● 世界遺産の森
デイントゥリー・リバーに斜光が差す。この地域は「クイーンズランドの湿潤熱帯地域」として世界遺産に登録されている。南はタウンズビルのすぐ北にあるパルーマ及びスペク山から、北はクックタウンのすぐ南にあるブラック山までの450kmにわたってこの世界遺産地域は広がっている。同じく世界遺産に登録されているグレート・バリア・リーフと平行した位置にあり、世界遺産が隣接する、世界で唯一の場所でもある。デイントゥリー周辺ではマングローブに覆われた川岸から一気に立ち上がる山塊を雨林が覆い、見るからに深い森を形成している。太古の昔から成長の続くこの森林を構成する植物には、世界的にも希少種のものが数多くあり、国際的に評価されているそうだ。しかし、そんな難しいことを言わなくとも、周囲を散策したり、ボートで川に出てみればすぐわかる、「豊かな場所だ」と。鬱蒼としたマングローブ林の足下では何百、何千万というカニがうごめき、宝石のように美しいユリシーズ・バタフライが華麗に舞う。ワニが泥地で体を温め、鳥類の豊富さはこの周囲をバードウォッチャーの天国としている。世界遺産に登録されているという表層的事実を超越して、きっと誰もがこの豊かさを後世に残したいと願うはずだ。まさに人類共通の財産、我らの森なのである。

Nikon F5A with MF-28,
Ai AF VR Nikkor ED 80-400mm F4.5-5.6D,
Fujichrome PROVIA 100F (RDP III)
Aperture-Priority Auto @ F8
Daintree River, Cape Tribulation NP, Queensland
September, 2001

2002.06.17掲載
2002.10.30 アクセス解析対応