撮影地:マウントオルガ(カタジュタ)ノーザンテリトリー ワイルドフラワー

● アウトバックに想う
日本で暮らす日常は便利で快適であるが、人間本来の生命の営みからは乖離した生活である。アウトバックに立つと、身も心も解き放たれ、ワシは「生」を実感する。荒野の乾いた空気を吸う時、真の呼吸をし、雨期のむせるような湿度の中で、真の汗をかく。質素ではあるが星空の下での食事は明日への活力を生み、過酷な気候に耐えた身体の眠りは深い。一般に旅は非日常的なものである。しかし、アウトバックの旅に関して言えば、日常の仮の姿を脱ぎ捨て、真の自分に戻る時間と言えないだろうか。荒野の風は、日々のこわばった仮面を一枚一枚剥がし、生来の笑顔に旅人を戻してくれる。慌ただしい日常では見落としてしまう、路傍の花を愛でる自分がここにはいる。

Nikon F5A with MF-28,
Ai AF VR Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D,
Fujichrome PROVIA 100F (RDP III)
Aperture-Priority Auto @ 5.6
Kata Tjuta Sunset View Point, Uluru/Kata Tjuta NP, Northern Territory
October, 2001

2003.02.27 掲載