卒業式の予行練習で素敵な歌声が聞こえて来る。大人に近付く第一歩をこの歌に送られて踏み出すのは
感動のひと塩である。可愛い女の子達の天使の様な歌声。
  しかし、その頃からずっと気掛かりに思っていたのは「歌詞の1つのフレーズがそれに相応しいか」と
言う事だ。あの天使の様に無垢な歌声の中にその事が解っている人間はいるのか?その疑問を解決するた
めに男は行動にでる。

「『オトナの階段の〜ぼるぅ〜』…か。いいフレーズだよなぁこの部分。だけど君達、このフレーズ、実際
の所解っちゃいないだろう」
「ムオウゥゥン…ムウゥ…」
  少女は男に猿轡をされている。ただの猿轡ではなく、口の部分には突起物が付いているプロ使用のものだ。
  さらわれて手足を縛り上げられている合唱部の少女は大きな口を開けさせられ、無理矢理突起物をくわえ
込まされる。その突起物が何を意味するか、今、この少女には皆目見当がつかないであろう。
「どうだい、お嬢さん。くわえ心地は」
  彼女は首を振って嫌がる素振りをする。
「後ろのお嬢さんはもう2時間も前からしっかりとくわえているんだよ、だいぶ慣れてきた頃合いじゃないの
かな」
  後の柱にもう1人、少女が手足を厳しく縛り上げられ括り付けられている。もちろん先ほどの言葉通 り、
あの猿轡をされているのだ。 少女は男の嘲りにも似た表情に眉をひそめ、ウゥッと呻き睨みつける。
「いい目だね。だけどまだそんな目をしている様じゃぁこの猿轡の意味…解ってないなぁ」
(そんなもの…解りたくもない!!どうでもいいからこの縄解いてよ!いい加減にして!!)

  猿轡をくわえこませた男は少女達にゆっくりと説明を始める。オトナへの階段の彼女達にとっては残酷な説
明になるかもしれない。
「いいかい、今君たちがしている…されてしまった猿轡。あのフレーズを理解する第一歩なんだ。君たちが大
きな口を開け、希望に満ち満ちて送り出すあの歌。オトナの階段なんてのは見た目希望に溢れていてもそんな甘っ
ちょろいもんじゃない」

  彼女達は男を睨みつけ、怯え、そして苦悶しながら言葉を聞くしか無い。聞きたくなくても執拗に耳元で滔々
と語り続ける。
「その猿轡の君たちが加えている突起物の正体、何だと思う?」
  首を振り、男の質問を遮ろうと必死になる少女達。縛られて耳を塞ぐ事も出来ず、猿轡で抗議の声も上げる
事は出来ない。さらに執拗に偏執的に言葉でなぶるかの様な男の話は続く。
「そんな嫌がって…ホントは解ってるんだろ、その突起物が「アレ」を示している事に。そう、男が持っている
あれさ」
  少女達の猿轡に押し殺された呻きがいっそう大きくなる。理不尽な最終宣告をされてしまった被告人のごとき
悔しさが少女達の心に押し寄せる、もう頭の中で自分たちがくわえさせられているものは「アレ」なのである。
たとえ「アレ」本物ではなく、模したものであってもその恥ずかしさ、屈辱は例え様が無いくらいに厳しいもの
だ。
「オトナの階段の意味が少し解ってきただろう?溢れる希望と同じくらい大きな口を開けて今君たちは 大人の意
味を理解し、階段を上って行ってるんだ。天使のような君たちの歌声にやっと現実がのってきた。まだしばらく
は二人ともこうしててもらうよ。さぁ、たっぷり呻いて本当の意味を理解してくれ!」
  少女達は絶望に呻き、縄で縛られ手足の自由を奪われた身体を激しく悶えさせる。まだしばらくこの残酷な現
実は続くのだ。それがオトナの階段である、ただしそれはこの男の論理であるのだが。
「次からはきっと本当の意味でこの歌が唱える様になるよ。それを僕は楽しみにしているからね。あ、今日ここ
で唱ってもらおうか!それじゃぁさらにじっくりと君たちがくわえている突起物のホントの名前を頭に刷り込ま
せないとね」

 男の執拗な行動は続く、少女達はさらに階段を上り詰める事になるのであった。

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