意見書作成マニュアル 
弁理士 遠山 勉
(06/02/07改訂) 

注意:進歩性判断基準として、「阻害要因」の概念が判例として出されており、このことを考慮した意見書作成をしなければならないことに注意してください。


★ 明細書を作成する場合、中間処理の対応方法を予め知っておくことは有効です。そこで中間処理として、意見書の作成方法につき説明します。
なお、下記具体例で使用する添附書類を、ここに示しますので、参照して下さい。
 
 拒絶理由通知を受け取った場合、それに対する意見書を提出し、あるいは、必要に応じて補正書を提出し、拒絶理由を回避する必要があります。以下、拒絶理由通知に対する対抗手段を説明します。
 
1.新規性なし、及び、29条の2の規定による拒絶理由
 この場合、引例との構成の差異を明確にする補正をし、発明が同一でないことを主張します。
 
2.進歩性なしとする拒絶理由 
 
 進歩性の場合、複数の引例(通常は2つ)から本願発明が容易であるとされます。
 例えば、発明がABCDの構成の場合で、「引例1にABCが記載され、引例2にDが記載されており、引例1と2の組み合わせから容易である」とされることが多い。
 この場合、本願発明が引例1と異なること及び引例2と異なることを単に主張しても意味がありません。進歩性の問題は新規性があることを前提としているので、相違していることをいくら主張しても意味がないのです。
 この相違点を前提とし、ABCとDとの組み合わせの困難性を論議しなければなりません。
 
 注:引例が多ければ多いほど、それほど多くの技術を組み合わせなければ本件発明が構成できない・・・構成の困難性がある・・・ということになるので、通常はできるだけ少ない組み合わせで進歩性なしとします。<異議申立や無効審判でもあまり多くの引例を持ち込まない方がよい>。

 ★★★ なお、最近の実務では、裁判所における進歩性判断の影響を受けている。裁判所では、いわゆる「阻害要因」の有無(AとBとの組み合わせを阻害する特段の理由が存在するか否か=存在すれば進歩性あり、存在しなければ進歩性なし)という判断手法が用いられている。このため、引用例の技術分野が本件発明の技術分野と異なるから引用適格性がなく、進歩性否定できないとする議論ができなくなっている。特許法を素直に読むとき、引用例の技術分野がどうであれ、当業者がそれらの組み合わせをするのが当然のことであるか否かが問われるわけであるから、このような扱いはごく自然な考え方であろう。


特許庁現行審査基準



特許庁現行審査基準(進歩性) http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_ii-2.pdf

2.4 進歩性判断の基本的な考え方

(1) 進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における出願時の技術水準を的確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、引用発明に基づいて当業者が請求項に係る発明に容易に想到できたことの論理づけができるか否かにより行う。

(2) 具体的には、請求項に係る発明及び引用発明(一又は複数)を認定した後、論理づけに最も適した一の引用発明を選び、請求項に係る発明と引用発明を対比して、請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明を特定するための事項との一致点・相違点を明らかにした上で、この引用発明や他の引用発明(周知・慣用技術も含む)の内容及び技術常識から、請求項に係る発明に対して進歩性の存在を否定し得る論理の構築を試みる。論理づけは、種々の観点、広範な観点から行うことが可能である。例えば、請求項に係る発明が、引用発明からの最適材料の選択あるいは設計変更や単なる寄せ集めに該当するかどうか検討したり、あるいは、引用発明の内容に動機づけとなり得るものがあるかどうかを検討する。また、引用発明と比較した有利な効果が明細書等の記載から明確に把握される場合には、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として、これを参酌する。

その結果、論理づけができた場合は請求項に係る発明の進歩性は否定され、論理づけができない場

合は進歩性は否定されない。

(3) なお、請求項に係る発明及び引用発明の認定、並びに請求項に係る発明と引用発明との対比の手法は「新規性の判断の手法」と共通である(1.5.1〜1.5.4参照)。

注)引用発明からの最適材料の選択あるいは設計変更や単なる寄せ集めに該当するかどうか検討したり、の部分を
引用発明からの最適材料の選択あるいは設計変更や単なる寄せ集めに該当するかどうか検討したり(阻害要因の考慮)と、審査基準2.5における論理づけの具体例との関係がわかりやすい。



