地理データで比べる
日本とオーストラリア



大陸を旅すると、「この国立公園の面積は○○○平方キロで...」、「河の長さは○○○キロある」などいろいろな数値情報を耳にするが、いまひとつピンとこない。比較する対象、基準を自分が持ち合わせていないからだろうと思う。例えばナラボー平原の世界最長鉄道直線区間は東京〜新大阪間の距離より長いと言われれば、その凄さをよりリアルに感じることができる。
今回のコラムではオーストラリアの自然を中心に日本の数値と比較することで、より深く大陸のスケールや特徴を理解しようと、片っ端からデータを集めてみた。
オーストラリアを理解する上での参考になれば幸いである。


● 面積
日本:377,801 km2
豪州:7,741,220
km2 

(国連のDemographic Yearbook 1997年版による)

比べるまでもなく、圧倒的にオーストラリアが広大な国土を持つ。その差は22倍。 ロシア、カナダ、中国、アメリカ、ブラジルに次ぎ、世界6位、世界の陸地面積の5.7%を占める。
2位のカナダから6位のオーストラリアまではほぼ横並び、ロシアの大きさは群を抜く。その面積はオーストラリアの約2.2倍である。
一つの大陸を一つの国家が占有するのはオーストラリアが世界唯一。島大陸と言われるゆえんだろうか。
大陸本土で東西距離約4,000km、南北距離約3,100km。
オーストラリアの面積はアメリカ合衆国50州からアラスカ、ハワイを除いた本土48州より僅かに小さい。


面積上位10ヶ国

● 海岸線総延長
日本:34,390km(地球円周40,075kmの9割に相当)
豪州:36,000km(概算)

日本は22倍の国土面積を持つオーストラリアとほぼ同じ海岸線延長を持つ。
国土面積に比して海岸線延長が非常に長いと言える。国土が細長いことと、島嶼部が多いことが原因と考えられる。
逆に言うとオーストラリアは陸の奥行きが非常に深い。日本では数時間も運転すれば国中のどこからでも海に出ることができるが、アリス・スプリングスの恋人達が海を見るには、片道1,500kmのドライブを強いられる。やはりここは巨大な陸地なのである。


● 最高地点
日本:富士山 (3,776m)
豪州:クジアスコ山 Mt. Kosciuszko(2,229m)


オーストラリア大陸は世界で最も海抜の低い平坦な大陸。東海岸沿いにのびる大分水嶺山脈が唯一の山脈。
大陸の平均高度は340mで全大陸平均の875mよりはるかに低い。大陸別に平均高度が最も高いのは南極大陸の2200m。すなわち南極大陸は平均するとクジアスコ山と同じ高さにあることになる。
日本国内にあるクジアスコ山より標高の高い山は富士山から瑞牆山(2230m)まで、実に197座ある。この数字を見ると、国土の75%が山地と言われる日本と平坦なオーストラリアとのコントラストが極めて鮮やかになる。
参考までにオーストラリア最低地点は、エア湖 Lake Eyer(南オーストラリア)の-15mである。


● 河川 1(河川延長)
日本:
信濃川(367km)
利根川(322km)
石狩川(268km)

豪州:
ダーリング河 Darling (2,740km)
マレー河 Murray (2,530km)
マラムビジー河 Murrumbidgee (1,690km)


国土面積が違うので、川のスケールも全く違う。注目すべきは源流の位置である。信濃川は甲武信ケ岳(標高2,483m)、マレー河はクジアスコ山(2,229m)。約7倍の長さを持つマレー河の源流は信濃川よりも低い位 置にある。明治時代に日本の川をはじめて見た外国人が「これは川ではなく滝だ」と言ったそうだが、まさにそれを裏付ける数値である。
ダーリング河はマレー河にニューサウスウエールズ、ウエントワース Wentworthで合流する。ダーリング河の源流からマレー河との合流点を経由して、マレー河口までの総延長は3,370 kmになる。
日本の川に比べると圧倒的スケールのあるオーストラリアの河川であるが、世界規模で見ると、そんなに威張れない。世界一のナイル河は6,650km、アマゾン河は6,400kmである。降水量 の少ないオーストラリア大陸は大きな河川の発達しにくい環境にあるのかもしれない。


主要河川の全長比較

● 河川 2(流域面積)
日本:利根川 16,840 km2
豪州:マレー川 1,061,469 km2(利根川の63倍)


