トサミズキ  Corylopsis spicata

トサミズキ(京都府立植物園:2000.4.2)

トサミズキ (京都府立植物園:2000.4.2)

マンサク科* トサミズキ属 【*APGⅢ:マンサク科】

Corylopsis:(葉が)ハシバミ属に似た spicata: 穂状花の

春の息吹を感じさせる樹木はたくさんありますが、うす黄色とか、緑がかった黄色の花をつける樹木には派手さがなく、自己主張をしていないだけに、その花を見つけたときはまさに「春・発見!」という感激があります。マンサクやロウバイのほか、トサミズキもそんな花の一つといえるでしょう。

トサミズキはその名前のとおり、四国・高知県の蛇紋岩地帯に分布するマンサク科の落葉低木です。早春、まだ葉が展開する前に6~7個のうす黄色の花を穗状につける風情が大変好まれ、庭や公園などによく植えられています。しかも、この樹木は日本だけでなく外国でも高く評価されており、1863 年に Veitch という人によりイギリスに導入されてから、ヨーロッパ各地でも広く栽培されています。

むかし、私が私市の植物園へつとめ始めたころのことですが、東京の神代植物公園へ行ったとき、3 ~ 4mほどの潅木が淡黄色の花をつけているのをみて、一体なんだろうとよく見ると、それがトサミズキだったのでびっくりしたことがあります。レンギョウもそうですが、大阪ではなぜかトサミズキを極端に強く刈り込んで栽培することが多く、それまで自分の背を越すようなトサミズキを見た記憶がありませんでした。それで、のびのびと枝を伸ばしたトサミズキの花を下から見上げるというのもいいものだと思ったものでした。

ヒュウガミズキ(京都府立植物園 2000.4.2)) トサミズキの近縁種にもっと小型のヒュウガミズキがありますが、こちらもよく庭や公園などに植えられています。さらにもっと近縁のコウヤミズキ(ミヤマトサミズキ)があるそうですが、葉がやや薄く、子房、がく、果実に毛がない点がトサミズキとの違いだそうで、ひょっとするとトサミズキと思っているもののなかにコウヤミズキが混じっているかも知れません(右写真:ヒュウガミズキ(京都府立植物園 2000.4.2))