秋田・真昼岳・秋の宮TOUR(1992/09)

 

9/13(日)〜16(水) 秋田県の山中を走ってきました.

前半は晴れ,後半は雨でテントに閉じ込められてしまいましたが, どうやら

毎日風呂に漬かることができました.

 

東北地方でもこの辺りは至る所に温泉があるのです.

 

 

さて 9/12(土)は朝 おそく起きて駅へ切符を買いにいきました.当夜の「津軽」と

16日(水)の山形新幹線・上りが難無く取れ幸先の良さを感じさせます.

 

夕方 裏口の自転車を点検する. 2週間以上触れていないのでほこりだらけ,タイヤの圧が下がっている. 簡単に荷作りして 最後の夕食を摂る.

 

 

21時に自宅を出発. 22時3X分 上野発だから 随分余裕がある.

落ち着いて輪行し,上野へ. 連休とあって 夜行急行「津軽」は満席.

車両が485系の特急電車になっている.

オハ12の客車が好きだったのだが….

 

 

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午前1時 東北本線・黒磯駅

 

久し振りに日記をつけつつ 旅をしてみよう.

 

 

5月からこの方,会社に振り回され放しの3ケ月だった. 5連休がとれて

こうして懐かしい急行「津軽」の車中にいる. こんなに文章を書くのだったらオアシス

ポケットを持ってきてもよかったと思う.メモリいっぱい書いてしまうかもしれない.

 

 

今回は鬱積した感情を再構成するための旅にしたいと思う.

 

ついに30才になってしまったが,旅のスタイルは高校生の頃から何ら変わっていない.

酒の味は覚えたが…

 

CAMP装備を揃えてきたが重要なものを忘れてしまった.

ロールマットである.パッキングがスマート過ぎると思っていたのだ.

明朝大曲市内で調達できるだろうか?

これがないと 民宿あたりにひよってしまうような気がする.

 

しかし,ツエルト,寝袋 他せっかく大荷物を背負ってきているのでぜひCAMPをしたい.

 

 

「天狗舞」を入れたタッパーの密閉が悪く,ポリ袋の中が水浸しとなってしまった.

 

連日の深夜勤務で夜型の体となっているので,1時を過ぎても全く眠くならない.

 

 

 

今回の旅程だが,単独行でもあるので道のりを短くし,必ず日のあるうちにサイト地に着こうと考えている.

 

 

おおよその予定は以下の通りである.

 

9/13:大曲-真昼岳林道(980m)-真昼温泉-湯田(岩手湯本)温泉-相野々温泉

 

 

9/14:相野々温泉-国道107号-横手-国道13号-雄勝(オガチ)-国道108号-秋の宮温泉

 

9/15:秋の宮温泉-国道108号-鬼首峠(オニコウベ)-鬼首温泉

-花立峠-舟形-肘折(ヒジオリ)温泉

 

9/16:肘折温泉-十部一峠-宮内-寒河江+-JR左沢(アテラザワ)線+-山形+-山形新幹線+-東京

 

 

 

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9/13 山形を過ぎ,こまめに停車するようになった急行「津軽」は7:44定刻に

奥羽本線・大曲駅に到着. 曇りがちでだいぶ涼しい天気です.

日曜だというのに駅には多くの高校生がやってきています.

 

ちょっと酒が残っている寝不足の体でのろのろと自転車を組みます.後荷台があるので4本の小ネジを締めなくてはならないので 多少面倒です.

 

蕎麦を食ったりして9時出発.線路を越えて一路 真昼岳を越える

千畑(センハタ)・沢内峰越林道を目指します. 麓の条木公園。

青々とした芝生が敷いてあって昼寝したくなってしまいました. スポーツドリンクを仕込んで林道に入ります.

 

 

公園を過ぎると早やダート。真昼川に沿って緩く締まったダートを登ります.

 

38 X 26か,28 X23で粛々と進みます.空は晴れて明るくなってきました.

夏の名残の入道雲がもくもくと奥羽の屋根にかかっています.

 

1000m前後の山脈なので それほど威圧感はありません.

黒々とした色合いが特徴的といえましょう. 山に入ってみると,

ブナの原生林と杉の植林帯が交錯しています.

 

11時半頃 「峰越の水」と看板の掛かった湧き水の所に到着.

岩手県沢内村側から越えてきたHEADのMTBの人と喋ります.

この日に会ったサイクリストはこの人だけ.

 

ここで8合目というところでしょうか?

 

 

12時 峠に到着. 真昼岳登山道・峰越口の看板があります. (97Xm)

真昼岳は1060mで,林道を登ってくる途中,尾根伝いの道を歩いているハイカーのカラフルな姿が見えました.

