised in that とか、characterised by という用語が使用されます。

 具体的には、Apparatus X including A & B、

            characterised in that (characterised by)

            C、D、E。

というような形式になります。

 

 但し、これは1パート構成のクレームを否定するものではなく、1パート構成の方が明瞭かつ簡潔に発明を特定できる場合は、1パート構成のクレームでも受容されます。

 例えば、英国特許事務所:Withers & Rogers の Mr. Chettle氏によれば、英国国内出願と同様に Appa- ratus X comprising A and B wherein C、D、E。という形式で出願しておくとのことです。

 2パーツ構成の場合、前提部分は、通常公知例を示すとされます(但し、侵害訴訟において、前提部分が、公知例でなかったとの主張は、可能とのことです)。よって、最初から2パーツ構成で出願するのは、不利となります。最初から公知部分を自ら限定する必要はありません。

 特許されるとき、審査結果に従って、審査官が2パーツ構成を要求してくるのが通常です。そのとき、改めて2パーツ構成にすればよいわけです。

 しかし、どこまでが公知なのか、必ずしも明確とは言えません。

 例えば、公知例1: A,B,C

     公知例2: A,B,E

     公知例3: A,E,D

 が存在するとき、A,B,C,D,Eからなる装置Xについて、少なくとも

     (1) A,B,C characterised in that D,E

     (2) A,B,C,D characterised in that E

     (3) A,B,C,E characterised in that D

 というクレーム形式が考えられられるわけです。これらは、構成要素としてはすべて同一でありますが、権利解釈上、例えば均等論の適用などにおいて若干相違が生じるおそれがあります。

 これらの一つを審査官が提示し、修正を要求してきたとき、それに簡単に同意してしまうと、その提示されたクレームの前提部分が公知例であったと自白してしまうことになります。

 これでは権利取得後のクレーム解釈において、出願手続き上の禁反言により、前提部分が公知ではなかったという主張が不可能となり、権利者にとって不利となります。

 どこまでが公知例か不明な場合は、審査官に異議を申し立て、1パート構成で記載すべき旨の主張をするのが好ましいとのことです。

 

質問1:欧州でもオープンエンド、クローズドエンドの考え方はあるか?

 Mr.Chettle 氏によれば、「Yes」とのこと、consist of はめったに使用しないとのことです。

質問2:欧州でも「antecedent basis = 先行詞」がないとの拒絶理由はあるか?

 Mr.Chettle 氏によれば、「No」とのことです。先の例をとってみますと、

A bottle comprising ; a body and a lid attached on the opening of the body.」という記載の場合、開口部のないボトルはない(bottle body must have an opening)ので、日本と同様に特に、antecedent basis = 先行詞 を意識しないとのことです。ただ、欧州・米国・日本に共通の形式ということであれば、

antecedent basis = 先行詞を意識したクレームにすべきであろうとことです。

 なお、クレーム用語はできるだけ少なくすることが、無用な限定を避ける上で好ましいので、この観点からの検討を合わせてすべきであるとのことでした。

 

(d)共通クレーム形式

 以上からすると、日本、米国、欧州のクレーム形式をみたとき、法的に最も広く解釈される共通のクレーム形式は、

   日本での構成要素列挙形式(一項記載) 

   米国での comprising形式のクレーム。

   欧州での、1パート構成のクレーム。

 ということになります。

 そこで、comprising クレーム形式で日・米・欧で出願しておくのが最も安全かつ確実であると言えます。欧州では、その後、必要に応じて2パーツ構成に補正すればよいということになるでしょう。

 


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