タムシバ  Magnolia salicifolia

タムシバ(神戸森林植物園:2001.4.2)

タムシバ (神戸森林植物園:2001.4.2)

モクレン科* モクレン属 【*APGⅢ:モクレン科】

Magnoria:モクレン   salicifolia:ヤナギに似た葉の

日本には、コブシやホオノキなどモクレンの仲間がいくつかありますが、タムシバもそのひとつです。大阪ではそれほど目立つ木ではありませんが、信州などの雪国では、まだ新葉が展開する前に枝いっぱいに白い花をつけるタムシバは、コブシとともに春の到来を象徴する木として大変親しまれています。

大阪や奈良の山を歩いていますと、道ばたに小さな芽生えなどが生えていますし、秋から初冬にかけてはコブシに似た実が落ちていますから、タムシバがそんなに珍しい木というわけではまったくありません。それにも関わらず、大阪近くでこの木が早春の樹木としてそれほどもてはやされないのは、ウメやサクラなど華やかな木が他に多く、山の中でひっそりと咲く白い花がそれほど目立たないからかもしれません。

コブシとタムシバは、花の時期に遠くから見ただけでは区別が困難ですが、近くで見ると、コブシの花のすぐ下に小さな緑の葉があるのに対しタムシバではこれがないことで区別できます。また、花のない時は、タムシバの若枝は汚れた緑色で細く、葉の表面に明らかなシワがあり幅の広いコブシにくらべて、タムシバの葉は細長く、表面は緑色、裏面はやや白味を帯びていることで区別できます。なお、コブシもタムシバも、モクレン科の特徴として、葉の付け根のところに枝を一周する細いすじ(托葉痕:たくようこん)があります。

ところで、タムシバという変な名前は「噛む柴」に由来するとされ、葉を噛むとやや刺すような刺激とともに少し甘い味がすることから来ています。とくに秋の落ち葉では香りとともに甘さがはっきり分かります。

学生時代、なくなられた三木茂先生にこのことを教わり、いつまでも葉をしがんでいたら、「あまり噛んでると毒ですよ」といわれたことをおぼえています。