北海道・知床TOUR(1992/08)お座敷版

 

出発前日

 

8/6(木)は 暑い日でした. 会社は休んで 一日休養しようと思ったのですが,N氏が放出するというオアシス ポケットのために大手町まで ネクタイ締めて行ってしまいました. (ノータイだと 昼間 あの辺りを歩くのが憚られる)

 

お昼ちょっと前に フロアに入っていくと,Nさんは机の上に文豪MINIワープロやらオアシスポケットなどを広げておりました. 周囲の目を憚りながら オアシスポケットの操作方法を教わり, 昼食を一緒にしよう,と 次の日から一緒に行動する T氏,I君を連れて 地下のスパゲティ屋に向かいました.

 

冷房は効いているが 空気の循環の悪い地下の一室で オムライスなどを食らい,装備の机上点検を行いました. どうもT氏のレーサーのW/Oタイヤが擦り減っているらしい,と判明し,私がこれから秋葉原に買いに行くことになります.

 

1時前に皆と別れ,私は秋葉原へ. 平日とはいえ 学校は夏休み. 秋葉原の通りは学生で溢れていました.ソフマップ中古品センターに行って FDD と オアシスポケット用FDサポートソフトを購入. そして I/O DATAのSRAM CARD(256KB)も購入.

 

通りに出ると あまりの暑さで 頭がくらくらします. 立ち飲みコーヒーで

一服. いつもは冷房の効いた部屋で過ごしているため すっかりひよわになっているようです.

御徒町のOD BOXに寄るが,T氏用の700C のチューブはなく,リアエンドアダプタを買って帰宅. 早速 オアシスポケットをいじったりしている内に 夜が更けるがねつけず, 2時過ぎまで起きていた.

 

 

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移動日(特急「オホーツク」車中)

 

寝つけないまま 8/7の朝となりました. 羽田までの行き方として 実走しようか,とも考えたのですが, 早起きして山の手線の混雑を避け,モノレールに乗った方が楽だ,と思い直し, 7時に家をでました.

山の手線はどうやら 輪行袋も支障なく置けたのですが, 浜松町でモノレールに乗り換える時がひどかった.

大荷物を抱え, 難民の群れのようになって モノレール乗り場に押し寄せる雑踏です.ここから 羽田のCHECK IN COUNTER , 待合室までが混雑のピークです.

浜松町駅構内の雑踏の中での担ぎですっかり消耗してしまいました.子連れの人たちは もっと大変そう.一回 モノレールをやり過ごして 列の先頭に並び,席を確保しました. モノレールは東京の中でも 特に殺風景な 倉庫街,工場街を通り過ぎていきます.

新駅・天王州には高層ビルができ,外資系の会社が入っているようです.

 

8:40ほどに日航のカウンタに到着.輪行袋が人にごつごつぶつかる程のこみようです.

I隊員がほどなく登場. 青いジャージ上下で,いつもながらのヌーボーとした面もちです.

そういう私も Tシャツにジャージですから 同じようなもんですが….チェックインを済ませ,上の待合室で 衛星テレビでも見てあとの3人(JACK★天野氏,N氏,T氏)を待つことにします.

 

羽田空港に来るのは高校の修学旅行以来ですが, かなり古い設備です.

飛行機代の高さからして 成田より設備がいいくらいでないと 不満であります.

誰も他に現れないので Iと一緒にGATEをくぐります. 機内持込み手荷物であるフロント バッグにEPIのガス カートリッジを入れておいたら X線検査でひっかかってしまい空港預かりになってしまいました.

飛行機の旅に慣れていないと恥をかいてしまいます.(JACK★天野氏も同様にカートリッジを取られた)

 

25番乗り込み口のベンチにはNさんが既に座っており,オアシスポケット2で 何やら特許の翻訳をしています.搭乗時刻になってもJACK★天野氏とTさんが現れずTさんの群馬の実家に電話してしまいます.

 

出発の5分前にJACK★天野氏,Tさんとも登場して 事なきを得ます.Iと私

以外は 皆 半ズボンというかレーパンの勇ましい出で立ちで 飛行機に乗り込みます.

 

10分ほど後れて離陸. ディズニーランドが眼下に 箱庭のようになって見えます.

所詮, 人間の造るものはこの程度のもの. 続いて視界に入ってくる那須連山の美しさには到底 敵いません.

