リアルアウトバック--チェンバーズピラー

夕陽に染まるチェンバーズ・ピラー Chambers Pillar。アリススプリングスから南へ 165キロ、ハイウエイを外れ、四輪駆動車のみ通行可能な悪路を進んだ。途中のマリーベール牧場 Maryvale Stationを過ぎると給油や食料、水の補給が可能なサービスはなく、奥地の雰囲気は否応なしに高まる。恐らくここから50キロ四方には我々以外に誰もいない。人骨こそ転がっていないが、空を飛ぶ鳥も、地を駆ける獣もいない。風もなければ雲もない。熱と光と静寂が支配する世界。そして文明との間には大きな距離が横たわる。まだ陽の高かった到着直後、圧倒的な熱と光にワシは身の危険すら感じた、「こりゃやべえ！」、「来るのではなかったのでは？」。憧れの地で感じたのは、郷愁や浪漫ではなく、ある種の恐怖であった。大荒野のただ中、人気のないリアルアウト・バック、生まれて初めてワシは自然に恐懼した。