Table I. - Radiation Dose Comparison

 

Diagnostic Procedure

Typical Effective Dose (mSv)1

Number of Chest
X rays (PA film) for Equivalent Effective Dose2

Time Period for Equivalent Effective Dose from Natural Background Radiation3

Chest x ray (PA film)

0.02

1

2.4 days

Skull x ray

0.1

5

12 days

Lumbar spine

1.5

75

182 days

I.V. urogram

3

150

1.0 year

Upper G.I. exam

6

300

2.0 years

Barium enema

8

400

2.7 years

CT head

2

100

243 days

CT abdomen

8

400

2.7 years

1.Average effective dose in millisieverts (mSv) as compiled by Fred A. Mettler, Jr., et al., "Effective Doses in Radiology and Diagnostic Nuclear Medicine:  A Catalog," Radiology Vol. 248, No. 1, pp. 254-263, July 2008.

2. Based on the assumption of an average "effective dose" from chest x ray (PA film) of 0.02 mSv.

3. Based on the assumption of an average "effective dose" from natural background radiation of 3 mSv per year in the United States

 

急性心筋梗塞入院で受ける被ばく量は胸部X線750回分

腹部・骨盤CTの利用は見直しを

 1回の急性心筋梗塞(AMI)による入院で,患者は胸部X線(CXR)750回に相当する約15mSvの放射線被ばくを受けることが米デューク大学メディカルセンターのPrashant Kaul氏らの研究で分かった(Circulation 2010;122:2160-2169)。入院中の合併症など,被ばく量を高める予測因子も明らかにされている。同氏らは,使用の妥当性が明らかではない腹部・骨盤CTの利用の見直しや総被ばく量に注意するとともに,放射線の潜在的リスクに留意するよう呼びかけている。




































処置後の出血は,被ばく量の独立した予測因子

 2006~09年,University HealthSystem Consortium(UHC)のデータベースを用い,米国内の49の病院に急性心筋梗塞(AMI)で入院した全患者6万4,071人(年齢中央値64.9歳,女性37%)について,電離放射線に関連する入院中のすべての処置〔CXR,CT,放射性核種イメージング,心臓カテーテル検査,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を含む〕を調べた。入院期間の中央値は4日間で,55%が高血圧,48%が脂質異常症,35%が糖尿病を罹患していた。平均院内死亡率は5.78%だった。

 1入院当たり患者1人に実施された処置は4.3で,82.7%はCXRを,52.8%はPCIを,23.8%は心臓カテーテルを,15.3%は腹部・骨盤CTを受けていた。1入院当たりの累積有効線量の中央値は15.02mSvで,50mSv以上も2%を占めた。なお,15mSvは年間自然被ばく量の5倍,放射線従事者の年間最大許容被ばく線量の3分の1,CXR750回に相当する数値である。

 次に,研究グループは,被ばく量を高める特定の予測因子がないかどうかを調べた。すると,処置後の合併症は被ばく量を有意に高めており,オッズ比(OR)は,装置やインプラントによる機械的な合併症を含む処置後の合併症で2.86(95%CI 2.61~3.13),処置後の出血および血腫で2.01(同1.85~2.18),処置後の消化管出血あるいは潰瘍で3.21(同2.64~3.90),処置後の肺炎で1.89(同1.68~2.13)だった。

 被ばく量は地理的要因と強く関連し,ニューイングランド地方の病院では,中等度から高度の放射線被ばくのORが0.78(同0.74~0.81)と少なかった。

 50mSV以上の高度の放射線被ばく者の院内死亡率は17.83%で,全患者の3倍に上った。

 さらに,疾患重症度(SOI)スコア別に被ばく量を調べた結果,重症度スコアが高いと,平均被ばく量と院内死亡率が増加する傾向があった。

 血行再建術の実施者は,内科療法のみの非実施者と比べ,被ばく量は多いが,院内死亡率は低かった。IABPでは,気管内挿管・人工呼吸を必要とした患者は,必要としなかった患者より被ばく量が多く,院内死亡率は2倍に上昇した。

1回の被ばく量より総被ばく量に注意を

 PCIを除けば,累積被ばく量の多くがCT,中でも腹部・骨盤CTによるもので,心臓カテーテル検査の被ばく量(12%)は,腹部・骨盤CT(23%)より少なかった。腹部・骨盤CTの実施者は,非実施者と比べ処置後の出血が多く,Kaul氏は,「腹部・骨盤CTの有無が,心臓カテーテル検査後の出血の潜在マーカーである可能性がある」と指摘している。

 近年のガイドラインは,心臓カテーテル検査やPCIの有用性が放射線被ばくリスクを常に上回ることを示唆している。しかし,平均累積放射線被ばく量の3分の1を占めた血管造影以外の放射線検査の妥当性は確認されていない。

 同氏らは,今後, AMI入院における有効放射線被ばく量の減量を目指すべきだとするとともに,「1回の有効放射線被ばくを考慮するより,1回のAMIにおける総被ばく量を記録すべきである」と締めくくっている。

















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