タラヨウ Ilex latifolia

タラヨウ(大阪府立大学:2000.1.26)

タラヨウ(大阪府立大学:2000.1.26)

モチノキ科* モチノキ属 【*APGⅢ:モチノキ科】

Ilex: 西洋ひいらぎ latifolia: 広い葉の

タラヨウはモチノキ科に属する常緑の高木で、お寺や神社によく植えられています。 ぼってりと硬くて分厚い葉の縁にはとがった鋸歯があり、ところによってはノコギリバ、ノコギリモチなどとよぶことがあるそうです。 京都府八幡市の石清水八幡宮境内にもかなりたくさん植えられていて、 晩秋から初冬にかけて赤い実が目立ちます。 もっとも、多くのモチノキ科の樹木と同様この種も雌雄異株ですから、全ての木に実がなっているというわけではありません。

タラヨウが神社やお寺に多いのは、この木の葉を火にあぶって吉凶を占ったという宗教的な習慣が関係しているものと思われます。 すなわち、タラヨウノの葉を火にかざしますと炎の熱を受けた部分の組織が破壊され、 短時間のうちに黒く変色し、何か絵のようなもようが見えてきます(そのためエカキバ、エカキシバとも呼ばれます)。 このもようが何を意味するのかを占い師が解読するというわけです。 百樹会に限らずどんな植物観察会でも、この木がでるたびにライターやマッチで葉をあぶり、 葉の裏に出るもようを見ると思いますので、植物好きの人にはおなじみの現象だと思います。 何回やっても何となく不思議な気がして、つい、このもようは何を意味しているのだろうかと考えてしまいます。

ところで、葉の組織が熱にあったときにできるこのようなもようを円紋とか死環などといいますが、 どんな樹木の葉にもできる訳ではなく、できやすい種類とできにくい種類があります。 円紋が出るかどうかは、樹木の名前を調べるときに有力な手がかりになります。 タラヨウの属するモチノキ科は円紋が大変できやすいグループですが、 アラカシやシラカシなどのブナ科の樹木にはほとんど現れません。

タラヨウにはジカキバ、ジカキシバという別な名前もあります。 これは葉の裏にとがった物で字を書くとはっきりとした字が書けるのでつけられたものです。 タラヨウとは「多羅葉」のことで、もともとインドで葉の裏にお経の文字を書いたヤシ科の聖木、 多羅樹になぞらえてつけられた名前です。いつだったか大津の日吉神社へいったとき、 あるお宮の入口にタラヨウの葉がおいてあり、それに願文をかいて神前に供えるよう用意してありました。 また、大きめのタラヨウの葉に宛先の住所氏名を書いて、定形外の郵便切手を貼ってポストに入れると、 ちゃんと配達してくれるそうです。