撮影地:ポートヘッドランド(西オーストラリア)

● ポートヘッドランド残照

北へ向かうほとんどの旅人はポートヘッドランドで力を蓄えてブルームまでの残り600キロに挑む。鮮やかな夕景を楽しんで、夕食を摂ったら、明日に備えて早めに寝ようと言いたいところだが、南回帰線を越えた辺りから徐々に上がりはじめた夜の湿度がまったりと体に絡み付く。北上するほどその傾向は強まり、今夜それが頂点に達した。「蒸し風呂のような」という形容はこのためにあるのではないか。じっとしているだけで汗がにじむ。気力、体力を奪う猛烈な蒸し暑さである。しかもクリークの近くのキャンプ場は蚊の巣窟、キャンパー(キャンピングカー)のドアを閉め切らざるを得なかった。数カ所に設けられた網戸から流れ込む外気で気休めの涼をとる。この写真のような熱帯の甘美なイメージは吹き飛び、自然との根比べ、体力勝負の様相を呈してきた。さらに、ワシにとどめを刺すように雨までが降り始める。降り込みを防ぐため、網戸を閉めた寝床は壮絶な状況である。湿度100%、不快指数200%だ。今でも忘れない、オーストラリア最悪の夜...翌朝どろどろの状態のワシに大型サイクロン接近の報が届いた。結局その後2日足止めを食らうことになる。映画のコピーではないが、自然は人間など愛していないのである。


Nikon F4 with MF-23,
Ai AF Nikkor 20mm F2.8S
Fujichrome PROVIA ISO 100 (RDP II)
Aperture-Priority Auto @ F5.6
Derby, Western Australia
May, 2000

2001.02.23 掲載
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