 

千歳には11:00に到着. JR千歳空港駅ができており,輪行袋をカートに載せて エレベータに乗り 地下のホームへ. 札幌へは 快速で40分ほど. この辺りは北海道でも人口の多い方であり, 雰囲気は東京の郊外,といった感じです.

 

大荷物をホームに留置して, 奪われたガス カートリッジの代わりを調達しに,すすきのへ.

狸小路にICIがあり,東京の同店より 値付けは高いのですが, とにかく 大型のカートリッジを入手できました. ラーメン横町で味噌ラーメンを食べたり(あまり印象に残らないラーメンだった)

ダイエーの食品売場で 今晩と明朝の食糧を購入します. JACK★天野氏は忘れずにJACK DANIELを一本購入(2晩で空いた)

 

キリンビールの北海道限定発売の「COPELAND」というのを飲んでみますが, かなり頼りない感じ. 北海道ではサッポロビール の CLASSICか 「北海道」が美味いように思えました.

 

大通り公園, 旧道庁などを見物しながら駅に戻ります. 道中,見慣れた紺のベストを着たOLさんを発見.小脇に弊社の社名入り封筒を抱えています. まぎれもなく弊社の札幌営業所の人です. ここで会ったが百年めといいたいところですが,SHYな私たちは ジワジワと彼女を尾行したのでした. ところが 大通り公園のサントリービアガーデンの所で 写真など撮っているうちに まかれてしまったのでした.

 

旧道庁の芝生の上に寝そべっていると,JACK★天野氏がCANONの筒状のカメラを取り出します. (この他に コニカ BIG MINIも持ってきていた)なかなか変わったカメラですが,いったいどこに隠しもっていたのか?

 

15:1X発の特急「オホーツク」に乗り込むやいなや,ビールの栓が開けられます.

国道12号と並行して走りながらも 長閑な風景がつづき, 解放感にひたってしまいます. 昨晩の疲れでつい うとうとしてしまったり. 禁煙車なので JACK★天野氏は辛そうです.(今回も愛飲の煙草「COSMOS」を1カートン 持ち込んでいた)

 

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ところで 今回の参加メンバーを紹介しておきましょう.会社のサイクリング部の夏合宿として実施したため すべて 同じ会社の者です.

 

1)JACK★天野氏 : この5月より 関連会社に出向.職場の西新宿界隈の飲み屋を開拓中. 酒豪でヘビースモーカー今回はPEUGEOTのスポルティフで参加.

700X20CのW/Oタイヤに後ろ両サイドバッグを装着したため, 毎日パンクに悩まされた.空荷で海岸道路を走ると速かった. SPDのせいもあるか?

 

2)N氏: オアシスポケットをいつも離さず スーツのポケットに本当に入れている. 暇ができると 仕事をしたり 紀行文(まだ宮古島編を執筆中)を書いたりしている.

今回は宮田のMTBで参加. いつもの休日は 江戸川サイクリングロードでオアシスポケットとストーブをもって 一日過ごしているという.

 

3)T氏:テニス,ジョギングが趣味というごく普通の人だが, N氏の隣の席に座ったおかげで 自転車を始めてしまった. 5月にはNEW ZEALANDにも自転車を持ち込んだという.

自転車は一張羅のナルシマ 700C号で参加. メンテをしようという気持ちがないが, こういう人の方がトラブルに遇わなかったりする. 荷物はリュックで背負って辛そう. しかし 平地では速い.

 

4)I :プロレスをこよなく愛する. 目が開いてるのか 寝てるのかわからない顔.

食物の嗜好は保守的で, 生物はあまり食わない. 知床に行って 蟹を食わず

しゃけフライ定食なんか食ってたりする.

自転車は一張羅のナルシマTubularレーサーで参加. 心配していたパンクはなかった.

知床峠もなんなくこなす. 鍛えれば強くなるのでは?

 

5)お座敷サイクリスト: 夏は一人でCAMPする事が多かったが 今回は「蟹」と「ウニ」の魅力に負けて, 4泊5日と短いながら 合宿に便乗することにしました.

ランドナーにD Packをくくりつけた簡易CAMPING仕様で参加. これ以上重くすると(本格的にサイドバッグをつけると 走れなくなってしまうヨワクナッタモノネ)

 

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雨の斜里駅 STATION HOTEL

 

さて 引き続き 特急「オホーツク」車内です.

 

旭川から石北本線に入り,当麻(トウマ)という駅があります.単線なので上り列車をやり過ごすため運転停車.その隣が「いかうし」という駅で, 漢字でどうあてるのか?

