カーペンタリアへの道

オーストラリア北部、カカドゥから続くアーネムランドと東海岸から角のように突き出したヨーク岬半島に挟まれたカーペンタリア湾に面した地域はガルフ・サバンナ Gulf Savannahと呼ばれる。キンバリー（西オーストラリア）北部と並んで「最後のフロンティア」と言われる遠隔の地である。地図をご覧いただきたい、海岸に沿って大陸を一巡りする国道一号線がこの区間だけ途切れている。乾期はカラカラに乾き、雨期には道路が冠水して、街は数週間も孤立する。人間に制御されない自然がここにはある。訪れたのは乾期の最中。空気は干からび、息をするたびに乾燥した何か別の物を吸い込んでいる感覚がする。ケアンズから湾岸まで約800キロは全線舗装されていたが、ご覧の通り多くの区間で、一車線分の幅しかない。対向車が来たときには互いに半分ずつ道を譲る。路上の牛に出会う頻度も、車に轢かれたカンガルーの死体もスチュアート・ハイウエイなど比較にならない。空にブラック・クッカトゥーやウエッジテイルド・イーグルが舞い、道端に蟻塚の林立を見ると、否応なしに辺境の雰囲気は盛り上がる。目指すは歴史上、大陸縦断を初めて達成したバーク探検隊が達した大陸北岸。高鳴る気持を抑えつつ、陽炎の先へとアクセルを踏んだ。