出典: 労働省安全衛生部労働衛生課編 「じん肺診査ハンドブック」1978年

じん肺法では,エックス線写真像の区分は次のように定められている。

型 エックス線写真の像
第1型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり,かつ,大陰影がないと認められるもの
第2型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり,かつ,大陰影がないと認められるもの
第3型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり,かつ,大陰影がないと認められるもの
第4型 大陰影があると認められるもの

 じん肺管理区分の決定に当たっては,上記に掲げた第1型から第4型までの区分を行う必要があるが,それ以上の詳
細な分類は必要ではない。しかし,エックス線写真像から得られる情報については,病変の進展の判断,種々の比較
検討などのために必要な限度において分類する必要がある。


イ. 小陰影の分類
 (イ) 粒状影
 粒状影のタイプは,主要陰影の径に従って分類する。
   p  = 直径 1.5 mm までのもの
   q(m) = 直径 1.5 mm を超えて 3 mm までのもの
   r(n) = 直径 3 mm を超えて 10 mm までのもの
   (上記中カッコ内は旧来用いられていたタイプについての記号である。)

 型の区分は,粒状影の密度に応じて次のように区分する。
   第1型----両肺野に粒状影があるが少数のもの
   第2型----両肺野に粒状影が多数あるもの
   第3型----両肺野に粒状影が極めて多数あるもの

 型の区分に当たっては,標準エックス線フィルムによることとする。標準エックス線フィルムは第1型、第2型及び第3
型の中央のものを示しているほか,じん肺の所見がないと判断するフィルムの上限のもの,第1型の下限のものを示し
ている。
 型の区分を型の区分を行う際に明確にある型のものと判断できない場合があるため,読影の際には12階尺度法を
用いることとする。
 
12階尺度法の概要は次のとおりである。

  0/- … 正常構造が特によくみえるもの(普通若い人にみられる。このような所見はあまり多くない。)
  0/0 … じん肺の陰影が認められないもの
  0/1 … じん肺の陰影は認められるが、第1型と判定する至らないもの
  1/0 … 第1型と判定するが,標準エックス線フィルムの"第1型(1/1)"に至っているとは認められないもの
  1/1 … 標準エックス線フィルムの"第1型(1/1)"におおむね一致すると判定されるもの
  1/2 … 第1型と判定するが,標準エックス線フィルムの"第1型(1/1)"よりは数が多いと認められるもの
  2/1 … 第2型と判定するが,標準エックス線フィルムの"第2型(2/2)"よりは数が少ないと認められるもの
  2/2 … 標準エックス線フィルムの"第2型(2/2)"におおむね一致すると判定されるもの
  2/3 … 第2型と判定するが,標準エックス線フィルムの"第2型(2/2)"よりは数が多いと認められるもの
  3/2 … 第3型と判定するが,標準エックス線フィルムの"第3型(3/3)"よりは数が少ないと認められるもの
  3/3 … 標準エックス線フィルムの"第3型(3/3)"におおむね一致すると判定されるもの
  3/+ … 第3型と判定するが,標準エックス線フィルムの"第3型(3/3)"よりは数が多いと認められるもの

 型の区分に当たっては,じん肺の種類に応じ対応する標準エックス線フィルムを用い,粒状影の密度に応じて区分す
る。
 じん肺健康診断結果証明書には,従来の読影結果との推移を点検すること,疫学的情報を得ること等の目的から,こ
の12階尺度により区分し記載するとともに粒状影のタイプについても記載する。

 (ロ) 不整形陰影
 不整形陰影は,主に線状,細網状,線維状,網目状,蜂か状,斑状とよばれている像をいう。1971年ILO U/C分類では,
不整形陰影のタイプを s, t, u と分類しているが,じん肺法ではこの分類は採用しない。
 型の区分は,不整形陰影の密度に応じて次のように区分する。
   第1型----両肺野に不整形陰影があるが少数のもの
   第2型----両肺野に不整形陰影が多数あるもの
   第3型----両肺野に不整形陰影が極めて多数あるもの
 型の区分に当たっては標準エックス線フィルムによることとし,じん肺の種類に応じて対応する標準エックス線フィル
ムを用い,不整形陰影の密度に応じて,粒状影と同様に12階尺度法を用いて記載する。
 じん肺健康診断結果証明書には,粒状影の場合と同様に12階尺度法を用いて記載する。

 (ハ) 小陰影の型の区分
 粒状影及び不整形陰影の各々については,(イ)及び(ロ)で述べたごとく区分するが,(2)で述べたように,じん肺のエッ
クス線写真には,しばしば両方の陰影が同時に明らかに存在することがある。このような場合の型の区分について,
1971年ILO U/C分類では,「複合密度」の概念を示している。しかし,具体的な区分の方法を示すことは困難であると
されている。従って,小陰影を呈するエックス線写真像について,じん肺法に定める第1型から第3型までのエックス線
写真像の区分を行う際には,じん肺の種類に対応する標準エックス線フィルムを用いて区分を行う。
 じん肺健康診断結果証明書への記載に当たっては,粒状影及び不整形陰影の区分のほかに,小陰影の型の区分を
12階尺度法で記載する。


ロ. 大陰影の分類
 1つの陰影の長径が 1 cm を超えるものが大陰影であり,その径に従って次のように分類する。

  A---- 陰影が1つの場合には,その最大径が 1cmを超え 5cmまでのもの。数個の場合には,個々の影が 1cm以
      上で,その最大径の和が 5cmを超えないもの
  B---- 陰影が1つ又はそれ以上で,Aを超えており,その面積の和が 1側肺野の 1/3(右上肺野相当域)を超えない
      もの
  C---- 陰影が1つ又はそれ以上で,その面積の和が 1側肺野の 1/3(右上肺野相当域)を超えるもの

 じん肺管理区分に係る大陰影の区分は,上記Cに該当するか否かの区分で足りるが,疫学的情報を得る等の目的
から A, B, C の区分を行う。


ハ. その他の像
 ロで述べたじん肺エックス線写真像のほかに,エックス線フィルムに現れたじん肺所見以外の所見についても,合併
症関する情報,疫学的情報,保健指導のための資料の収集等の目的から所見の有無について読影の際に留意する
必要がある。留意すべき所見は次のとおりである。

  @ 胸膜肥厚等の胸膜変化(胸膜石灰化像を除く) (pl)
  A 胸膜石灰化像 (plc)
  B 心臓の大きさ,形状の異常 (co)
  C ブラ(のう胞) (bu)
  D 空洞 (cv)
  E 著明な肺気腫 (em)
  F 肺門又は縦隔リンパ節の卵殻状石灰沈着 (es)
  G 肺又は胸膜のがん (ca)
  H 気胸 (px)
  I 肺結核 (tb)