と考えてしまいました.食い意地のはっている我々は いか飯の御飯の代わりに牛肉を詰めたものであろうか? と予想しておりましたが, 実際は「伊香牛」と書くのでした.

列車は北見峠を石北トンネルで越え,川霧に覆われた湧別川を下ります.

丸瀬布(マルセップ)でとっぷり日が暮れました. 飯田線辺りの山中の駅のような感じ.

特急が停まる駅とは思えません. 遠軽ではスイッチバック.名寄本線が廃線になってしまい,寂しいものです.留辺蘂(ルベシベ) ,相ノ内(アイノナイ)等 真っ暗な中を汽車は進みます. 北見の駅前が随分明るく感じられました.

 

20:43 定刻網走に到着. 駅構内にはいるわいるわ STATION HOTELしてるサイクリストがざっと30名. 思い思いにマットを広げたり,ストーブで炊事をしたり 難民CAMPの様相です.

網走は遅くまで店が開いているので ここで泊まってもよかったのですが明朝 なるべく知床の近くから走り出したかったので,終列車で斜里まで行くことにしました.

 

釧網本線の終列車は,単行です. 昼間ならオホーツク海が眼前に広がるのですが,真っ暗で何も見えません. 停まる各駅は喫茶店となっており 昼間は快適に列車を待てるのでしょう. しかし, 夜は施錠されてしまい,我々のように駅をねぐらと考えている輩には不便な事になってしまいました.

 

22時前に 斜里に到着. ここにも自転車やら 山屋やら 10数名が軒下に寝ておりました. 我々は駅周辺でいい場所が探しましたが,農協ビルの地下駐車場は

冷蔵倉庫のコンプレッサの騒音がうるさいし, 結局駅に戻ってきてしまいました.

天気予報によると どうやら 台風が接近している模様. 屋根の下で寝ないと

ひどい目にあってしまいます. つぼ八に飲みに行っていた山屋の一団が帰ってきて更に駅の軒下は混雑. 待合室は施錠されてしまい, 我々はホームにはみ出してどうやらねぐらを確保. 自転車も組み上げて後は飲むだけ.

 

ホームの照明は消されたので JACK★天野氏のオイルランタンに点灯します. 札幌で買ったつまみを広げ JACK DANIELを啜ります. この晩だけで 半分くらいになってしまった.飲んでいるうちに雨が降り始めます. かなり本格的に.

 

JACK★天野氏は軒先に寝ていたので少し 内側へ移動. エアマットに南西航空の薄い毛布だけです.私の方は雨水が流れてきて 1cm厚のウレタンマットで辛ろうじて濡れずに済んでいましたが, 足元はマットからはみ出てしまい,寝袋を濡らしてしまいました. 他の3人は快適に眠れたようす.

 

あくる日の空を心配しながら 0時過ぎ 眠りについたのでした.

 

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斜里駅 雨の夜明け

 

(本日、 8/16(日) 休日出勤中に会社で書いております。

ここは冷房がなくビルの最上階なので蒸し風呂のような暑さです…。会社のワープロなので辞書がもとのままであり、使いにくい)

 

8/8(土) の朝のことでございます。 5:10 駅員に起こされてしまいました。

正確に言うと、ドヤされて追い出されたのです。「構内の軒下」というのを我々が拡大解釈して「ホームの軒下」まで張り出していたせいです。

 

 寝たんだか 寝ないんだか分からないうちに とにかく荷物をマットに載せてひきずってホームの外に出ました。 雨あしは強くなったり弱くなったり。

 火を起こすにも場所がなく、パッキングして待合室が開くのを待ちます。私のシュラフは足元の方がかなりし湿っぽくなってしまいました。

 

 待合室が6時過ぎに開き、そこになだれこんで 苦い味のする菓子パンなどをもそもそかじりながら 今日の行程について話し合いました。

 

私 「台風が近づいているっていうことですから、今日はカムイワッカまでは無理でしょうねえ。」

JACK「まずウトロまで行って考えよう。」

私 「今日はテント張るところあるんでしょうか?」

N「宇登呂にはCAMP場があるけど、どうかなあ…」

私「最悪の場合を考えて、ちょっとバスの時間を調べてきますね」

 

