「秘伝の味」 酒ライター佐久某のレポートから。

 少女が蒸し暑い酒蔵の中で吊るされている。この酒蔵で不定期醸造で造られる幻の酒「秘伝 美少女縄蔵(なわくら)」の製造現場。
 完成の一歩手前、最後のひと味は1人の少女の汗。

 彼女はこの酒蔵の一族に連なる者。一族伝統の秘伝として伝えられる独自製法では、ある一定の要件(この要件は全く話してもらえず)を満たした一族の女子にしか最後のひと味になる事が出来ない事となっている。
  そのための不定期醸造であり、このたび、その要件を満たした女子が一族に存在した事で今回の醸造となった訳だ。

 蒸し暑く蒸された酒蔵。縛り上げられ、高い天井から吊るされた少女から滴る汗が「秘伝 美少女縄蔵」をの素晴らしい味を決める。
 彼女の感じる恐怖、怯え、焦り等が一体となった汗は、酒に緊張感を生み、きりりと1本引き締まった中に少女特有のまろやかさを生み出す。
 また、音楽が酒の味を変えるといった事例がある様に、この酒ではその音響効果 は少女の悲鳴・苦悶の声や縄ズレの音がそれに当る。
 端から見れば陰惨な拷問現場の様にも見える、彼女はこの秘技の終了後になって事実を伝えられるため、現在の心境はまさに拷問でしかないであろう。
 しかし、事前にその事を知ってしまえば味は空虚な物へと変わり、2級品の物しか出来上がらない。娘を思うあまり、秘伝を事前に教えたためにそんな物が出来上がった事があるということが過去にあったようだ(その娘と秘伝を教えた者がどうなったかは記録には残っていない)。 前述の「恐怖・怯え・焦り」「緊張感」が重要なのである。
 私も初めて味わう。実に出来上がりが愉しみである。  

 

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