特許から見たゴルフ
弁理士 遠山 勉 (2002/08/18)

第8話 OUT 8番ホール

「ゴルフボールの話」


 特許第2844905号は、ゴルフボールについての特許です。この登録公報には、ゴルファーにとって知っておきたい情報が多く掲載されているので、ここにご紹介します。


 上記公報によれば、以下のようなことが理解されます。

「 通常、ゴルフボールの表面には、その空力特性を向上し、飛距離を伸ばすため300〜550個のディンプルが設けられている。
 ディンプル配列の形態として、ディンプルと全く交差しない複数個の大円通路を有する場合がある。具体的には、大円通路を、正十二面体配列は10本、正八面体配列は3本、20−12面体配列は6本、立方八面体配列は4本それぞれ有している。
 ゴルフボールは上下一対の半割金型によって成形されるため、金型接合面であるパーティングラインにはディンプルを配置することが出来ない。上記4種のディンプル配列においても、複数ある大円通路のうちの1本をパーティングラインと一致させており、該大円通路はシームと呼ばれている。
 シーム以外の大円通路は幾何学的に見てシームと等価であるためにセミシームと呼ばれている。

  ゴルフボールはゴルフクラブで打撃した場合、バックスピンしながら飛行するが、バックスピンの回転軸がゴルフボールのどの位置にあっても同様に飛行すること、即ち、弾道高さ、滞空時間、飛行距離に差がないことが望ましい。もし、回転軸の違いにより飛行性能が違ってしまうのであれば、そのボールはプレーヤーの技量を正確に反映できないからである。 上記した正多面体および準正体体配列で複数の大円通路を有する4種のゴルフボールに対する打撃方法は、打撃位置の相違によりバックスピンの回転軸の位置が相違することにから、下記の3種類に分けられる。即ち、

 第1にバックスピンの周速の最も速い部分が上記シームと一致するように回転軸が位置するシーム打ち。
 第2にバックスピンの周速の最も速い部分が上記セミシームと一致するように回転軸が位置するセミシーム打ち。
 第3にバックスピンの周速の最も速い部分がシームおよびセミシームのいずれとも一致しないように回転軸が位置するノンシーム打ち。

上記正多面体および準正多面体配列の4種のゴルフボールをシーム打ち又はセミシーム打ちすると、ノンシーム打ちした場合に比べ弾道が低くなり、滞空時間が短くなる。これはシーム打ち又はセミシーム打ちの場合、バックスピンの周速の最も速い部分がディンプルの全く配列されていない大円通路と一致し、ノンシーム打ちに比べてディンプル効果が薄れるためと思われる。」

 皆さん、このようなシーム打ち、セミシーム打ち、ノンシーム打ちなんて知ってましたか?ディンプルの効果を上手に使って飛距離を伸ばすには、ノンシーム打ちをしなければなりません。そのためには、ティーアップの仕方に注意しましょう。
 でも、本件発明のボールを使用すれば、そのような心配はないようです(本件の権利者は、ダンロップですよ)。

<本発明の内容>
 本発明は、表面にディンプル及び該ディンプルと交差しない複数の大円通路を有するゴルフボールにおいて、 上記大円通路から球の中心角で略10゜未満のゴルフボール球面の領域をL領域、それ以外のゴルフボール球面の領域をF領域とし、L領域にある一つのディンプルの容積をVL、該ディンプルと略同一直径を有するF領域にあるディンプルの容積をVFとした時、VL/VFの値が 1.02≦VL/VF≦1.20 となるようにディンプルの諸元を設定した。本発明では、大円通路に接するL領域のディンプル、例えば大円通路に接する1列目のディンプルの容積を、それ以外のF領域のディンプルの容積より大きくしているため、大円通路によるディンプル効果の減少を補償することができ、よって、ゴルフボールの空力学的対称性を向上させることができる。即ち、シーム打ちおよびセミシーム打ちした場合、バックスピンの周速の最も速い部分に近いディンプルは全てL領域のディンプルとなり、ディンプル効果が向上し、ノンシーム打ちをした場合に近い弾道高さ、滞空時間および飛距離を得ることができ、打撃位置の相違にかかわらず飛行性能の均等化を図ることが出来る。

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