阻害要因について

最近の審決取消訴訟における進歩性判断の傾向(機械分野)(2) 渡部温 パテント2005 Vol.58 No.4によれば、『阻害要因とは,複数の公知発明を組合せたり,適用したり,一部置換して本件発明に想到することを妨げる要因のことである。「引例1 と引例2 を組合せて本件発明に想到することは,△△△という阻害要因があるので,当業者にとって容易でない」や,「引例1 に引例2 を適用して本件発明に至ることは,阻害要因がなく容易である」などという形で使われる。阻害要因の他,「妨げる事情」,「阻害される」,「△△△にもかかわらずあえてその手段をとった」などという言い方も同様の意味である。』 とされる。そして、『東京高等裁判所の阻害要因の議論は,極端に言えば,「同一技術分野における複数の公知文献中の発明の組合せに当る本件発明を想到することの難易が問われた場合においては,組合せの阻害要因のある場合だけが進歩性があり,当事者から阻害要因があることの説得力のある論証のない場合は,本件発明には進歩性がないと判断する」と言っていることになる。』とされる。

思うに、特許法における進歩性の規定が変わったわけではなく、進歩性は、本質的に、当該発明が従来技術からどの程度の技術的困難性があったかの議論、発明に想到するにいたる課程において、どれほどの技術的障壁があったかの問題であるから、それを積極的に立証しなさいと言っているのであり、真正面から進歩性をとらえ議論するということが要求されており、そのための論理付けをしなさいということなのであろうと、理解する次第です。

なお、平成12 年に改訂された特許庁の審査基準U-2-2.8「進歩性の判断における留意事項」においては,阻害要因の存否が問題となった東京高等裁判所の判決が4件紹介されている。



★中間処理の手順を以下に示します。
 
@ 各引例の構成が本発明の構成と等価であるか検討します。
 進歩性が問われるとき、各引例に分散して本発明の構成がすべて記載されていることが前提となります。そこで、実際の引例に本発明の構成が記載されているかを検証します。
 時に、審査官はなぜこのような引例を引用したのであろうと、疑問に思うようなことがあります。一見かなり遠いような引例でも、技術思想からすれば同一の構成が記載されていると判断したからそのような引例を引用したと見て、審査官の出した拒絶理由の意図を考察する必要があります。
 
A 等価でない場合、すなわち、引例1にはABCではなく、A’B’C’である場合、その旨主張し、また、引例2にはDではなくD’が記載されていることを主張し、さらに、引例1のA’B’C’から本発明のABCを想到することの困難性、引例2のD’から本発明のDを想到することの困難性、ひいては、引例1と2の組み合わせであるA’B’C’D’の組み合わせから本発明のABCDを構成することの困難性を主張します。
 審査官が複数の引例を引用したことは、それらの組み合わせで発明が容易であるとの意図があるわけですから、この組み合わせの困難性の主張は是非とも述べて下さい。
 
B 複数の引例の構成と、本発明の構成が等価である場合、すなわち、引例1にはABCが、引例2にはDが記載されていること自体は認められる場合、かなり議論は難しくなります。この場合、引例の組み合わせが当業者においていかに困難であったかを主張します。
 このためには、引例1と引例2にない機能や効果あるいは課題に着目します。引例1や引例2にない機能や効果あるいは課題が、明細書に記載されていればよいが、通常、記載されていないことが多いので、このような相違点をひねり出す工夫が必要となります。
 
 
 例1:ゴミ吸込み口に回転ブラシを設けた真空掃除機に対し、床の水洗用回転ブラシ装置のブラシ(渦巻き型ブラシ)の引例と、従来型の真空掃除機の引例で進歩性なしとされた場合。
 
 水洗用回転ブラシは水の散布下で床をこすり汚れを落とす機能→ブラシの回転により埃が周囲に飛散しようがしまいが問題とならない。これに対し、真空掃除機は塵埃を吸い込むことが命題となる。埃を吸引口から離れる外側方向に飛散させたのではだめ。そこにブラシ装着する際の課題がある。本発明の真空掃除機はブラシを○○という手段で取り付けたことで、確実にゴミを補足し、吸引口から吸い込むことができる。よって、水洗用回転ブラシを転用しても本発明を想到しうるものではない。
 
