潮騒が聞こえる

目次:潮騒が聞こえる狂うなら秋がいいでんでん虫の飛んだ日アリス

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作品名:潮騒がきこえる

あらすじ:

高校受験の勉強をしている 祐美のところに
窓から見知らぬネコがやってくる。

受験勉強の気分転換に、祐美はネコの飼い主にあてて
手紙を書き、首輪に結びつける。

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放課後の教室で、ともだちと祐美との会話

「あなたはいいわね
 未来に希望があって」

「希望?
 希望ってのはね 希れな望みってかくの
 かなわないほうが多いってこと

 未来はいまだきたらず
 さみし

 どうしたんだよ
 男にでもふられたか」

「わかる?」

「なんだ あたりか....」

「なんだはないでしょ
 わたし死んじゃおうかと思ってるのよ」

「ページ切り取っちゃえよ
 そいつとのぺージ
 そいつと知り合わなかったって思えばいい....」

「そんなわけにはいかないわ
 悲しみは切り取れやしないわ

 キスまでしたんだもん....」

「キス!?」

「うらやまし?」

「す、すこし...

 こら!! なにいわせんだ!!

 キスがなんだってんだ
 ひふの一部と ひふの一部がふれたにすぎん!!」

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その晩、ネコがまたやってきた。
首輪に手紙の返事をつけて。

「返事かな?」

「一宿一飯ありがとう......
 きみの推察どおりにはいかないが
 この猫名前 クマンバチ

 受験って書いてあったけど
 するとぼくと同じ年かな 高3です.....

 クマンバチのお礼に 星砂同封
 いや同しばりします

 南の海の潮騒が聞こえたらしあわせです
 スーパーマン」

祐美はすぐに返事を書いた。

「スーパーマンさま  星砂ありがとう

 星の形をした砂が本当に存在したなんて 感動です

 わたしって スーパーマンについてるみたい.....

 小学3年生のときのボーイフレンドがスーパーマンでした
 その子が最初で最後のボーイフレンドだけど

 唐草のマントに Sの字のTシャツ
 ホジョ車のない自転車にのっていました

 この手紙がまた無事に着くことを祈って......
 
 スーパーマンさま
 あなたより3つ年下
 S中3年 つまんない子ちゃん」

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祐美はスーパーマンにもらった星砂を
学校のともだちにみせびらかしにもっていった。

「ほら見て ね 星の形してるでしょ」

「ああ 星砂ね
 オキナワのおみやげやで売ってるわ
 夜光虫の死骸だって聞いたわ......」

「死骸? あなたって とってもやーな子ね!!」

「あの...... あたし 聞いただけなの
 ほんと そうじゃないかもしれないし」

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「夜光虫が死んで砂になるのなら
 それはそれですてきなこと......」

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クマンバチが唐草のふろしきをまとって
スーパーマンのかっこうでやってきた。

「わあっ きゃっきゃっ
 クマンバチ スーパーマン!!」

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「星砂よろこんでくれてよかった
 潮騒は聞こえた?」

「2どめの手紙で図々しいかなとも思ったけど書きます
 最初で最後だなんていわないで

 もし よかったら ぼくを2番目のボーイフレンドに
 してくれないかな
 きみの手紙がとても楽しみだよ
 スーパーマン」

「むむ......
 これはある意味で 求愛の手紙ですぞ
 ね クマンバチ なんて返事したらいいかしら

 ね スーパーマンって どんな人?
 ハンサム? 背 高い?

 べつにそんなことはどうでもいいんだけど

 そうね 優しい人にはきまってるね」

「えー......
 もしもわたしでよかったら」

「なんか歌謡曲みたいね
 もしもわたしでよかったら
 あなたのおそばにいたいのよ......」

「もちろんOKです!
 P.S. どうしたら潮騒聞こえますか?

