ヤマモモ  Myrica rubra

ヤマモモ(大阪府都市緑化植物園:2001.6.24)

ヤマモモ (大阪府都市緑化植物園:2001.6.24)

ヤマモモ科* ヤマモモ属 【*APGⅢ:ヤマモモ科】

Myrica: ギョリュウ(樹木の名前) rubre: 赤色の

ヤマモモは中国、朝鮮、日本のやや暖かい地方に自生する常緑広葉樹で、 大阪近辺の、とくに河内から泉南にかけての山にもたくさん生えていますから、 それほど珍しい木とは言えません。かなりの大木になり、幹の直径が1mをこえる事もあるそうです。 庭園や公園にも非常によく使われていますから、街の中でもよくみかけます。

雌雄異株で、雌木にはちょうど梅雨のはじめ頃に表面がザラザラした赤い実をつけ、 食べてみますと甘ずっぱい味がし、中にかなり大きな硬いタネがはいっています。 ヤマモモの実は他に似たものがありませんから、実がなってさえいれば、 他の木と間違えることは決してありません。

しかし、そうでない時にはホルトノキやヤマモガシ、 時にはヒメユズリハなどと混線してしまうことがよくあります。 若木と成熟した木で葉の形が非常に違うときもあり、難しい木の一つです。

ヒメユズリハは葉の表面がロウ白色で、ヤマモモの若葉と大きさもよく似ていて、 遠くから見ただけでは区別のつかないときがあります。しかし1枚1枚の葉をよく見ますと、 ヒメユズリハには非常にはっきりとした長い葉柄があり、とくに葉身とのつけねが少しふくらんだように なっているのに対し、ヤマモモでは葉身がだんだん細くなり、短い葉柄に流れていることで区別できます。

紅葉した葉をつけるホルトノキ(長居植物園 2006.11.4) 一方、ホルトノキやヤマモガシは葉の形がもっとヤマモモに似ていて、一見しただけでは区別が困難です。 しかし、岩田利治著「図説樹木学:常緑広葉樹編(朝倉書店)」によれば、 1枚の葉を陽に透かせて葉脈のようすをみると、ヤマモガシの葉脈は不透明で、 網脈(側脈の間に網目状にはしる葉脈)が見えないのに対し、ホルトノキとヤマモモでは葉脈がはっきりと透けて見え、 両者の区別は、ヤマモモの網脈の目が細かいのに対し、ホルトノキでは網脈の目が大きく、 しかも、閉じた網目になっていないことで簡単に区別できると書いてあります。 また、ホルトノキでは古い葉が落ちる前に美しく紅葉し、また、秋ではなくても、こんな赤い葉がほとんど必ずどこかにありますので、 このことも区別の手がかりとなるでしょう(右写真:紅葉した葉をつけるホルトノキ(長居植物園 2006.11.4))