ツバキ Camelia japonica

ツバキ(大阪府都市緑化植物園:2000.2.19)

ツバキ(大阪府都市緑化植物園:2000.2.19)

ツバキ科* ツバキ属 【*APGⅢ:ツバキ科】

Camellia : 人名(Kamel) から japonica : 日本の

日本の南西部のように比較的気候が温暖で、降水量の多い地方には、いわゆる照葉樹林(しょうようじゅりん)とよばれる常緑広葉樹からなる森林が発達します。 日本の照葉樹林を代表する樹木はなんといってもシイ(ツブラジイとスダジイ)ですが、 照葉樹ということばに一番ぴったりする樹木はツバキではないかとおもいます。 分厚い葉の両面がツヤツヤと輝き、春さきに赤い花を咲かせる様子は、 まさに暖地の樹木の代表といって良いでしょう。

金魚椿(2000.2.19:大阪府都市緑化植物園)朴伴(2000.2.19:大阪府都市緑化植物園) ツバキは古くから日本人に親しまれ、室町時代から江戸時代にかけて非常にたくさんの園芸品種がつくられました(写真左:「朴伴」、右:「金魚椿」。どちらも大阪府都市緑化植物園2000.2.19))

また、中国へは遣隋使や遣唐使を通じて伝えられ、観賞用としてよく植えられました。 さらにヨ-ロッパには古く1700年頃中国を通じて伝えられ、非常に好まれて、 多数の品種が作出されました。また、アメリカは現在ツバキの品種改良が極めてさかんに行われているところですが、 ヨ-ロッパはもちろん、日本からも沢山の品種がもちこまれています。

これらの品種改良はそれぞれの国や地方の好みにあわせて行われますから、 例えばアメリカの品種は大輪で花弁数が多く、まるでボタンのような感じのものが多いなど、 野生の赤い一重の椿を見慣れた目には、信じられないようなものさえあります。 こんな訳で、品種の数も他の植物に比べて特別多く、日本だけでも1000種、 外国の品種を含めると5000を下らないといわれています。

ツバキについては、昔は野生のツバキをヤブツバキ、栽培種をツバキとして区別するのが普通でしたが、 最近は単に「ツバキ」として一括してよんでいます。ただ、日本海側の多雪地帯にはユキツバキというやや種類の違うツバキがあり、 これはツバキの亜種とされています。さらに、九州南部から屋久島にかけてリンゴツバキとよばれる大きな果実をつけるツバキが分布しています。 色も形も小さなリンゴに似ていて、うまく名前を付けたものだと思いますが、 果実の大きさの割りに種子は小さく、普通のツバキより小さい位です。 このリンゴツバキはツバキの変種にされています。