「名は体をあらわす」という格言がありますが、私はこの木を見るたびに、 このことばを思い浮かべます。夜になると葉を畳んで眠ってしまうから「ネムノキ」だとか、 果枝が珊瑚のように赤いから「サンゴジュ」だとか、木の名前にはその特徴をよく捉えたものが 少なくありませんが、ウラジノキは葉の裏が白いから「ウラジロノキ」、 まさにそのものずばりの命名です。
ウラジロノキは大阪の山でも比較的よく見かけるバラ科の落葉樹で、 高さ数mから大きいものでは10m近くに達します。春先に新芽が出たときは葉の両面が白い毛で覆われていますが、 上面の毛は比較的早く脱落してしまい、表面の濃緑色が目立ってきます。 長枝(ちょうし:長く伸びた枝)には葉がまばらに互生しますが、前年の葉の付け根から出てきた枝はふつう長く伸びることなく短枝(たんし)となり、 枝の先端にはやや菱形をした葉を通常3枚輪生させています。 それぞれの葉には目立った重鋸歯があり、主脈から鋸歯の先端までまっすぐ平行に伸びる側脈が目立ち、 表面でくぼみ、裏面で突出していますので、扇子の面を連想させます。
そして何よりの特徴は、名前の由来となる葉の裏をおおう純白の毛で、 この白さは、夏を過ぎ、秋に入って葉が黄色く色づく頃まで残っています。 大阪の山でこんな白い毛を持つ木は他にありませんから、一度覚えたら忘れることのない木といえるでしょう。
ウラジロノキは単葉をつけますが、同じ属に分類されるナナカマドは紅葉と赤い実で有名で、
羽状複葉をつけます。同じ属の中で単葉をつけるものと複葉をつけるものがあるのは比較的珍しいように思います。
ただし、5つの花弁を持つ白い花のつき方、秋に赤く色づく果実の様子など、
たしかに共通点が多く、同じ属に含めるのがいいのでしょう(右写真:赤い実を付けたウラジロノキ 池田市五月山愛宕神社(2001.10.6))。
ウラジロノキにはごく近縁で、葉の形やつき方がそっくり、 ただ葉の裏に毛がないというアズキナシという木がありますが、 こちらは大阪よりもやや気温の低い地方に分布しています。