 

峠にはハイカーたちの車が10台ほど停まっていました.

 

 

暑くもなく 寒くもなく 湯を沸かすほどでもないので水筒の水と,菓子パンで

昼食とします. 一人だと所在無い.30分も景色を眺めて下り始めます.

 

秋田・ 大曲側は人家がたくさんありますが,岩手・沢内側は山ばかりです.

 

岩手側はUP DOWNがあり 少し手間取ります.

 

真昼本沢あたりまで中型バスが入ってきています.「沢内村」と前面に掲げており

子供たちを真昼岳登山口に連れてきたようです.

 

更に下り 下ノ沢に入り,真昼温泉と書かれた古ぼけた建屋を見つけました.

前郷地区の公衆浴場となっており\150だそうです.

2時になっていました.

 

これから先 温泉に続々出会うのでまだ入らないでおきます.既に舗装になって

います.

 

 和賀川沿いに平坦な道を南下すると間もなく湯田(ユタ)・岩手湯本温泉に到着.

ここの温泉プールで岩手県高校水泳大会が開かれており,ジャージ姿の高校生が

温泉町に溢れています. この小さな温泉町のスーパーでロールマットを購入.

これで安心して露営できます.

 

ここにも公衆浴場がありますがパス. 湯田を出てすぐ大沓(オオクツ)温泉のハーブ湯の看板があります.国道107号 平和街道(平石-和賀)に出るとJR北上線「ほっと湯田」

駅がすぐ近くです. この駅 もとは陸中川尻といっていたのですが,現在では

駅舎に公衆浴場を併設し, 多くの観光客を集めています.

 

かなり大きな施設で3階建.「ゆ」の暖簾がかかっており,

湯上がりの休憩室も充実しているようでした.

 

まだ4時なので更に足を伸ばし,県境を越えて秋田県山内(サンナイ)村の相野々温泉

に向かいます. A CO-OPで食購. といっても一人なので献立に困ります.

レトルトカレーにプチトマトと,朝食用にお茶漬のもとを買います.

 

どうもここでは農産物の方が,工業的に作った食べ物より安いようです.

 

これが本当でしょうね.このトマト。果汁が濃くて大層おいしいものでした.

 

 

県境の峠のすぐ近く,巣郷(スゴウ)という所にも温泉があります.

「峠の湯」と称して街道を行く車が立ち寄る場所となっています.

 

大して登ったという気はしないのですが,秋田側は豪快な下り.北上線に沿って

下ります.黒沢,小松川と小さな駅が続きます.駅よりも国道沿いの羽後交通の

ログハウス風バス停の方が泊まるのにはよさそうです.

 

 

相野々のトンネルを抜けるとすぐに相野々温泉に向かう分岐が現れました.

 

特別養護老ホーム「鶴寿荘」を横に眺めながら鶴ケ池湖畔の相野々温泉・鶴ケ池荘

を見つけました. 今日のサイトは 国民宿舎 鶴ケ池荘と池を挟んで反対側の公園の

小山の上のあずまやとしました.

ここなら池のぐるりが見渡せてよいし,静かそうです.

 

屋根があるので夜露に濡れる心配もありません.更に水道もあって,周りは芝生と

言うことありません.

 

 

5時過ぎにサイト地に荷物を下ろし,ツエルトを建てるのは後にして,米の調達と風呂

(鶴ケ池荘)に出掛けました. 相野々の駅前の農協(A CO-OPではない)は日曜とあって

閉まっており, カーテンを半分閉じた米屋を覗いてみます.

5合ほど米が欲しい,と言うと

 

5キロからしかない,と言われてしまいました.

その家の米櫃から分けてもらって\395を支払いました.

「秋田小町」と「奥の細道」というブランド米をブレンドした物だそうです.

 

 

鶴ケ池荘の風呂は\230,単純泉ですが石鹸の泡立ちは悪いようです.風呂から

池と例の小山が見えて一杯やりたくなるような美しい光景.

 

 

湯上がりに大相撲秋場所初日の舞の海など見ながらアイスを嘗めていたらとっぷり

日が暮れてしまいました. 廊下を夕食を運ぶワゴンが行き来して

ここに泊まっているような気分になってしまいました.

しかし,私にはまだ一仕事残っているのです.

ツエルトを建て,飯の支度をせねばなりません.

 

 宿の明かりと夕餉の匂いに後ろ髪を引かれながら鶴ケ池荘を後にします.

 

帰りがけにビールと当地の日本酒・両関,爛漫のワンカップを購入し,小山に戻ります.