と言って、駅舎の向かいの斜里バス営業所で半島方面のダイヤを調べてみた。

 すると、かなりの頻度で知床林道の奥地、知床大橋までバスが通っているのである。 宇登呂までならダイヤを気にせず乗ることができる。バス輪行もいいかなあとひよった考えをしながら皆の所に戻ってみる。雨が弱まってきたせいか、自転車を組み上げてしまってバラすのが面倒くさいのか皆走る気満々である。

 

 そこでこれから雨あしの強まるのを予想して 宇登呂に宿を取ることにした。タウンページで民宿をいくつか当たってみる。ここの相場は 4,000ほどのようで助かる。岩尾別温泉・ホテル「地の果て」なんていうところもあったがこれは 20,000 近く取るので敬遠。 (実際地の果てのような所にあった)

 

何軒か「満員だ」と断られ、宇登呂の「太陽」という民宿 (一泊二食 4,000) が取れた。宇登呂に宿は多いが、一番のハイシーズンとあってどこも取りにくいようだった。( この時点ではまだライダーハウスに泊まるという考えはない)

 宿も決まったので、取り合えず突っ走ろうということになり、

9時過ぎ、雨の合間をついて漸く 5人は走り始めたのだった。

 

 斜里の街は小さく、じきにジャガイモやら玉蜀黍の畑が続く地帯に出てしまう。

緩いUP DOWN が続き、飛沫をあげながら進む。靴の中まで濡れることはなく、雨天としては快適な方だろう。

 

N氏が遅れる。バス停の小屋で休んでいると、寝不足のせいでウトウトしてくる。 20分ほどもして追いついてくるが、スローパンクとのこと。ウッズバルブのチューブなので虫ゴムが劣化したのか?原因不明で、チューブを取り替えるのも難儀なのでパンク修理スプレーでごまかす。

交通量はけっこう多い。トラックも観光客の「札幌」ナンバー等の車も多い。大型バスが飛沫を上げて走り去っていく。

 

 いつの間に高度を上げていたのか、オホーツク海に出る時、大分下った。

濃紺の冷たそうな海だった。

それでも砂浜でバーベキューなどして楽しんでいる人達がいる。四駆の車が多い。

 UP DOWN のない道路で助かる。半島の北西側では北方領土が見えないので

鉛色の空の下、オホーツク海が広がっているだけ。道幅は広くバスが追い抜いて行っても恐怖を感じることはない。

 

トンネルの手前で車やバイクが群がっている所があった。オシンコシンの滝である。

 遠音別 (オンネベツ) 川の河口にある滝。海のすぐ手前で堰き止められて、岩盤の上を水が流れている。落差は30メートルもないだろう。

 

 どうも北海道には名前負けしてる観光ポイントが多いような気がする。

むしろ、指摘しがたい北海道らしい「雰囲気」の方が貴重だと思う。

これは最終日に標津の原野を貫く道路を走っていて感じたことです。

 

 信州・東北辺りの峻険な山々とは違い、北海道での視野は水平方向に広がっていきます。

そして、空が広い。今回は行けなかった開陽台からの展望は文字通り360度のものなのでしょう。

 

  (「ですます体」と「だ・である体」が錯綜していますがご容赦下さい)

 

 ( ここで一服。ちょっと顔を洗ってきます…)

 

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ウトロ-カムイワッカ

 

 更に 5人はいい調子で走り続けます。最早路面は乾いており、風が涼しすぎる位で快適なサイクリングとなってきました。

気掛かりなN氏の低圧タイヤは宇登呂の町の入口にあった日石のガソリンスタンドで空気を入れてもらいました。

 

「船長の家」、「酋長の家」等 おもしろい名前の民宿がある。今回はアイヌの歴史の勉強など全然せず、物見遊山に徹しているのでネーミングをただ面白がるだけで、自ら皮相な事ばかり言っているようで後ろめたかった。

 

民宿「太陽」は斜里バスの宇登呂バスターミナルの真ん前にあった。

バスターミナルは大型バスが 3台ほど泊まれる広さだったが、ここから女満別空港まで直通便がででいる。

 

 昼食を取りたいと思ったが、民宿「太陽」はそばやを兼ねている。しかし、我々の希望は「ウニ丼」だった。 A CO-OPの隣の食堂でウニ丼を頼む。( 1,500)

20分ほども待たせた挙げ句、ウニ、飯の量ともに腹三分目くらいのウニ丼が来た。

JACKは持参の本ワサビを小さなオロシガネで擦って、皆に分けてくれた。

(信州・安曇野の大王ワサビ園で購入したもの)

