ヤマアジサイ  Hydrangea macrophylla

ヤマアジサイ(金剛山:2004.6.30)

ヤマアジサイ (金剛山:2004.6.30)

ユキノシタ科* アジサイ属 【*APGⅢ:アジサイ科】

Hydrangea:hydr(水)+angea(容器) macrophylla:大きな葉 subsp.(亜種) serrata:鋸歯のある

7月ごろ、金剛山など大阪近辺の少し高い山に登りますと、青い色の花をつけたヤマアジサイが咲いています。ヤマアジサイの花の基本的なつくりは、家の庭や公園などによく植えられているガクアジサイ(基本種:H. macrophylla)とそっくりですので、はじめてこの植物を見た人が当てずっぽうに名前をいっても半分ぐらいの人が正解するのではないかと思うくらいです。

ヤマアジサイはガクアジサイと同様、葉が対生し、枝先にたくさんの花があつまって散房状集散花序をつくり、花序の周辺部には数個の飾り花がついています。飾り花というのは萼片が花びらのように大きくなったもので、たぶん、花粉を運ぶ昆虫を引き寄せる働きをしているものと思われますが、飾り花自体の雄しべや雌しべはその働きを失っています。実際の種子生産に役立っているのは飾り花に取り囲まれたたくさんの両性花(雄しべと雌しべをもつ)です。

ヤマアジサイはガクアジサイとよく似ていて、ふつう、基本種ガクアジサイの亜種に位置づけられています(学名表記は図鑑によって異なります)。しかし、この両者を間違えることはまずありません。というのは、ガクアジサイ、とくによく植えられている園芸品種はヤマアジサイにくらべかなり大型で、高さが1m以上になります。また株もとからの枝分かれもはるかに多く、枝も太いのに対し、ヤマアジサイは葉が小さく、枝も繊細で、弱々しい印象をあたえます。

ヤマアジサイは分布域が広いため、産地によって葉の形や大きさ、表面の毛の多さなどにかなりの変異があります。また、アマチャという品種は、葉を乾燥させると Phyllodulcin という甘味成分が形成されますので、この葉を煎じて甘茶をつくり、4月8日の花祭りのときお釈迦様の像にかけます。ただし、アマチャとヤマアジサイを外見だけから区別するのは非常に難しいようです。