特許から見たゴルフ
弁理士 遠山 勉 (2001/10/22)

4話 OUT 4番ホール 
ドライバーは高反発系クラブの時代へ

(時代をリードするキャラウェイ・ゴルフ・カンパニ)



 米国ゴルフ協会(USGA)及びセントアンドリュースロイヤルエンシャントゴルフクラブにより制定され解釈されるゴルフ規則は、ゴルフクラブヘッドについていくつかの要件を定めている。ゴルフ規則4−1eは、フェースがインパクト時にゴルフボールに対しスプリング効果を持つことを禁止している。キャラウェイ・ゴルフ・カンパニは、ビッグバーサ・ホークアイの発表後、ホークアイに似た形状でしかも、クラブフェースが高い反発係数を持つ、「ERC」を発表した。このクラブは、米国ではルール違反として公式試合での使用は禁止されたが、飛距離を常に望むアマチュアの興味をそそることとなったのか、その後、各クラブメーカーは、この高反発系のドライバーを開発する方向に向き、今や、ゴルフショップの店頭やゴルフ雑誌では、ヘッドの大型化とともにクラブフェースの反発係数の話題が主流となりつつある。

 そこで、高反発系のゴルフクラブにつき特許がどのようになされているかを検索してみたところ、キャラウェイ社の特許出願(P2000−392961)が見つかった。これは米国特許出願USSN474670(平成11年12月29日出願)を基礎に、平成12年12月25日に我が国に出願され、特開2001−190719号として公開されている。

 以下、その主要な記載を明細書から抜粋してみよう。


 この発明は、複合材料からなり、0.010インチから0.250インチの厚みを持つ打撃プレートを持つゴルフクラブヘッドであり、1998年―1999年のゴルフ規則4−1eに従って規定されるUSGAテスト条件のような条件のもとで少なくとも0.83の反発係数を持つものとされる。そして、ゴルフクラブヘッドのボディはまた複合材料で形成され、ボディのリボン内にウェイトストリップが配置されるというものである。
 この出願は、1997年10月23日に出願され継続中の米国特許出願第08/958,723号の一部継続出願であるとのこと。おそらく、この出願が、ERCの原型であろう。

 これは、ゴルフクラブヘッドがボールを打撃するとき、その衝突によりいくらかのエネルギーは失われる。ゴルフボールは柔らかいポリマーでカバーされ、インパクトの間、メタルフェースが少ない変形であるのに対し(0.025から0.050インチ)、ゴルフボールの変形が大きく(0.001から0.20インチ)、エネルギーの大部分は失われる。これまで、ヘッドの変形を少なくするために、クラブヘッドのフェースの硬度を増すというアプローチがされてきたが、これはゴルフボールの大きな変形を生み、エネルギーの伝達に問題が生じる。
 そこで、この発明は、クラブフェースを薄い材料からなる高い反発係数を持つフェースとすることで、この問題を解決しようとした。

 本発明は、薄く高い反発係数を持ち、それにより本発明によるゴルフクラブヘッドでヒットされたボールがより長い比距離となるようなゴルフクラブヘッドに向けられている。反発係数(ここでは“COR”と言う)は下記の式により決定される。

【数1】

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ここで、

U1はインパクト前のクラブヘッドの速度;
U2は速度0のインパクト前のゴルフボール速度;
ν1はクラブヘッドの打撃プレートをゴルフボールが離れた直後のクラブヘッドの速度;
ν2はクラブヘッドの打撃プレートをゴルフボールが離れた直後のゴルフボールの速度;
eはゴルフボールとクラブ打撃プレートの間の反発係数である。

eの値はエネルギーの付与がないシステムにおいては0と1.0の間である。柔らかい粘度やパテのような材料の反発係数は0に近く、完全な弾性材料で変形の結果エネルギー損失がない場合は、eは1.0となる。本発明は、通常のテスト条件のもとで測定した場合、0.9に近い反発係数を持つ打撃プレート又はフェースを持つクラブヘッドを提供する。