 

午後は何とか天気が持ちそうなので荷物を宿に置いて知床林道に侵入することにした。荷物を外してしまうとHEAVY DUTYさが消え失せて、お手軽観光地サイクリングになってしまった。特に細タイヤグループ (JACK、T、I) はシクロクロスを楽しむごとく知床林道の良質なダートに挑むのだった。

 

  A CO-OPで行動食を仕入れ (氷下魚の開きなど←これは酒の肴ですな)

 出発。プユニ岬まで 150メートルの登り。知床自然センターで知床横断道路

(国道334 号) と別れ、岩尾別に下ります。

分岐から岩尾別までの間にダートの区間があって片側通行をしていました。

 

 岩尾別にはユースホステルと養鱒場くらいしか見当たりません。

ユースの軒先でジュースを買って、水分補給。ベンチでコールマンスポーツスターのごついガソリンストーブでラーメン二丁を作っている細身のサイクリストがいました。シルク号で既に 2週間ほど北海道を走り回っているとか。

 羨ましくなるのと同時に、粗食に耐えて行動するのはもう不可能になって

しまった自分の体を哀れんだのでした。

 

岩尾別から知床五湖までは高原状の素晴らしい舗装路。ホテル「地の果て」への分岐は登り始めてすぐの所にあります。

 

林道の入口でレーサーの少年がヒッチハイクしていました。チューブラーで

林道に入るのが嫌らしい。一人なので、すぐに乗せてくれる車がみつかり

カムイワッカまで行ってしまったのでした。

 

我々はとりあえず自分の足で行けるとことまで行こうと 林道に進入したのでした。道幅は充分乗用車がすれちがえるほどあるのですが、キャタピラが通った跡なので洗濯板状態になっています。勾配は大したことなく、路面も締まっているので、充分乗って行けます。

 

海抜 350メートル地点の沢筋にはあっけなく着いてしまいました。どうも北上する方向の方が下りの距離が長かったように感じます。涼しいので途中でおにぎり等を頬張りながら、車と追いつ追われつ走ります。

 

狐の出てくるポイントがあって、もの欲しそうに道の真ん中に佇んでいます。こちらが懐に手をやると、餌を出してくれるものと察してトットッと駆け寄って来ます。耳の端に赤い樹脂製の識別票を付けており、全くの野生の狐では

ないのでした。中には黒い携帯発信器を首から下げた奴もいました。

 

 狐というのは猫より少し大きめ、小さめの柴犬といった感じでしょうか。

しっぽが胴体ほどの長さがあるのですが、今日は雨に濡れて痩せた体の輪郭があらわになり、行く者の哀れを誘っていました。

 

キットカットをやると手から美味そうに食べましたが、 ノド飴は匂いを嗅いだだけで走り去ってしまいました。自分で餌をやっておいて無責任な話ですが、人間に餌付けされてしまった動物は観光客のいなくなる秋から翌春にかけてどうやって過ごしているのでしょうか?

 

 狐の寄生虫「エキノコックス」は後でも話にのぼりますが、注意が必要です。N氏たちは沢水を飲んでいたようですが、私はこの寄生虫の事が頭にあっ

生水には手を出せませんでした。

 

随分長いことダートを走ったような気分でしたが (片道約10km) 、林道上で

車が渋滞しており、カムイワッカに近づいたことがわかりました。

特に駐車スペースがあるわけでもないので、すれちがえない車が立ち往生しています。私たちは湯気のたちのぼる沢のたもとに自転車を置き、裸足になって滑りそうな沢を登っていきました。

 

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カムイワッカ→ウトロ 台風前夜

 

8/8(土) 知床半島西北の知床林道上, カムイワッカの滝から 続けましょう.

 

カムイワッカの滝も ただの沢だったら こんなに地図に載るほどの観光地にはならなかっただろうに, 流れているのが「お湯」であったために 車,バイクが数十台も押し寄せる場所になってしまったのです.

 

我々も 愚かしくも ガイドブックに書いてある お湯の流れる岩盤を 攀じ登り始めましたが, 途中で 足元が怪しくなり 滝壺まで辿りつく執念も失せてしまったのでした.

ここが 訪れる人もない, 秘境であった頃に来たかったものです.

ガイドブックを見て のこのこやって来た自分の浅薄さにうんざり.

