心臓病に対する学校生活管理指導表の活用 心臓病の生徒の管理


心臓病管理指導表が学校生活管理指導表と改められ、それに伴い、不整脈の管理基準を一部改訂する必要が出てきました。この基準は、一応の目安であり、個々の症例によって基準を変更できます。なお管理区分の(可)・(禁)は選手を目指した運動部(クラブ)活動の可否を意味します。

不整脈の種類 条 件 管理区分 観察期間
洞性不整脈
管理不要
接合部調律
接合部補充収縮

管理不要
上室期外収縮 心房性、結節性 管理不要
多形性または二連発 E(可) 6ヶ月〜1年毎
上室頻拍 1)比較的短時間で消失
2)自覚症状がないか、あるいはきわめて軽い
3)心不全がない
4)運動負荷によって誘発されない
以上の条件を満たす
E(可) 6ヶ月〜1年毎
運動負荷により誘発される
ただし頻拍時に心拍数が少なく、短時間で消失する

E(禁)
1〜3ヶ月毎
3〜6ヶ月毎
心不全を認めるが、治療が奏功する DまたはE(禁) 必要に応じて
治療は奏功しないが心不全や自覚症状がない DまたはE(禁) 1〜6ヶ月毎
治療は奏功せず、心不全がある A、BまたはC 必要に応じて
心房粗動・細動 運動負荷によっても心室拍数の増加が少ない DまたはE(禁) 必要に応じて
運動負荷により心室拍数が著しく増加する CまたはD 必要に応じて
心室期外収縮
(運動負荷心電図を記録し、必要に応じてホルター心電図も記録する)
連発がなく、単形性で、運動負荷により消失、減少または不変 E(可)
ただし長期観察例では管理不要
1〜3年毎
小学校低学年では連発がなく、単形性で1〜3分の安静時心電図においてその発生が少ない E(可)
または管理不要
1〜3年毎
運動負荷により著しい増加、多形性または二連発が出現する DまたはE(禁) 1〜6ヶ月毎
安静時心電図で多形性または二連発がある
ただし運動負荷により心室不整脈が消失する
DまたはE(禁)
E(禁)またはE(可)
必要に応じて
6ヶ月〜1年毎
心室副収縮
心室期外収縮に準ずる
心室頻拍
(運動負荷心電図、ホルター心電図、心エコー図を記録し、慎重に決定する)
失神発作、心不全、自覚症状などがなく、運動負荷により消失または減少し、非持続性である
ただし連発数が少なく、心室拍数が少なく、運動負荷により消失する
DまたはE(禁)

E(禁)またはE(可)

1〜6ヶ月毎

6ヶ月〜1年半毎
失神発作、心不全の既往はないが、運動負荷によって誘発される、または減少しない B、CまたはD 必要に応じて
失神発作、心不全の既往はあるが、治療が奏功し、運動負荷によって誘発されない C、DまたはE(禁) 必要に応じて
失神発作または心不全を伴い、治療が充分奏功しない AまたはB 必要に応じて
促進性固有心室調律 運動負荷により正常洞調律となる E(可) 1年毎
運動負荷により正常洞調律にならない 心室頻拍に準ずる
QT延長 失神発作、家族歴等がなく、心電図所見のみのもの E(可) 1年毎
運動中の失神発作の既往がある
ただし薬物でコントロールされている
BまたはC
必要に応じて
必要に応じて
失神発作の既往はあるが、運動とは無関係に出現する C、DまたはE(禁) 必要に応じて
WPW症候群 上室頻拍の既往なし E(可) 1〜3年毎
上室頻拍の既往あり 上室頻拍に準ずる
完全右脚ブロック 他の合併所見がないもの
ただし、左軸偏位やPR時間延長が合併しているもの
 
管理不要
E(可)または管理不要
1〜3年毎
完全左脚ブロック
専門医の判断による 必要に応じて
1度房室ブロック PR時間0.24秒以下(小学生)、または0.28秒以下(中学・高校生) 管理不要
運動負荷によりPR時間が正常化する 管理不要
運動負荷によりPR時間が正常化しない E(可) 1年毎
運動負荷により2度以上の房室ブロックが出現する 該当項目に準ずる
2度房室ブロック
(運動負荷で正常房室伝導が見られない場合はホルター心電図を記録する)
運動負荷によりWenckebach型が正常房室伝導になる 管理不要
運動負荷により1度房室ブロックになる E(可) 1〜3年毎
運動負荷でも2度房室ブロックのまま E(禁)
またはE(可)
6ヶ月〜1年毎
運動負荷により高度または完全房室ブロックになる 高度房室ブロックに準ずる
Mobitz2型 高度房室ブロックに準ずる
高度および完全房室ブロック
(運動負荷心電図やホルター心電図を記録し、必要に応じて電気生理学的検査を行う)
運動負荷時に心室拍数が2倍以上で症状がない DまたはE(禁) 3〜6ヶ月毎
運動負荷時に心室拍数が2倍以上に増加しない CまたはD 3〜6ヶ月毎
運動負荷時に心室期外収縮や心室頻拍が頻発する 必要に応じて
Adams-Stokes発作や心不全を伴う A、BまたはC 必要に応じて
洞不全症候群
(運動負荷心電図やホルター心電図を記録し、必要に応じて電気生理学的検査を行う)
徐脈傾向が軽度で、運動負荷により心室拍数の増加が良好 DまたはE(禁) 3〜6ヶ月毎
運動負荷でも心室拍数の増加が悪い CまたはD 必要に応じて
Adams-Stokes発作や心不全を伴う A、BまたはC 必要に応じて

注(1) 運動負荷は充分な監視のもとに心拍数150/分以上になることを目標とします。ただし、高度または完全房室ブロック、洞不全症候群ではこの心拍数を目標としません。

注(2) 運動部(クラブ)の参加に関しては、激しい練習や試合を伴うものについては上記( )内としますが、運動量や参加の方法によっては「C」「D」でも参加可能なものもあります。

注(3) 徐脈性不整脈では等尺運動や潜水運動に特に注意します。

注(4) 治療が必要な不整脈はまず治療が優先されるので心室頻拍、QT延長症候群、高度房室ブロック、洞不全症候群などの不整脈は専門医による管理が望まれます。