タニウツギ  Weigela horetnsis

タニウツギ(武田尾(宝塚市):2000.5.19.)

タニウツギ (武田尾(宝塚市):2000.5.21)

スイカズラ科* タニウツギ属 【*APGⅢ:スイカズラ科】

Weigela:人名(von Weigel)から horetnsis:庭の、園の

わたしがはじめてタニウツギを知ったのは、まだ学生時分の、確か生態学会のエクスカーションで一泊した比叡山の山頂から歩いて琵琶湖側の坂本まで歩いたときのことでした。時期は5月で、比較的あたらしく造成されたと思われる道沿いに点々と株だち状にはえ、ピンクの花を株いっぱいにつけていました。また、ずっとあとのことですが、滋賀県北部の高時川流域での調査に参加したときも、非常にたくさんあったことを記憶しています。このように、タニウツギのおもな分布域は日本海側が中心で、桑島正二先生の大阪府植物目録によれば、大阪での分布は妙見山、剣尾山、原、箕面など北部山地にふつうとされていますが、生駒山系や金剛山系など南部の山地では自生地が確認されていないようです。

タニウツギの花の形は筒状鐘型で、先は5つに分かれています。また、大きさ8から12cmくらいの葉は対生し、表面にはあまり毛はありませんが裏面には白い短毛が密生しています。

同じタニウツギ属に属し、よく似た潅木にハコネウツギ(W. coraeensis)があって、公園や暖地の植え込みなどによく植えられています。タニウツギにくらべて葉も大きく、花もひとまわり大きいようです。花の形はタニウツギに似ていますが、花筒の中央部以上で急に太くなります。また花色は、はじめ純白ですが後に濃い赤色になり、赤と白の花が入り交じって咲いているようにみえます。ですから花の咲いているときに両者を区別するのは容易です。また、ハコネウツギの葉の裏には毛がほとんどありませんので、葉裏に毛を密生させるタニウツギとは区別が可能です。

なお、大阪には同じ属に属するヤブウツギがあり、南部の山地に生えています。花冠が濃い赤色で全体に毛で被われていますので、一目で区別がつきます(右写真:住吉大社「卯の花苑」(2000.5.14))