ツガは暖帯から温帯にかけて生育するマツ科の常緑性針葉樹です。 大阪市内などの標高の低いところでは、庭園や公園などにときどき植えられているだけで、 ふだんよく見かけるというわけではありませんが、高槻市の山中にある本山寺周辺 (大阪府自然環境保全地域と隣接する国有林)にかなり大きな木が生育しています。 また、箕面や勝尾寺等の国有林のなかにも生育があるとされています。
植物生態学の分野ではよく「モミ・ツガ林」といういい方をしますが、 これはモミとツガが一緒に生えていることが多いからです。このことは、 両者の温度条件に対する分布特性がよく似ていることからも裏付けられています。 モミもツガも非常に大きくなり、高さ30m、幹の直径が1mを越えることがありますが、 個体数という点ではモミの方がかなり多いという印象があります。
モミとツガは一見よく似た形の葉をつけ、紛らわしく思うことがありますが、 注意深く観察すると両者の違いは歴然としており、少しなれれば間違えることはありません。 すなわち、モミの葉は長さ2~3cmあり、先端が2つに分かれていて、 とくに若い木の葉では針のように鋭くとがっています。一方、ツガの葉は1~2cmぐらいで小さく、 大きい葉と小さい葉が入り交じっています。葉の先はへこんでいますので2つに分かれて見えますが、 若い葉でも針状にとがることはありません。
両者の葉は、本来、枝にらせん状についているのですが、モミの方は、枝の両側に平面的に2列に並ぶのに対し、
ツガの方は、細い枝に多少2列に並ぶものの、もっとバラバラについています。
もう少し細かな違いが葉のつき方に見られます。すなわち、モミの葉には葉柄がなく、
枝からまっすぐ出ているのに対し、ツガには長さ1~2mmの短い葉柄があり、枝に平行にすこしいった後、
外へ開いています。こんな事も両者を区別するポイントだと、学生時代に教わりました(右写真:ツガの枝と葉(2001.12.22 京都府立植物))。
さらに、モミの球果は大きく、枝の上に直立しているのに対し、ツガの球果は小さく、写真のように枝先にぶら下がってつきます(右写真:枝先にぶら下がるツガの球果(2000.11.26 京都府立植物園))。