上記マレー河の流域面積にはダーリング、マラムビジーの両支流を含む。
ダーリング河は全長が本流のマレー河よりも長い支流である。一般にMurray-Darling Basinと呼ばれるマレー河流域はオーストラリア全土の14%に達し、日本の総面積の2.8倍に達するエリアに1,956,765の人が住む(全人口比10.94%)。
世界一乾燥した大陸の中で最も乾燥した州と言われる南オーストラリア州の水資源(飲料水、灌漑用水など)はマレー河への依存が非常に大きく、アデレードで使用される水の90%はマレー河から取水されている。
また、マレー河の水はパイプラインで流域外にも運ばれ、遠くスチュアート・ハイウエイ沿いのポート・オーガスタやウーメラにまで水を提供している。
したがってマレー河からの取水量は極めて多く、河の水が海に流れ出る流出率はわずか10.6%しかない(利根川は78.9%)。真夏の渇水期にマレー河口を訪れ、その小さいことに愕然とした、「これがあの大河の河口か?」と。河口から海水が逆流し、河は自力で海に達することができなくなっていた。流域に多くのダムや堰を建設されたマレー河はもはやその流れを人間に完全にコントロールされている。


● 湖沼
代表的オーストラリアの湖(面積はおよそ)
Lake Eyre 9,500 km2
Lake Torrens 5,900 km2
Lake Gairdner 4,300 km2
参考:琵琶湖 670 km2


上記オーストラリアの湖は我々が通常イメージする"湖"とはずいぶん趣を異にする。琵琶湖のように恒久的に水を湛えた湖ではないのだ。乾燥した砂漠の中にあって、通常は水の枯れた低地でしかない。湖底に堆積した塩の結晶で湖の広がりを確認できるのみだ。それぞれの湖には、これまた普段は枯れて水の無い川が流れ込んでおり、流域で降雨があると、湖へと水を運んでくる。ただし、湖を満たすほどの降雨があることは極めて稀であり、20世紀中にエア湖が満水になったのはわずか3回しかないと言われている。 ちなみ上記三大湖の面積はそれぞれ、青森県 9,606.33 km2、茨城県 6,095.58 km2、富山県 4,247.22 km2に匹敵する。


● 島嶼
面積1000Km2以上の島一覧

面積
島名
場所
最高地点
225,800.3 km2
本州 Honshu
Japan - Honshu
3776 m
78,719.4 km2
北海道 Hokkaido
Japan - Hokkaido
2290 m
65,021.8 km2
Tasmania
Australia - Tasmania
1617 m
37,437.2 km2
九州 Kyushu
Japan - Kyushu
1788 m
18,544.7 km2
四国 Shikoku
Japan - Shikoku
1981 m
5,764.7 km2
Melville
Australia - Northern Territory
121 m
4,373.7 km2
Kangaroo
Australia - South Australia
305 m
3,238.2 km2
択捉 Iturup
Occupied by Russian Federation - Kurilskye
1639 m
2,326.1 km2
Groote Eylandt
Australia - Northern Territory
219 m
1,691.6 km2
Bathurst
Australia - Northern Territory
106 m
1,436.5 km2
国後 Urup
Occupied by Russian Federation - Kurilskye
1430 m
1,330.1 km2
Flinders
Australia - Tasmania
777 m
1,199.5 km2
沖縄 Okinawa
Japan - Ryukyu Islands
498 m
1,121.0 km2
King
Australia - Tasmania
245 m

島国日本の面目躍如というところか、上位には本土4島がランクされている。本州は世界8位 の大きな島である。
ただし、オーストラリア大陸を世界最大の島とする考えもあるので、その場合はさすがに本州も手も足も出ない。
本土を除くオーストラリア最大の島は言うまでもなくタスマニア、北海道とほぼ同じサイズである。
野生動物で有名な南オーストラリアのカンガルー島はオーストラリア第3位にランクされ、北方領土の択捉島よりも大きい。
ロシアに占拠されている択捉、国後の両島を除くと、本土4島の次に来るのは沖縄本島で四国との面積の差は非常に大きい。その間にランクされるのはすべてオーストラリアの島である。
オーストラリアで上位にランクされた島はノーザンテリトリーとタスマニアがほとんどで、我々になじみの深いクイーンズランドの島々は名前を見せていない。