 

さて 帰り道は 霧のため,4時過ぎだというのに 薄暗くなった林道を ひたすらウトロに向け 走ります. 行きと同じような場所で 狐が出てきますがめもくれず.

道のりの予測がついているせいか,40分くらいで林道入口まで戻ってきてしまいました.

一人先行したのですが, 後続がなかな来ない. Iが10分ほどしてやってきて

JACK★天野氏がパンクしたと告げました. 時間もあることなので 少し登って知床五湖を覗いてみることにしました.

 

知床五湖の駐車場までは 分岐から3分くらい. しかし,そこから ハイキングコースを歩かねばなりません. 観光バスやら 乗用車が駐車場いっぱい停まっていて,観光客が多く, 自転車をコースに持ち込むのは迷惑そうです. いちばん手近な 2湖 のコースでも歩いて周回してくるのに40分もかかるというので 分岐で皆を待たせてしまいそうで断念. この駐車場には秘境に似つかわしくないほどの 売店がありました.

苺ソフトクリームは美味そうだったけれど. 不思議なのは 中間地点の岩尾別が寂れきっているのに, 末端の知床五湖にこんなに人の匂いのする施設がある事です.

秋から冬にかけて この辺りの様子はどうなってしまうのでしょうか?

興味あるところです.

 

全員が揃い, 知床横断道路までの登り返しも難無くこなし, 知床自然センターの前で一服. すると羅臼側から知床峠を越えて下ってくる MTBとレーサーのCAMPING CYCLISTがいました. まだ今晩の宿を決めてないとのこと.「これから台風が北上してくるので, 今晩の野営は辛いかもしれませんよ」というと,

「とりあえず,今日はウトロの国設CAMP場にテントを張るつもりです」と言っていました.

 

6時前には 宿にたどりつき, 狭いながらも風呂をつかって 夕食にありつきます.ホッケの煮付け,赤ウオの粕漬け, 鮭,イカの刺身等が標準食で,丼飯の米はなかなかいいものを使っています.(2杯食べた) 味噌汁は昆布出汁がよくきいておりました.

 

それと, \2,000/人で追加注文した 蟹 ですが, 甲羅が8 X 10cmくらいの あまり大きくない毛ガニが二匹. これを5人で味わって食べました. 意外と高いという印象.

Iは ミソの部分を食べたがらないので助かりましたが, JACK★天野氏が

こだわりを見せるのでした.

 

ビールを数本と, 甲羅酒用の冷酒,JACK★天野氏持参のバーボンで仕上げました.

8時には満腹になって 8畳の部屋に布団を延べたら 何もすることができなくなってしまい, テレビを少し見ているうちに寝てしまいました.

 

夜半, 例によって Tさんの「ウーッ」という呻き声によって 起こされてみると,異常に部屋の中が蒸し暑くなっています. 3時頃だったでしょうか. 外は雨.

缶ジュースを買いに出てみると, かなり涼しい. 雨に濡れないように 合羽を羽織って出ました. これは 8/9(日)の知床峠越えは辛いものになるな… と思いながら二度寝したのでした.

 

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ウトロ-知床峠-羅臼ライダーハウス

 

8/9(日)の朝, 曇り空で雲の流れは速く, 天気予報は80%の降水確率.

台風が日本海を北上中です. これは早いところ峠を越えて 雨の中の走行を短くしなければなりません. そして 今夜は暴風雨になりそうなので, 屋根のある所を予約しようとしました.

 

番号案内で羅臼のライダーハウスを紹介してもらいました.

宇登呂から羅臼まで40kmしかないのですが, 昼過ぎには降っていてもおかしくないだろう,と今日の道のりを短くしてしまいました.

 

ところでライダーハウスという宿泊施設に 私は今回初めて泊まってみました. 本州にはないものなので, ちょっと説明しますと,

 

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さて 8/9(日)は宇登呂から知床峠(733m)を越えて 羅臼へ抜ける日です.

といっても40kmほどの道のりなのでCAMP装備でも楽勝なんですが.

 

はっきりしない曇り空, 天気予報では降水確率80%と言っています.やはり野営するのは心配なので ライダーハウス「赤い屋根」というところを予約します. 一泊\500と破格に安い. (行ってみると それなりの設備でしたが…)

 

そうそう, このライダーハウスについて説明しよう,というところで尻切れとんぼで前回は終わってしまったのでした.