(本日の支出は\2,000でした. その半分は酒)

 

四阿にはテーブルと椅子もあり,椅子の上に寝袋を延べればツエルトを張る必要もないな,と思いツエルトを張るのをやめてしまいます(このため夜明けの寒さで目が覚めた) 

手早く米をとぎ,Primus 2243で炊きますが,コッヘルの底が2243のバーナーと同じ

ほどの広さなので火のまわりが悪く,芯っぽい飯を炊いてしまいます.

今回はカレーなので気になりませんが.

PrimusのバーナーヘッドにEPIの寒冷地用カートリッジ(大)は良好な相性です.

 

飯が炊ける間にビールをやっていてすっかり体が冷えてしまいました.向かいの

国民宿舎では宴会をやっている様子.周りが静かなので歓声がこちらまで届きます.

 

背後の線路には1時間毎に汽車がやってきます.

随分遠くからディーゼルエンジンの音が聞こえてきます.

 

風避け付蝋燭と見え隠れする満月の明かりで物の輪郭くらいはわかります.

ガスバーナーはガソリンバーナーよりもだいぶ静かなのでその存在は気になりませんが,飯の吹きこぼれが止むまでは厄介でした.

 

 山中のためラジオの受信状態が悪く,当地のNHKが入りません.近いところで仙台

もしくは札幌が入ります.あと何故かラジオ大阪やMBSなどがよく入ります.

 

北朝鮮の暗号放送(数字を延々言い続けるやつ)は睡眠導入のために好適です.

 

 どうやら明日も天気は良好な様子で安心します.

ただ9/14の晩から低気圧が東北地方を通過するので一雨来そうですが.

 

 買い込んだ酒を全部飲み終わらないうちに眠くなって,夏用シュラフを頭まで被って眠ってしまいました. 8時くらい?

 

 

 

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9/14(月)の朝は夜明けの寒さで目覚めました.

4時50分くらいだったと思います.

 

足元が冷え冷えしているので今からツエルトを立てようか,と思いましたが寝袋から

出るのさえ辛い. 逡巡しているうちにまた寝入ってしまいます.

 

 

6時. 耳元で村内放送がガンガンかかります.

これで完全にめがさめました.

 

小山の上の電柱にスピーカが設置してあったのです.

もうだいぶ日も高く,暖かくなってきていましたので,飯を炊き,茶漬で簡単に朝食を済ませてしまいます.

 

紅茶を飲んでいるとあまりの長閑さにまた眠気を催して8時過ぎまで寝てしまいました.

 

 8時半ころ,荷物を畳んで山を下ります.国道107号に出て,横手まで.国道13号を

南下し,秋の宮温泉郷へ向かう雄勝の分岐までは交通量の多い消化コースです.

 

主要国道なので歩道が広くとってあり,左右の田園風景をながめながら気長に

走ります.

南西方に富士山のような形の山がくっきり見えますが,何という山でしょうか?

 

 

十文字はバイパスで抜けますが,湯沢には市内に入ってみます.サンエーというデパートが開店したばかりで 昼食の食購をしに入ってみます.

朝摘みの泥付枝豆が袋一杯\150やら 果物の産地ということで

葡萄,梨,りんごなどが安いようです.結局腹が減ってここの食堂で

チキンライス,スパゲティ,エビフライ,コロッケ(\850)を食べて満腹.

 

物価は一体に安いようです.

生姜焼きやら,エビフライの定食類が\600なのです.

 

11時半過ぎに国道13号を更に南下.

小野の小町の生誕地,雄勝町小野に近づきます.

 

その手の名跡があるようですが特に見物することもなく通過します.

新万石橋より秋田市内に注ぎ込む雄物川の源流となる役内川を遡ります.

 

ダラダラした坂で38 X 20,23でユルユル上ります.2時ころ 今日の目的地である

秋の宮温泉に着いてしまい,鬼首峠を越えて鬼首温泉に下りてしまうか,迷います.

 

町営の衆楽荘の前で休んでいると,カモシカが林の中から現れました.

国道の向かいの天理教の集会所の人々が出てきて「カメラ、カメラ」と言っております.

地元の人達にとっても珍しいのでしょう.私がカメラを出している間にゲートボール場の脇の林をかけおりて行ってしまいました.

 

 

鬼首側に下りると観光地化していると思い,鄙びた秋の宮側で留まることに決め,

サイトは矢地ノ沢運動公園のCAMP場に決め,日も高いのに風呂に漬かることに

 

します. この当たりは「温泉郷」というだけあって小さな温泉が違う名前でたくさん

存在しています.