● 最高気温
(単位はすべて℃)
日本:40度以上の観測記録

気温
観測地
観測日
42.5
撫養(徳島)
1923.8.6
40.8
山形(山形)
1933.7.25
40.2
宇和島(愛媛)
1927.7.22
40.1
酒田(山形)
1978.8.3

豪州: 州別最高気温

気温
観測地
観測日
New South Wales
50.0
Wilcannia
1939.1.11
Victoria
49.4
Swan Hill
1906.1.18
Queensland
53.1
Cloncurry
1889.1.16
South Australia
50.7
Oodnadatta
1960.1.2
Western Australia
50.5
Mardie
1998.2.20
Tasmania
40.8
Bushy Park
1945.12.26
Northern Territory
48.3
Finke
1960.1.2
A.C.T Canberra
42.8
Canberra
1939.1.11

真夏にノーザン・テリトリーを旅すると40度を越えることは珍しくない。手持ちの温度計で実際に40度以上の気温を何度も経験した。アウトバックを旅する者として40度くらいには驚かないつもりであるが、さすがに50度となるとどんな環境なのか想像できない。
オーストラリアでの最高気温は53.1度になっているが、この記録は19世紀に観測されたもので精度には?を付けたくなる。しかしながら、その他の3州でも50度以上が観測されており、53.1度の真偽を論じることはあまり意味がなさそうである。
あの暑いノーザンテリトリーで50度以上が観測されていないのは意外に感じる。
ちなみ世界最高気温は1921.7にイラクのバスラで観測された58.8度。


● 最低気温
(単位はすべて℃)
日本:-30度以下の観測記録

気温
観測地
観測日
-41.5
美深(北海道)
1931.1.27
-41.0
旭川(北海道)
1902.1.25
-35.7
倶知安(北海道)
1945.1.27
-34.9
帯広(北海道)
1922.1.31
-30.7
千歳(北海道)
1966.1.19

豪州: 州別最高気温

気温
観測地
観測日
New South Wales
-23.0
Charlotte Pass
1994.6.18
Victoria
-12.8
Mount Hotham
1931.7.30
Queensland
-11.0
Stranthorpe
1895.7.4
South Australia
-08.2
Yongala
1976.7.20
Western Australia
-11.0
Booylgoo Springs
1969.7.12
Tasmania
-13.0
Shannon
1983.6.30
Northern Territory
-07.5
Alice Springs
1976.7.12
A.C.T Canberra
-14.6
Gidgenby
1971.7.11

最低気温に関しては、最高気温のように突拍子もない気温はオーストラリアで観測されていない。
こうしてみると、 北海道の寒さは半端じゃない。緯度的には同じあたりに位 置するタスマニアとの最低気温差は28.5度に達する。
ほぼ南回帰線と同緯度に位置するアリススプリングスでも氷点下が観測されている。砂漠の気候は過酷である。 最低気温の世界記録はヴォストーク(南極)で観測された-89.2、ここまでくると別 の星の話しのようだ。


● 人口
日本:126,925,843(2000 国勢調査確定数)
豪州:19,357,594 (2001.7推計)

日本の人口はオーストラリアの6.55倍。東京都と神奈川県を併せるとオーストラリアの人口を上回る。
オーストラリアの人口の内約23%は海外生まれであり、移民の国であることを裏付けている。
都市人口率はオーストラリアが85.4%(1986)、日本は78.1%(1995)。先進国での都市人口率は平均すると75%前後で、オーストラリアの比率は非常に高いと言える。
1995~1999年平均人口増加率はオーストラリア1.2%、日本は0.3%である。


● 人口密度
日本:340/ km2
豪州:2/ km2

22倍の国土に1/6.5の人口しかいないので、当然上記のような数字になる。オーストラリアで感じるあの開放感の一端はこの数値に表れていると言えよう。
日本国内にオーストラリア並みの人口密度の場所はあるのか?と探してみたノ.あった!
国内に人口密度2/ km2以下の市町村は二つある(全国の市町村の数は3,241)。
福島県 南会津郡 檜枝岐村 1.94/ km2
岐阜県 揖斐郡 藤橋村 1.55/ km2
ワシの故郷は人口17,000人で87.08/ km2、相当な田舎であるが、それでもオーストラリアにかなわない。
国内で最も人口密度の高いのは東京都中野区の19,854 / km2!


ここに掲載したデータは2002年6月時点で収集した統計データをもとに作成しています。

2002.06.27 掲載