 但し、本発明では、ブラシが水洗用回転ブラシのように外側にゴミを飛散させることのない構成に限定されていることが必要です。
 
 この例は、水で汚れを落とすためのブラシと、埃を乾燥状態で掻き集めるためのブラシとを比較し、その技術的差異を強調することで拒絶理由を回避しようとするものです。このように、前提となる技術分野の相違から突破口を見いだすことができる場合があります。
 
C拒絶理由は請求項毎に出されますが、時として、従属項につき何ら示されない場合があります。その場合、その従属項に限定した独立請求項について特許性がありとの示唆です。
 一方、独立請求項に従属項がある場合に、独立請求項と従属項ともに同じ引例で拒絶する場合があります。その場合、いずれの請求項の発明も特許性がないとのことであり、従属項に限定しても拒絶しますとの意味です。
 この場合、独立請求項の発明について補正なり、意見を述べて拒絶理由を回避することができると思っても、さらに、従属項の限定要素と引例との対比でも特許性を議論しておいた方がよろしいでしょう。
 
D 次に、複数の引例の構成と、本発明の構成が等価であり、それらの組み合わせが困難であるとの主張も極めて難しい場合、補正により引例にない構成を請求項に付加してその部分の構成の困難性を議論します。
 
 そこで、請求の範囲を限定する補正が可能かを検討します。
  限定には外的付加、内的付加があります。
 
  外的付加・・新しい構成要件を付加する場合です。
    A、B、Cからなる装置。
    −−補正後−−
    A、B、C、Dからなる装置。
 
  内的付加・・構成要素をさらに下位概念に減縮する場合です。
    A、B、Cからなる装置。
    −−補正後−−
    A、B、Cからなり、前記Aは、a1,a2からなる装置。
 
 実施例レベルに限定する場合、実際に商品化されている実施例に限定しないと特許をとる意味が無くなるので注意!!
 
E 本来ならば補正しなくとも進歩性を主張できると思ってもあえて補正をすることがあります。
 補正したことにより、出願人も「譲歩した」との印象を審査官に与えて、拒絶理由を撤回しやすい心理状況を作り出すためです。<一度出した拒絶理由を単に意見のみで覆すのは困難であり、何らかのおみやげが必要なのです>
 この場合、技術的に限定でない限定補正(形式的補正)を行います。
 
F 意見書を書く場合の注意として、引例との対比はあくまでも請求項に記載した構成(技術思想)との対比であって、実施例レベルの構成を持ち出して議論しても、そのような限定要素が請求項に記載されていない以上無意味であるということです。
 
G ここで、意見書の書き方の例をより具体的に示します。これは、請求の範囲の補正を伴う場合です。
 
意見書
 
(1)本願発明は、実願昭58−xxxx号(実開昭60−xxxx号)(引用例1)、及び実願昭58−yyyy号(実開昭59−yyyy号)(引用例2)に基づき、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと認定されました。 
 しかし、本願発明は、本意見書と同日付けで提出した補正書により特許請求の範囲を補正したこと、及び、以下に述べる理由により十分登録性があると思料されます。
(2)以下、引例との相違を述ベ、引例の組合せから、補正した部分が想起されないことを主張します。 
 
 注意:請求の範囲を補正したことにより、審査の土俵が変わってしまったので あるから、引用例と発明が異なるのは当り前です。従って、審査官による拒絶が不当であるような意見は絶対さけなければなりせん。
 そして、補正したことにより、どのように特許性が出てきたのかを説明し、進歩性があることを主張します。とくに、新たに付加した技術的事項が各引例から想起できない構成、効果を有することに着目するとよいでしょう。
 
