トウカエデ  Acer buergerianum

トウカエデ(大阪市立大学理学部付属植物園:2000.11.23.)

トウカエデ (大阪市立大学理学部付属植物園:2000.11.23)

カエデ科* カエデ属 【*APGⅢ:ムクロジ科】

Acer:カエデの一種のラテン名から  buergerianum:人名から

カエデ属の植物が世界にどのくらいあるのか、本によって数字が一致しませんが、 少なくとも150種は下らないと考えられ、その中で日本には20種くらいが自生しています。 しかし、その多くは大阪よりやや気温の低いブナ帯のもので、町の中で見かけるカエデの仲間は イロハモミジ、ヤマモミジなど、比較的種類数が限られている様に思います。 しかも、その多くは庭園樹として使われる場合が多く、とくに大阪などの夏の暑さと 乾燥の厳しいところでは、日本原産のカエデが街路樹に使われることは少ないといえるでしょう。

 そんななかで、カエデの仲間で街路樹として唯一使われるものはトウカエデです。 その名前のとおり中国原産で、保育社の日本原色植物図鑑には1721年に日本 (長崎)に導入されたとあります。導入された時期がこんなにはっきりと書かれている例は珍しく、 この年に何があったのかと思って歴史年表をみましたら、江戸小石川の薬園(現在の東京大学付属植物園) が拡充されたと記載があり、このこととなにか関係があるのかもしれません。

トウカエデぱ「唐かえで」ですから、中国でもそう呼ぶのかと思って向こうの図鑑を見ますと 「三角楓」とありました。葉身が3つに切れ込んでいるからでしょうか。 それと、「楓」という字は中国ではタイワンフウをさし、カエデ属の樹木には「槭」 という漢字があてられているのに、トウカエデだけは例外的に 「楓」がつかわれているのも面白いと思いました。

トウカエデの樹肌(大阪府立大学:1999.8.7) トウカエデの中国での分布は長江(揚子江)沿岸各省を中心に、北は山東、 南は遼東、東南は台湾までの広範囲にわたり、標高1000m位の林中にあるとあります。 トウカエデは日本のカエデと違い太い直立する幹があり、また細かなトゲ状の短枝が たくさん出るなど、何となく乾燥した環境に適応した形態を持っているような気がします。 紅葉が美しい上、このような乾燥に強い性質が大都会の街路樹として広く使える理由の一つかもしれません(右写真:トウカエデの樹幹(大阪府立大学 1999.8.7.))