トチノキ  Aesculus turbinata

トチノキ(西宮市緑化植物園:1999.11.24)

トチノキ (左:西宮市北山緑化植物園:1999.11.24 右:大阪市立大学理学部付属植物園:2003.5.3)

トチノキ科* トチノキ属 【*APGⅢ:ムクロジ科】

Aesculus: aescare (食う)から   turbinata: 倒円錐形の

トチノキはブナ、ミズナラ、カツラなどとならび、日本の温帯を代表する樹木の一つで、ときには直径が2メ-トル近くにも達する大木になります。初冬にはきれいに黄葉し、やがて落葉してしまいますが、春になると5~7枚の小葉からなる掌状複葉の葉を2枚づつ対生させます。真ん中の小葉はとくに大きく、幅が10センチ位、長さが20~30センチにもなることがあります。ヤツデ、アオギリなどいくつかの樹木を除けば、日本の落葉樹ではホホノキとならぶ大きな葉身をもつ木ではないかとおもいます。

冬の葉の無い時期のトチノキを特徴づけるのは何といっても大きな冬芽とその表面の褐色の粘液でしょう(右写真:池田市緑化センター(2011.11.14)。大きなトチノキの枝はふつう先端部分でも1センチ近くの太さがあり、特に若くて元気の良い枝では1.5センチ近くになる場合さえあります。そしてその先端の芽は葉柄起源の鱗片でよろいの様に堅く保護されており、さらにその表面が黒褐色の粘液でおおわれているのです(鱗片は本来、葉ですから2枚ずつ対生しています)。この粘液の色が冬の太陽熱を吸収するのに役立つと書いた本もありますが、本当のところどんな役割を果たしているのか良くわかりません。それはともかく、こんなはっきりした特徴をもつ木はあまりありませんので、一度おぼえると一生忘れることがありません。

トチノキは5月頃総状の白い花を咲かせ、秋になると分厚い殻をつけた大きな果実をつけます。殻は3つに割れて中に栗色の大きな種子がはいっています。この種子は渋みがあってそのままでは食べられず、こまかく砕いた後、アクぬきし、さらに水に晒して食用とします。近縁のセイヨウトチノキを英語で horse chestnut (馬栗)、フランス語で marronier(マロニエ)といいますが、これはこの実を家畜のエサにしたことと関係しているとおもわれます。