皐月、新緑、鯉幟、卯の花、杜鵑、田植、早乙女、蝌蚪。季語を並べてみました。良い季節ですね。読み難い? まあ酒の肴です。座興ですからお許しを。ええとサツキ、コイノボリ、ホトトギスなんか近頃は流行りませんな。サオトメは難読というよりその存在自体が怪しくなっています。どこへ行ったんでしょう。最後は、オタマジャクシのことてす。全部読めた方には美薫から商品が・・・出ませんか。

 それにしても忙がしいですね。光陰は矢の如し、あっという間に歳だけは取る。質の悪い仕事が山ほど押し寄せて退治しても殺しても片付かない。何でこんなに働かねばならないのでありましょうか。程々に働いたらあとはスポーツに、教養に、もちろんお酒にと楽しく過ごす、このあたりまえのことがさっぱり実現しないのは、何かが根本的に間違っているのだと愚考いたしますな。

ほろ酔いながらこの不思議を科学的に解明して肴にしようという、題してナマケモノの研究と参りましょう。

熱帯雨林はパラダイスである
動物の天国、もちろんあります。熱帯雨林へ行ってごらんなさい。極楽鳥という鳥がいます。ここは極楽なのです。パラダイスナッツという実がなっています。直径30cmもの実で、殻は壺型、熟すと落下し発酵すると蓋がポンと飛び種子が辺りに飛散します。サルがやってきて穴へ手を突っこみ種子を握って取り出そうとしまして、手が抜けないものだから壷をブラ下げたまま、うろうろしているそうです。

 まだあります。豊かな土地だから鳥も獣も子育てに苦労しないのです。オスはメスに遺伝子を伝達したら速やかに離婚し、独身生活に戻ります。母親だけあれは子供は育つのです。夫婦で懸命努力してやっと一人二人育てる、それは環境が厳しいからなのです。熱帯雨林に移住しましょう。

 働かないで生きる方法、多くの人が夢見ました。大金の利息で寝て暮らそうと決心しましても、その原資を蓄積するためには激烈に働かねばなりませず、大低は途中で過労死する。おいたわしやご家老・・・という暇もあらばこそ、若干の遺産を巡って遺族親族の争奪戦はプロレスよりも華々しい。この悲惨を招かぬよう心すべきこそ。たとえ身は貧しくても心豊かに生きたい。とすれば消費を抑制して簡素に生活するのが賢明です。簡素の極地は橋の下や地下道で段ボール箱に棲み、生活資材は廃棄物の中から採取する、というご存じのパターンとなります。この生き方は多くの人々の哲学的思考の対象にはなり得ましたしたが、なぜか普及いたしません。

天使の如く聖者のごとく
 ナマケモノという動物があります。二種類いるそうですが、そのうちのミツユビナマケモノという動物の生き方が私をいたく感動させました。ご紹介申しましょう。

 パナマ国、パナマ地峡、ここで南北アメリカ大陸がちぎれかかっています。ここに大西洋に開口したガドゥン湖という巨大な湖があります。(この西側を切り開いてパナマ運河がある)さてそのガトゥン湖の中ににバロ・コロラド島という自然保護区があり、もらろん熱帯雨林ですが、そこにナマケモノが沢山に棲息しているのてす。体重は4Kgほど、手足におのおの三本の長い湾曲した爪がついていて、木の枝や蔓にブラ下がっています。

 なぜナマケモノかというと、一日のうち20時間ほどは寝ていまして滅多に動かない。動いても動作は極めて緩慢(筋肉が乏しいのです)。動作がのろく不器用だから芽とか果物とかの旨いものにはありつけず、成長した堅い木の葉を食べます。葉が貧弱と来ているからろくに噛み砕けずそのまま胃に入ります。消化力がほとんどないため、胃の中のバクテリアに分解して貰います。

 更に無精なことには、体温が低く、その調節機能も乏しいので夜間は体温が下がって消化も停滞します。だから雨天が続いたりすると腹一杯食べているのに飢え死にする個体も発生する、と申します。

 体には長い毛が生えていて、雨降りには蓑の役を果たしますが毛の表面には単細胞の藻類が繁殖して緑色を呈します。他にも各種の甲虫が毛の中に住んでいてその数およそ数百匹。蛾が百余匹。ダニの類にいたってはその数を知らず・・・。こういう不精者がボロ雑巾のように木にブラ下がっているのです。働かず、争わず、浪費せず、聖者のようなこの動物。絵を見てください、天使のように見えなかったらそれは筆者のスケッチが下手なせいです。

余談:この絵は図鑑からトレースしたそうです。

超消極も生存への道
 ジャングルにも捕食者がいます。タカ、ヘビ、ヒョウなと。聖者ナマナモノはこれら捕食者からどのようにして逃がれ、生存を保っているのでありましょうか。
 まず第一は動かぬことです。捕食者の目は動くものに敏感ですから、ゴミの塊となってブラ下っているナマケモノを見逃してしまうのであります。体温が低い。闇の中で赤外線探知器で動物の体温を検知しようにも、ナマケモノ先生はやはりゴミの塊としか見えませんでしょう。だから二シキヘビでも見過してしまいます。

 少なく働き、所得も少なく消費を切りつめて平和に生きる。人類が将来生き延びるために最初に学ばねばならない教課は、すなわちこれナマケモノであると論じて筆をおき、杯に持ち代えるといたしましょう。