 夜明けのユーミンより」

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「潮騒どうしたら聞こえるかって
 なんにもしなくたって いつか聞こえるはずだよ

 ぼくにはちゃんと聞こえるんだから」

当惑する祐美。

「波の音ってザラザラっていったっけ?」

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「がんばってるんだね K高だって?
 あそこは競争率すごいんだろ 合格いのってるよ」

「きみの想像 身長だけはぴったりあたっているよ
 コンマ 5センチまであたってるなんて
 ほかはまあまあ
 パジャマがいちばん似合うってのもあたりだね」

「クマンバチ おふろにいれてくれたんだって?
 ありがとう でも つめまで切っちゃだめさ
 ねこのつめは 女の子のひじでっぽうと同じなんだから」

「まよってるんだ 半年前までは
 G大受けるつもりだったんだ......
 本当のスーパーマンになれる大学ってないかな......」

「きょうはきみの想像をぼくがしよう
 髪は短いね ボウシの上からの想像だけど
 セシールカットというのかな?
 わたがしみたいな髪
 身長は150センチ前後
 体重は?

 かばんに鈴とうさぎの人形つけてるだろう......
 はねるように歩く......」

その描写は祐美そのものだった。

「たねあかし......

 きょう きみを見たのさ
 髪の毛の長いともだちが
 ユーミンってよんでたろう
 それでぼくもふりかえったのさ

 ぼくの思った通りだったよ
 スーパーマン」

「どこで どこで?

 ずるいずるい あなただけわたしを見てなんて
 あわないほうがすてきだなんて うまいこといっちゃって

 名前さえ教えてくれないじゃんか
 TELだけでも教えて 
 それがだめだったら わたしのとこへかけて

 かけてくれなかったら受験勉強やめちゃう
 スーパーマンのせいにしちゃうから」

「わたしのスーパーマン
 あなたはいったいだれなんですか?......
 ほんとうにいるんですか

 いつになったら潮騒が聞こえるというのですか?」

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ある朝 祐美は 母に起こされる。

「祐美!! おきなさい!! 祐美ったら!!

「お願い もう5分
 お願いよママ〜 まだ7時半じゃないかぁ」

「じゃあ 電話切っちゃってもいいのね」

「電話!! だ だれから?」

「なんとかいってたけど
 おまえをおこしてるうちに忘れちゃったわよ」

電話にかけよる祐美

「もしもし...... お待たせしました......」

「ごめん......まだ眠ってたんだね
 ごめん 自分の時間にあわせちゃって......」

「い いいえ いつもですと
 ちゃんとおきてるんですけど」

「勉強しないなんて
 あんなこといっちゃだめだよ」

「はい......すいません......」

「がんばるんだぞ......じゃあ......」

「まって.....
 合格したらわたしが合格したら
 会ってくれますか?......」

「うん そうだね 合格したらね
 でも 会ったらがっかるするんじゃないかな」

「そんな!? そんなことないもん」

「はは...... 手紙の調子にもどったね
 じゃあ 合格いのってる」

「はい」

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俄然 活気づく祐美

「いってきまぁす
 ママ〜 玄関の水たまり 氷はってるよ
 パパにすべらないようにいったほうがいいよ」

割れた氷を空にかざして

「きれい......
 南極のクジラは毎日こんな空見てるのかな?」

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祐美は高校受験に合格する。

「クマンバチが来たら
 ”合格 約束はいつ?”ってお手紙わたすんだ
 彼 心配してるかな

 彼 どんな人だろ

 はじめてのデートは潮騒の聞こえるところがいいな

 砂の上をおもいっきり走ってやろう

 はじめて会う日 彼 唐草のマントつけてくるのかな」

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クマンバチはやってこない。

「きょうで3日にもなる......
 ちゃんと発表の日 おしえといたのに......

 ちゃんと約束したのに......
 合格したって ちっともうれしくない......」

「ひょっとして わたしのこと 
 からかっただけなのかもしれない

 スーパーマン  高校3年生だもの
 もうちゃんと恋人もいて
 それなら そうだっていえばいい」

祐美は星砂を窓の外に撒いてしまう。

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いっぽう、少年は病床にあった。

「クマンバチ...... こんと こんどさ
 こんど生まれるときは 丈夫でさ......
 本当のスーパーマンにい生まれたいな」

クマンバチは病室から追い出される。
真一(少年)は事切れる。

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風邪をひいて医院の前を歩いていた祐美は、
クマンバチを見つける。

「クマンバチ!? どうしてこんなとこに?