湯の岱温泉,鷹の湯温泉,稲住温泉,湯の又温泉と迷ってしまいます.

 

 

今日は国道108号・鬼首街道沿いにあった 稲住温泉・松の湯

〔盆栽付露天風呂〕

 

(\500)に入ってみます. ちなみに泊まりは\8,500〜でこの日はいっぱいでした.

 

泊まり客より早く一番風呂に漬かるというのも痛快.

熱い風呂で,気温の低さと丁度調和しています. 盆栽付露天風呂ですが,ちょっと小さく,盆栽は見事なのでしょうが見る目がないので,台にしていたビールケースの違和感の方が強く感じました.

 

バス停の前に食料品店と,酒屋があってとりあえずビールと,炊き込み御飯を作ろうと

山菜ならぬ漬物を購入します(←これは失敗だった).あと菓子パン2ケ等.

 

矢地ノ沢までは200mほど登らされてしまいました.

昨年夏の早池峰・うすゆき山荘のようです.(ここでも連泊してしまうことになります)

 

稲住温泉ホテルは上高地帝国ホテルのような雰囲気. というよりよくぞこんな辺鄙な山中に瀟洒な低層のホテルを造ったものだ,と感心しました.

こういうリゾートホテルなら泊まってみたい気がします.

 

更に湯の岱小学校の横を通り抜け,杉林の中を高倉沢に沿って登り詰めていくと,日本重化学工業管理による地熱利用施設が林道脇に立っています.

蒸気を逃がす排気筒が亜硫酸ガスで真っ赤に腐食しています.

説明板によると秋の宮一帯の熱源をここから供給しているとか.

 

CAMP場に至る分岐に峠の家という食堂があって,開いているのかいないのか不明でしたが,どうやら人が住んでいる事が確認できました.ここがCAMP場の管理も行っているようです.

 

CAMP場にはオートキャンプの家族が一組いるだけ.この人達がいなかったらかなり心細い一夜となったことでしょう. 3時過ぎ ツエルトを炊事場の軒下に建てて紅茶をいれ,日記を書いたりします. ここは山影のせいかラジオの入りが悪く退屈な夜になりそう

です.

 

ブナの林の斜面で明かりはなく,山に日が落ちると寂しい夜がやってきました.

 

枝を揺らす風がまた不気味です.気温も下がっているので,ツエルト内で飯を炊き,

目止めをしてNHK名古屋をザーザ−した音で聞きながら長い夜を過ごします.

 

 

10時過ぎからついに降ってきました.かなり本格的です.明日は肘折温泉まで

移動できるか,甚だ心配になってきました.

 

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9/15(火)

 

6時頃寝袋の中で目覚める.ツエルトの外ではかなり強い雨が降っている

ようす. 炊事場のトタン屋根を激しく叩く雨音.

 

天気予報は午後から雨が上がるなどと言っているので,午前中はツエルトの中でウダウダしていよう.かなり冷え込んでいるのでツエルトの中で飯を炊き,紅茶をいれる. 明るくなってくるとラジオの入りが悪くなるようだ.

 

 

昨夜のオートキャンプの家族はどうしたか?

とツエルトの隙間から覗くとまだ起きていない.

 

運動場に停めたテラノはまだある.

朝食に茶漬を食べて また寝てしまった.

 

昼過ぎ 雨が小降りになってきた.さて鬼首峠を越えて宮城県に入るべきか?

 

今晩も雨になるという.ここのようにしっかりした屋根のあるねぐらを見つける事

ができるか 心配だったので連泊する事に決め,食事を取りに山を下ることにした.

 

昨日登ってきたのと反対方向に 更に道が続いているので

それを進むと,農家が何軒かあり, 収穫した大根を洗っていた.

じき国道108号へ続く下りの林道となる.

 

この林道の途中に分岐があり, ダートの道2分で「湯の又温泉」とある.好奇心から

林道を詰めていってみると,湯の又沢の渓谷に張りつくように一軒の湯治宿がたっていた.

 

 中に入ってみるが人気がない.沢のよく見える風呂場を覗いて玄関に戻って

みると,横の薄暗い部屋でコタツにもぐり込んでテレビを見ている管理人夫婦が

いて驚いた. ここの泊まりは二食付で\8,500〜ということで風呂だけなら\400

ということだった. 今日は風呂に入れるとは思っていなかったので喜んで

風呂を借りる. 昨日タオルをなくしてしまい, バンダナしかない.

