秋になると、あちこちの庭先に大きなザクロが実っているのをよく目にします。
赤く紅葉した葉とともに、大きな丸い果実も赤く色付き、人目を引くに十分です。
さらに、熟し切った果実はぱっくりと不規則な形に割れて、中には赤く色付いた種子がびっしりと詰まっています。
これを食べますと、種子のまわりについている半透明な部分(外種皮)に含まれる少し甘酸っぱい汁が舌に気持ち良く、
なかなかおいしいものです。
ザクロは西アジア原産の樹木で、アランビアナイトを読みますと頻繁に出てきますが、 乾燥した地方の人々にとってこの爽やかでジュ-シ-な果物は何ものにもまして価値あるものなのでしょう。 ただし、種子そのものは堅く、見かけほど食べるところは多くありません。
いつだったか、ある人から「ザクロの実は人肉の味がするのでしょう」といわれ、 びっくりしたことがあります。そのいわれを尋ねると、その人は安産や夫婦和合の女神とされる鬼子母神の伝説を話してくれました。
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『鬼子母神には子供が500人もいたが性質が大変凶暴で、人間の子供をつかまえては3度の食事としていた。
人々は大変苦しみ、お釈迦様に助けを求めた。お釈迦様は鬼子母神の一番末の子供を捕らえて隠してしまった。
鬼子母神は気が狂ったように子供を探し回ったが子供は見つからない。途方にくれたとき、 ある人の勧めでお釈迦様に助けを求めたところ、「おまえは500人も子供がいて、そのうち1人いなくなっただけでそんなに苦しんでいる。 人間は1人か2人しかいない子供をおまえに食べられているのだ。これらの親の気持ちが分からぬか」と詰問した。
鬼子母神は子供が無事に帰ったら人間の子供を食べるのは止めますと誓い、お釈迦様はその誓いに免じて子供を返し、 「今後、人肉が食べたくなったらザクロを食べよ」と諭した。』
ザクロの葉は枝に対生し、場合によっては数枚輪生しています。枝の一部がトゲになることもあります。花は大変美しく、八重咲のものもあって花ザクロとよばれ、
いくつかの品種があります。ザクロが日本に伝来した10世紀ごろと考えられていますが、そもそもの栽培目的は花の観賞にあったようです(左写真:千葉大学(2000.6.8))。