 どうしたの!! どうしてきてくれなかったの」

クマンバチはいつものように首に手紙を巻いていた。

「!! お手紙!!
 ああ 濡れちゃって ボロボロ......」

「合格おめでとう それから ごめんね
 約束が果たせなくなりました

 でも 夢の中のできごとは夢の中で終わるのが
 いちばんいいんだね......

 ありがとう...... たのしかったよ
 ユーミン きみだけのスーパーマンより」

「どういうこと?
 ね クマンバチ どういうことなの
 スーパーマンはここにいるの?」

「悲しみはきりとれない......
 このページは切り取れない......
 わたしのいちばん悲しいページ
 でも いつの日か......いつの日か

 またこのページをめくりかえしてみるかもしれない......

 そのときは......

 そのときは このページがいちばんしあわせだったページだと
 思えるかもしれない

 わたしのスーパーマン
 さよなら...... スーパーマン」

「? 潮騒?
 潮騒が...... 潮騒が...... 

 潮騒が聞こえる......」

病室は海原に面していた。


(月刊セブンティーン 1977/4)

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2000/5/6

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作品名:狂うなら秋がいい

 

あらすじ:

 

硝子(しょうこ)は心臓病のため、入退院を繰り返して
高校を退学してしまった少女。

洋行しているカメラマンのたまご、婚約者の史朗の
帰国を心待ちにしている。

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史朗と硝子は幼なじみ。
史朗が硝子の家の庭の柿の実をとっているところを
みとがめたのが出会いだった。

「もうすぐ あなた 史朗の大好きな
 わたしの柿の実が熟れます

 きっと約束どおりあなたは......」

「あなたとの再会は小学校
 こども心にうれしくて
 それから1年 授業以外はいつもいっしょ

 この道 よくおんぶしてもらって帰りました

 あなたは6年生 わたし 3年生
 同い年だったらよかったなっていつも思いました」

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「朝はこどもたち......
 夕方は鳥......

 もうてっぺんのほうの実は
 食べられてるのかもしれません

 この柿の実の熟れるころ 帰ってくるあなたの約束」

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史朗が洋行を決めた日の回想

「硝子 いつまで泣いてるんだ!
 チャンスなんだ おれの夢なんだ

 な? この柿実がまた熟れるころには帰ってくるさ

 硝子...... よしよし うそ泣きカラス」

「本当にこの実の熟れるころ?」

「ああ 好みをくわなきゃ おれの秋はこないさ」

「ねえ あなた 何回せっぷんしたか覚えていますか
 ......195回......

 わたしが6年生のとき 結婚の約束をしてから
 6年間 約10日に1回

 史朗が帰ってきたら このブランクをとりもどさなくちゃ......
 変な計算するなって史朗はおこるかな」

===============

「わたし あなたと逢ってずーとしあわせです。
 でも欲張りをひとついわせてもらうなら
 いちどだけ史朗と同じクラスで勉強したかった

 史朗はわたしの前の席にすわってもらいます
 史朗の大きな背中にかくれて いねむりするためではありません

 わたしの指先 冬になると氷みたいだってこと
 知ってるでしょう
 あたためてもらうんです

 でも教室で手を握ってもらうわけにはいかないし

(硝子は史朗のわきの下に手をつっこむ)

 でも史朗はくすぐったがり屋だから
 クラス中大騒ぎになるかも」

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母と父の会話

「史朗さんの先生から手紙がきてから
 2ヶ月にもなりますわ

 あの子は史朗さんのことばっかり

 これ以上だまって......」

「どうやって伝えるというのだ
 史朗くんが2ヶ月前に事故で死んだと伝えるのか!?

 あの子は心臓の病なんだ
 泣くだけではすまないんだ」

「でも......いつまでも かくしとおせるものじゃありませんわ
 月日がたてばたつほど......」

硝子が背後に立っていた

「硝子!!......」

「」










(週刊セブンティーン 1976年 44号)

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2000/5/6

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作品名:でんでん虫の飛んだ日

 

あらすじ:

 
kkkkkkkkkkkkkkkkk

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作品名:アリス

 

あらすじ:

 
kkkkkkkkkkkkkkkkk

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