 

 泉質は昨日入ったところと同じで,温度も滅法熱い.30分と入っていられなかった

この風呂は女湯の方が渓流に沿って眺めがいいというものだった.(客が他にいなかったので両方入ってみた)

 

 さて 湯上がりの火照った体で林道に戻り国道へ下る.国民宿舎「秋の宮山荘」の

少し上に出た.いくつかドライブインがあるが営業しているのは一軒だけだった.

 

一帯をうろついて今晩の食糧も調達したい,と思っていたら

自然休養村管理センターの軒下でランドナーの泥を落としている人がいた.

珍しいので声をかけてみると,何と昨年 5月 四国カルストで出会った 福島の人だった. 

 

彼はその後 32才で結婚して何やかや身辺多忙でサイクリングからは遠ざかっていたが1年半ぶりでここ1週間ほどカーサイクリングで東北各地を巡回しているという.主に鳥海山の周辺の林道をやっつけていて,今日9/15が最終日なのだそうだった.

 

 

彼も昼食を取っていないということなので,遅い食事を一緒にとることにした.

 

唯一開いていた ドライブインで鮎定食(鮎塩焼,鮎唐揚げ,山菜酢の物,汁,飯,梨で\1,100)と当地(稲川町)の名物「稲庭うどん」(\690)を食べ 満腹する.

 

鮎は山間でかなり食べられる.が,このうどん,上品な出汁とかしわの味がよくあ

って絶品だった.東北なのでもっと濃い味つけかと思っていたのだが…

 

 彼は4時過ぎにここを発ち,鬼首峠を越え,陸前古川から東北自動車道に乗って

郡山へ帰るということだった.しかし,あの朴訥を絵に描いたような人が既に1児

の父とは….

 

おもいがけぬ再会に興奮してしまったが,今晩はまた一人である.いっとき晴れ間が

覗いていた空も 既に雲が戻ってきた.

 

6時,重い足取りで林道を登りかえし,矢地ノ沢へ.

沿道の農家の夕餉の匂いが寂しさを募らせる.

明日はもう平日なので広いCAMP場に本当に一人である.

 

周囲1km四方は確実に無人だ,と思うと心細くてしようがない.

ふだんあれだけ人ぎらいを装っているのに,情けないことだ.

目を凝らしながら枝の間から何か現れやしないか,と脅えながらツエルトの張ってある炊事場に着いた.

 

 暫くは息が切れて 暑くて 外にいた.蝋燭を付けると,ぼんやりした明かりが点いて

その周りだけ明るい. 周囲は漆黒の闇だ. 8時前とうとう降ってきてしまった.

雨音が周囲の山の気配をも消してしまう.

 

ツエルトに籠もって 紅茶とワンカップを飲んで楽しいことだけ考えることにする.

ラジオ大阪の「かもんたつお」のたわいない番組を聞くことができて気が紛れる.

 

何か目が冴えてしまって眠れない.NHKでは敬老の日特集で,老人問題のやるせない

議論を続けていて気が滅入る.

 

それでもいつ眠ってしまったのか,気がついたら9/16(水)の朝だった.

 

晴れてはいないが雨の降るような曇りではない.

のろのろと茶を沸かしツエルトを撤収する. 一昨日登ってきた道を戻り,

最寄りの奥羽本線の駅から輪行してしまうことにする. 鬼首峠を越えると宮城県に入ってしまい,山形新幹線に乗るという目的を果たせなくなってしまうからだ.

 

 8時半にCAMP場を出る.あれだけ私を脅えさせたぶなの梢が雲間の日差しに

きらきら輝いている. 水蒸気の多い空. 

 

快調に国道108号を下り,奥羽本線・横堀という駅に着いた.小さな町だが特急

「こまくさ」が停まる.バラす前に横堀温泉・紫雲閣で風呂に入る(\350).秋の宮の

 

泉源からトラックで運んできた湯である.今回はこの「湯」に3回も漬かってしまった.

 

12時半の鈍行で新庄へ. 県境の雄勝峠というのは今回初めて知った.

 

山形から山形新幹線に乗る. 15:22発.駅の端につくりつけた妙に新しいホームだった.

ここだけ売店の品物の値段が高い. 

 

新幹線は標準軌なのにフワフワと頼り無い揺れ方をする.

東海道や東北,上越新幹線と同じ印象だった. 車室はそれほどせまいとは感じなかった.福島で東北新幹線と連結したが,こういうことをこれからずっと続けるのだろうか?

 

 

18:43 東京着. 東京は暑く,人だらけだった.

今回は前半の快調さと,後半の停滞が対照的だった.

たまにはこういう寂しい思いをするのもいいかも知れないが

暫くは 普通に宿を取って 普通のパスハンティングをしようと思う.

 

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