特許から見たゴルフ
弁理士 遠山 勉 (2001/10/22)

第5話 OUT 5番ホール

有名プロの発明品


平成6年(1994)3月25日に出願された特願平6−79397号(特開平7−255879)記載のアイアン・セットは、美津濃株式会社から出願されたものです。

その発明者は、なんと、「中島 常幸」氏。これは、美津濃から、TN93の名前で実際に販売されています。


【特許請求の範囲】
この発明のクラブは、 番手数が増加するにしたがってライ角とロフト角が漸増するアイアンゴルフクラブセットであって、それぞれのアイアンゴルフクラブが背面部に凹部が設けられており、該凹部の内周形状を規定する線のうち凹部トウ側線の一部または全部が直線であって、且つ、該凹部トウ側線の直線部を含む平面と、ホーゼルの略中心を通るシャフト軸中心線を含む平面とが、アイアンゴルフクラブの番手数の変化に関わらず常に平行であることを特徴とするアイアンゴルフクラブセットです。


本発明は、シャフト軸中心線回りの慣性モーメントIS が大きくヘッドの返りが良いうえに、スウィートエリアが適度に広く、且つ、コントロール性に富むアイアンゴルフクラブセットを提供することを目的とする。
 本考案に係るアイアンゴルフクラブセットにおいて、それぞれのアイアンゴルフクラブの背面部に凹部が設けられており、スウィートエリアが広がる効果がある。更に、該凹部の内周を規定する線のうち凹部トウ側線の一部または全部が直線であって、且つ、該凹部トウ側線の直線部を含む平面と、ホーゼルの略中心を通るシャフト軸中心線を含む平面とが、アイアンゴルフクラブの番手数の変化に関わらず常に平行となるように構成することにより、シャフト中心軸から垂直距離が最も離れた位置に、より多くの質量を効果的に配分することができる。そのため、シャフト軸中心線回りの慣性モーメントIS を増大させる効果がある。
 また、本発明に係るアイアンゴルフクラブセットにおいて、それぞれのアイアンゴルフクラブの背面部に設けられた凹部は、フェース面に接地面と平行に設けられたスコアーラインの幅内に納まり、且つ、アイアンゴルフクラブの番手数の変化に関わらず、該スコアーラインの長手方向の幅、及びトウ先端部からスコアーラインのトウ側先端までの距離が一定となるように構成することにより、番手の変化にともなう打球感の差を小さくすることができる。
 更に、本発明に係るアイアンゴルフクラブセットにおいて、前記凹部トウ側線よりトウ側に位置するウェイト部には、重心調整部が設けられており、接地面から該重心調整部までの高さが番手を追って高くなるように構成することによって、番手の小さいロングアイアンクラブにおいては低重心となり、番手の大きいショートアイアンクラブにおいては高重心となり、中間のミドルアイアンにおいては重心位置をロングアイアンクラブとショートアイアンクラブとの中間に設定することができる。
  また、本発明に係るアイアンゴルフクラブセットにおいて、該凹部トウ側線の直線部を含む平面と、ホーゼルの略中心を通るシャフト軸中心線を含む平面との距離がアイアンゴルフクラブの番手が増加するにしたがって漸増するように構成することにより、番手の小さいロングアイアンクラブにおいては、トウ部に重量を集中的に配分でき、シャフト軸線回りの慣性モーメントIS を大きくすることができる。一方、番手が増加するにしたがって、ヘッド長さが漸増してゆき、ヒール部にも重量を配分できるため、ショートアイアンクラブにおいてシャフト軸線回りの慣性モーメントを相対的に減少させることができる。

【符号の説明】1 ヘッド2 ホーゼル3 背面部4 トウ部5 ヒール部6 ソール7 凹部8 重心調整部H 重心調整部の高さL1 シャフト軸中心線Xと凹部トウ側線Yとの距離L2 シャフト軸中心線Xと凹部トウ側線Yとの距離LS スコアーラインの長手方向の幅LT ヘッドのトウ先端部からスコアーラインのトウ側先端までの距離P1 平面P2 平面W ウェイト部X シャフト軸中心線Y 凹部トウ側線Z 接地面


【図1】本発明に係るアイアンゴルフクラブのヘッドの背面図である。

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【図2】本発明に係るアイアンゴルフクラブのヘッドのウェイト部を示す図である。

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 TN93は、TN87、TN91の後継モデルで、かなりの人気がありました。私も、TN91を一時使用しており、マッスルバックながら、低重心で切れのよいクラブでした。
 中島プロもいよいよ復活の兆しがみられますので、TNシリーズもさらに進化してほしいものです。