ちょみっときつい文章ですが、あくまでもフィクションです。 その事を前置きしておきます。

  どこにでも「自分は善良な人間だ」と思っている人間は数多い。 ナショナリズムと地域性、その上にそれが絡むともうどうしようもない結果 が待っている。

  北の大地、最近の外国マフィアの行いには目覆おうものがあり、最近は自警団も結成された。
 そのような状況、もちろん外国人であるたーにゃに向けられる目は厳しい。自警団結成のニュースが街を駆け巡るのを境にして、今までとは違う目線が繊細な彼女の心に突き刺さる日々が続いていた。
 そんなある日、地域の安全を守る善良なる一市民の通報、いや、密告により彼女は自警団に拘束されてしまう。もちろん彼女にとっては言われなき罪でだ。
 
 たーにゃは地下室に連行された。そこで後ろ手に縛り上げられ、腕を上方に引き絞られる。
 「さぁ、いい加減に白状するんだ!ネタはあがっているんだぞ」
  「わ…わたし何も知りませ…ッンアッ!」
  言い終わる前に尋問者である警察上がりの自警団の団長は彼女の足を角材で打つ。
  まるで拷問だ。この男、市民に評判の良い善良で優しい警官だったともっぱらの評判。 退職後も「地域の安全を守る」というお題目の元、自分の正義を貫き通 す気概で一杯だった。仕事一筋で妻子にも逃げられた。 彼のよって立つ所はその事のみ一点、そうでもしないと退職後の 自分の立つ場所は皆無だ。
  「お前がマフィアの男と繋がっている事は調べが付いているんだ、素直に認めれば お前の身の安全の保証はしてやる、どうだ」
 この時点で彼女の身の安全などないに等しい。 人間の心理とは恐ろしいものである。自分達が正義でその正義、治安が危険に晒されている時は 全て許されると思っているかのようだ、いや、思っているのである。

 「違います、わたしマフィアなんか知りません…。本当です」
 「やめて下さい、本当に何も知らない…クゥアッッ…」
  縛られて天井近くに引き絞られた腕を、さらに上に男は引き絞っていく。
 「そうやって口答えをすればするほど、お前の立場は悪くなっていくんだ。いい加減 認めた方が利口じゃないのか、素直になれよ」
 「そうか、あくまでシラをきるつもりか、ならしょうがない。時間はたっぷりあるんだ、思う存分 可愛がってやるからそう思え」
  彼のもう1つの退職原因、犯罪者やその協力者に対する強引な捜査と暴力のはけ口が彼女に対して 屈折したカタチで暴発する。まるで暴力を楽しんでいるかのようだ。しかしその暴力も彼にしてみれば 正義感の発露なのだ、「善良な市民を守る」という目的のため…。
 そんな光景を自警団の副団長が異様に興奮した目つきで見つめている。
  (ヒヒヒ、そうだ、もっと…フフフ。せっかくオレが声色まで使って通 報してやったんだ。 たっぷりと可愛がってやってくれ)
  (こんなご時世だ、ククク…なかば合法的に○シア娘を好きな様に出来るんだ。それも 可愛いのをかたっぱしからしょっぴいてこられるなんてな、こんないい事はないぜ)
  「クゥッ…や、やめて…下…さい、知らない…わたし…本…当…です」
  善良で正義感の溢れる男と悪辣で倫理観の欠如した男の思いが粘り渦巻く中、 たーにゃのガラスの様な繊細な心が徐々に押し潰されていく。

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