ビジネスモデル特許の定義
弁理士 遠山 勉
ビジネスモデル特許とは、広義には、ビジネス方法自体に付与される特許ですが、そのような特許は我が国では認められていません。日本の特許法では、保護対象である発明は、「自然法則を利用」していなければならず、ビジネス方法自体は特許の対象とはならないのです。ビジネスモデル特許騒動のきっかけとなった、米国の「ステートストリート事件」のシグナチャ社特許は、ある金融サービスを提供するビジネス方法についての特許(USP5,193,056)です。ステートストリート事件で、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、当該ビジネス方法も米国特許法の保護対象である旨認定しました。
この事件をきっかけに日本でも「ビジネスモデル特許」がマスコミで大きく取り上げられ、危機感が煽られ、現在もそのような状態が続いています。特許庁ではそのような状態を危惧し、ビジネスモデルの特許法上の扱いをHPに掲載しました。
特許庁のHPには、概ね以下のように掲載されています。
ビジネスモデル特許の出現の背景
(1)コンピュータ基礎技術、通信基礎技術などの発展
↓
(2)電子決済や電子マネー等の
ビジネスシステムインフラ技術の構築
↓
(3)実際のビジネスに適用
(ビジネス応用システム)
Ex.インターネットショッピング
ホームバンキング
↑
(4)ビジネスモデル・ビジネスアイデア自体
上記(1)は従来より特許の対象
(2)は、従来から特許の対象となっていた
ソフトウエア技術分野
注:審査基準で、ソフトウェア利用技術は、
@ ハードウェア資源に対する制御又は制御に伴う処理
A 対象の物理的性質又は技術的性質に基づく情報処理
B ハードウェア資源を用いて処理すること
であれば、自然法則を利用しているとしている。
すなわち、ハードウェアというフィルタを通せばソフトウェア関連技術を特許しますと言っています。
(3)はマスコミが取り上げている特許出願で
ソフトウエア技術を特定ビジネスに応用したもの
として、既存の審査基準で審査
(4)はマスコミの記事で新たに特許になると勘違いされている部分。経済法則や人為的な取決めは「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないことが審査基準に明記されており、ビジネスモデルやビジネスアイデア自体は特許の対象外としている。
ビジネス関連特許の種類
電子商取引関連出願
金融ビジネス(銀行、保険、証券)関連出願
以上は、平成11年12月に特許庁ホームページに発表された、ビジネス関連特許についての報告文書からの引用に若干のアレンジを加えたものです。
以上のことから、ビジネスモデル特許とは、ビジネスモデルやビジネスアイデアの部分に特徴がある特許であり、近年大きく発展してきたコンピュータ技術やインターネットなどの通信技術を利用して前記ビジネスアイデアを技術的に具体化した発明に対して付与される特許である、と言えます。
特許庁においては「ビジネス関連特許」といわれています。