B進歩性否定の拒絶理由に対する意見書(悪い例)
 進歩性を否定する場合、通常引例1と引例2から当業者が容易に発明できるという理由となります。これに対し、進歩性の意味がわかっていない人が陥るミスが以下の通りです。
(1)本発明の要旨は、
  「A、B、C,からなる装置。」にある。 
その目的は・・・・・である。また、その効果は−−−−である。
(2)これに対し引例1は、
 A、B、Eからなり、その目的はaaaa、効果はbbbbである」
 このように、本発明と引例1はEという点で異なり、目的、効果もそれぞれ異なる。
(3)また引例2は、
 B、C、Dからなり、その目的はdddd、効果はeeeeである。     このように、本発明と引例1はDという点で異なり、目的、効果もそれぞれ異なる。
(4)以上のように、本発明は、引例1と引例2とそれぞれ異なる構成を有し、それぞれにない効果を奏するものであり、各引例には本発明を示唆する記載も見あたらない。 
 従って本発明は引例に基づいて当業者が容易に発明できるものではない。
 
 以上の書き方は一見それらしくなっているので、良いように思えますが、実は進歩性に対する回答ではありません。(2)(3)(4)の議論は単に新規性があることを主張しているに過ぎません。
 
B進歩性否定の拒絶理由に対する意見書(良い例)
 進歩性で問題となるのは、引例の組合せにより容易に本願発明が想起できるか否かの問題であるから、その点に焦点を当てる意見書にしなければならなりません。
 発明が生まれた背景技術、発明自体の技術分野の特殊性、発明が実施される場面の特殊性、発明が生まれるまでの発想の過程などを考慮し、引例の技術分野から本発明の技術分野に転用する技術上の困難性、発想の困難性、組合せの困難性(引例1と2を組み合わせるのがどうして困難なのか)を主張します。
 
以下、具体例を示します。この例は、昭和61年に出願された実用新案登録出願の審査手続き中に提出された意見書です。拒絶理由通知、引例の図面は別紙として添付します。この例では、アンダーライン部分で示したように、考案の過程に着目し、意見書を作成したものです。これは旧法時代の実用新案法に基づくものですが、意見書の書き方は現行法の特許も基本的に同じですので、参考にして下さい。
 
(1)本願考案は、@実願昭58−    70号(実開昭6O−    号)(引用例1)、A実願昭58−   9号(実開昭59―       号)(引用例2)に基づき、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないと認定されました。 
 しかし、本願考案は、本意見書と同日付けで提出した補正書により請求の範囲を補正したこと、及び、下記の理由により十分登録性があると思料されます。 
(2)本願考案の要旨は明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されているように、「底部20および周側壁30をそれぞれ有する一対の受皿I、Uを形成し、受皿I、Uの対向連結端にはそれぞれ係合凸部31と係合凹部32とからなる連結用の係合対を双方互い違いに設けると共に、更に前記対向連結端のそれぞれに接続用欠落部Vを形成し」たという点、及び、「受皿I、Uを連結する際に一方の受皿の係合凸部31を他方の受皿の係合凹部32に係合させると共にそれぞれの接続用欠落部V、Vに連なる周側壁30A、30A同士を接続させて連結した単一の間仕切り壁33を形成し、この間仕切り壁33を共有して複数の収納室10を形成しめてなる」点にあります。
 本願考案は、このような構成を採用したことにより、多数の受皿同士を互いに連結しても、隣り合う受皿同士が1つの間仕切り壁を共有する構造となっているから、連結方向の長さ寸法を大幅に短縮することができます。
 このように明細書記載の顕著な効果を奏するものです。     
(3)これに対して、引用例1には、「中皿11の一側に連結用突設体12を設け、他の側面に連結用嵌入溝14を設け、隣接する中皿11が互いの突設体12を嵌入溝14で相互いに―体に連結している。」が記載されています。
 また、引用例2は、「中皿1の2つの側壁3、4に溝条7、8を設け、隣り合う側壁5、6に突条9、10を設けて、溝条7、8を突条9、10に嵌合している。」が記載されています。
(4)そこで、本願考案と各引用例に記載された考案の差異を検討します。
(a)引用例1について
 引用例1は引用例1の明細書中に記載されているように、まずは一般の容器と同様に中皿に底部と周側壁とを有し、中皿としての体裁をなしています。
 そして、この中皿としての体裁を消失させないままで、中皿の一側に連結用突設体12を設け、他の側面に連結用嵌入溝14を設け、隣接する中皿11が互いの突設体12を嵌入溝14で相互に一体に連結しています。    
 これに対して、本願考案では、底部20および周側壁30をそれぞれに有する一対の受皿I、Uの対向連結端に連結用の係合対を双方互い違いに設け、対向連結端のそれぞれに接続用欠落部Vを形成しています。すなわち、周側壁30の一部を欠落させることで、まずは受皿Vとしての体裁を消失させています。
 次に、受皿I、Uを連結させる際にそれぞれの接続用欠落部V、接続用欠落部Vに連なる周側壁30A、30A同士を接続させて連結した単一の間仕切り壁33を形成し、間仕切り壁33を共有して複数の収納室10を形成しています。すなわち、これらを組み合わせることで受皿としての体裁を回復しています。
 これらの過程に本願考案の構成の困難性があり、また、この構成は引用例1には何ら示されていない。そして、この構成の困難性から周側壁30Aの厚さの個数分に相当する寸法だけ短縮できるという本願考案独自の効果を有しております。
 従って、引用例1により本願考案を想到することができないのは明らかです
(a)引用例2について
 引用例2も引用例1と同様に中皿に底部と周側壁を有し、中皿としての体裁をなしています。
 そして、この中皿としての体裁を消失させないままで、溝条7、8を突条9、10に嵌合していき、中皿を連結させています。    
 これに対して、本願考案は引用例2には示されていない独自の構成及び効果を有しています。
 従って、引用例2により本願考案を想到することができないのは明らかです。
 