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線5−5に沿う断面図

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 図に示されるように、クラブヘッド20は、一般的には、カーボンプリプレグシートのプライのような材料からなる複合材料からなるボディ22を持っている。

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 ボディ22は、クラウン24、打撃プレート26、ソール28、ソール28とクラウン24により並列されるリボン30を有している。リボン30は、概ね、トオエンド32からヒール34エンド34に延びている。リボン30は、略打撃プレート26の端部より始まり打撃プレート26の反対側の端部で終わる。ボディ22の後部36は打撃プレート26の反対側であり、リボン30、クラウン24及びソール28の部分により画成される。また、クラブヘッド20のヒールエンド34はシャフトを入れるための開口39を備えるホーゼル38となっている。
 リボン30はクラブヘッド20の体積を増加させ、また、クラブヘッド20の慣性モーメントを高める。リボン30は、また、より偏平なクラウン24、即ち、カリフォルニア、カールバッドのキャラウェイゴルフカンパニーから得られるドライバーのグレイトビッグバーサ(GREAT BIG BERTHA)のような従来の伝統的なウッドクラブのクラウンより曲率半径がより小さいクラウン24を提供する。

 USGAテスト基準条件のもとでの与えられたボールに対する本発明のクラブヘッドの反発係数は0.8〜0.9であり、好ましくは0.83〜0.88、最もこのましいいものは0.876である。打撃プレート26の薄さとプリプレグプライの方向性は、本発明のゴルフクラブヘッド20の反発係数を0.83より大きくすることを可能にしている。ウェイトストリップ40と一体化してソールプレート及びホーゼル43もまた、本発明のゴルフクラブヘッド20の反発係数を高めるの助長する。
 更に、ゴルフクラブヘッド20のリターン100の厚みは打撃プレート26のより大きな偏向を許容し、ゴルフクラブヘッド20の反発係数を増加させる。

本発明の打撃プレート26は、従来の打撃プレートよりアスペクト比が小さくなる。ここで使用される「アスペクト比」とは、打撃プレートの幅wを打撃プレートの高さhで割ったものとして定義される。
 一つの実施例においては、幅wは90ミリメータ、高さhは54ミリメータでアスペクト比は1.666である。通常のゴルフクラブヘッドでは、アスペクト比は一般には1よりかなり大きい。例えば、最初のGREAT BIG BERTHA(グレイト ビッグ バーサ)(登録商標)では、アスペクト比は1.9である。本発明のアスペクト比は、好ましくは、1.0〜1.7である。

【図】本発明のゴルフクラブヘッドの分解構成図である。

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本発明によるクラブヘッド20は、従来のものと重量が実質的に小さいか等しいものであっても、従来のクラブヘッドよりより大きな体積を持つ。本発明によるクラブヘッド20の体積は、175立方センチメータから400立方センチメータの範囲であり、より好ましくは、300立方センチメータから310立方センチメータである。本発明のクラブヘッド20の重量は165グラムから300グラムの範囲であり、好ましくは、175グラムから225グラムの範囲であり、さらに最も好ましくは、188グラムから195グラムである。

 打撃プレート26の薄さと方向性は、ゴルフクラブヘッド20が反発係数0.83以上となることを可能とする。しかしながら、本発明のゴルフクラブヘッド20は、1998〜1999年のゴルフ規則の付則II,規則4−1eに従ったUSGAのテスト条件において、ゴルフボールに対してより大きな反発係数を達成するような構造、面積比及びリターンの厚みを使用している。このように、本発明は、スプリングと違って、打撃プレート26の応答性を高めて、システムにエネルギーを加えることなしにゴルフボールのインパクトに対しエネルギー損失を減らすことができる。


 以上が、高反発系ドライバーの技術であるが、昨今の高反発系ドライバーは確かに飛ぶようだ。私のゴルフ仲間のKさんはブリジストンのツアーステージV800で、飛距離を10から15ヤード伸ばし、Yさんは、ヨネックスのサイバースター3000で20ヤードは伸ばしている。ちなみに、小生もミズノ300SからPRGRのスピードチタンTRに変えたところ10から15ヤードは伸びている。これからは、高反発系の時代だ・・・。