 

Nさんから聞かされていたのですが, この施設はオートバイで旅行する人を泊めるためのものです. その昔 テントを積んだライダー達がそこかしこに野営するのを見た篤志家が自宅の納屋等を改造・新築して彼らに解放したものです.

利用料金は\0〜\1,000くらいで 食事は別料金でジンギスカンを\1,000などで提供する所もあるようです. 風呂はない事が多い.

 

こんな施設が北海道中に150ケ所もあるというのです. これだけの密度だと徒歩でもライダーハウスだけを繋いで旅することができるでしょう. 本州にもこんな施設ができるといいのですが, 土地代が高いし, けっこう手間もかかるようだから無理でしょうか?

 

知床横断道路は真新しい舗装の広い2車線の素晴らしい道でした. 観光バスやらがかなり通りますが, 怖いという感じはない. 植生が信州の高原地帯のようで樺の木と熊笹が生い茂っています.

 

ひいこら登っている途中で, 一度ザブっと降られ,その後は雲の中を走るようになりました. 風が強く体温を奪われます. 寒さしのぎに28X23をクルクル回して10:00には峠に到着. 羅臼岳(1611m)は霧に煙って全く姿を見せません.

 

峠の駐車場に20〜30台の車が停まっており にぎにぎしい. じゃがバター売りのトラックも来ていて アツアツのを\300出して買ってみます. どうも大きめの芋一個を半分に割ったくらいで,材料費はほとんどかかってないな, と思いました. 芋自体も特別おいしいものではなかったが, この際 温かみを与えてくれるものが貴重でした.

 

約1時間遅れで全員が揃い,体の冷えきった我々は下りの途中,というかほとんど羅臼に近いのですが, 「熊の湯温泉」という無料の露天風呂に向けて 下り始めました.

 

気温12度くらいで ガスっているので下りでは手がかじかんできます.慎重に下り,熊の湯に到着. オートバイが道端に10数台停めてあり,川を渡ると直径3mくらいでしょうか, 男湯があり 脱衣所の小屋が横に立っていました. 女湯はよしずで目隠しされており男湯より堅固な造りの小屋と繋がっていました.

 

で この湯に入ろうとしますが, かなり熱い. 湯口からいちばん遠いところに人がかたまっている. 意を決して飛び込んでみると,首のところだけが熱く,胴体の方はどうやらがまんできます. ちょっとしょっぱいお湯です.

 

JACK★天野氏は優雅に湯端で頭など洗っています. これから2日間 風呂に入れないことがわかっていれば,私も念入りに洗っておくのだったのですが, この時は漬かるだけでいいやと思っていたのでした.

20分と漬かっていなかったと思いますが, かなり逆上せて茹だってきたので上がり, あとは羅臼の街へ降りて 昼間から酒でも食らって自堕落に過ごそう,と考えていました.

 

熊の湯から羅臼の街までは15分ほどの下り. 宇登呂よりだいぶ大きな街です.

パチンコ屋などもある. 海岸まで出てしまいさてライダーハウス「赤い屋根」を探しますが,見つからない. ガソリンスタンドで聞くと, ここより14kmほど南下した同じ羅臼町内ではあるが, 春日という所であるとのこと.

 

雨も降ってきたので 昼食を取ってから出直すことにしました. JACK★天野氏とNさんはご当地名物のトド刺しや, トド焼き定食を頼んでいます. 味は鯨に似てかなり癖がある. 店内が暖かいのでついうとうとしてしまいます. 雨も本格的に降っているようで 出足が鈍ります.

 

それでも 2時前に出発. 追い風気味で 先頭交代しながら雨の中を疾走します.(といっても25〜28km/hくらい) 私のサンヨースピードメータは水に弱く,そろそろいいかげんな値を示し始め ついには全く表示しなくなってしまうのでした.

(スピードメータに関してはサンヨーはだめなようですね)

 

沿道にはけっこう人家や商店もあり,食購に心配はないようです. 3時には羅臼峠直前の春日ライダーハウス「赤い屋根」に到着.

(国道の反対側には蟹屋が盛大に店開きしており,ここには数回立ち寄ることになります.

 

なるほど赤い屋根の瀟洒な農家が立っています.家人を呼び出してみると,この立派な家ではなく,隣のプレハブの平屋がそうだ,とのことでした.

自転車を停めて,薄暗い倉庫のような建屋に入ってみると ブーツがぬぎちらかしてあり, ざっと30人ほどのバイク乗りがたむろしていました.

サイクリストは我々の他,3人いたようです.

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