(c)引用例1〜2の組合せについて (ここが重要)
 本願考案の構成及び効果については、上記引用例1及び引用例2にも何ら示されておりません。欠落部を設けて受皿の体裁を消失せしめ、次に一方の欠落部に他方の周側壁を巌合することにより受皿の体裁を回復せしめるという示唆を、両引用例から得ることは当業者にとって自明の範囲を越えるもので、両者を組み合わせることにあたって大きな阻害要因となっております。   
 従って、引用例1及び引用例2の組合せによっても本願考案を想到することができないのは明らかです。
 また、「仕切り壁を共通にして組み合わせて連結するようなことは当業者がきわめて容易になし得ると認められる。」と御指摘されましたが、この点についての引用例を何ら具体的に示さずして、上記考案の過程に構成の困難性を「きわめて容易」とは認定できないものであります。
(5)以上述べたように、本願考案は、引用例1及び引用例2の記載事項に基いて、いわゆる当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められないと思料されます。
 
補正書
 
実用新案登録請求の範囲
 底部20およ周側壁30をそれぞれ有する一対の受皿I、Uを形成し、受皿I、Uの対向連結端にはそれぞれ係合凸部31と係合凹部32とからなる連結用の係合対を双方互い違いに設けると共に、更に前記対向連結端のそれぞれに接続用欠落部Vを形成し、受皿T、Uを連結する際に一方の受皿の係合凸部31を他方の受皿の係合凹部32に係合させると共にそれぞれの接続用欠落部V、Vに連なる周側壁30A、30A同士を接続させて連結した単一の間仕切り壁33を形成し、この間仕切り壁33を共有して複数の収納室10を形成しめてなる連結式化粧用コンパクト容器。
 
3.明細書記載不備とする拒絶理由
 明細書記載不備の拒絶理由が出される場合は、以下の4つの場合があります。それぞれについて対策を述べます。
 
@ 開示条件を満たしていない場合(明細書の書き方自体に問題があり何をいっているのかわからない場合等)
  弁理士としてはこのような明細書を書いてはいけません。   
 対策:要旨変更にならないように書き直すしかありません。
 
A 出願当初の明細書で記載した従来技術とその問題点に比べ、審査により新たに発見された従来技術の方が、より発明に近く、そのために、〔発明が解決し ようとする課題〕が不明確とされる場合。
    
 対策:引用された従来技術を明細書に取り込んで従来技術の項、及び、発明が解決しようとする課題の項を書き直し、さらに、発明の作用・効果も課題に合わせて書き直します。
 
B 特許請求の範囲の表現が機能的すぎる場合
 具体的技術を特定して客観的表現に補正します。
   
C 必須要件の限定が足りない場合
 請求の範囲を限定します。