タイサンボク  Magnolia grandiflora

タイサンボク(大阪府立大学:2000.6.1)

タイサンボク(大阪府立大学:2000.6.1)

モクレン科* モクレン属 【*APGⅢ:モクレン科】

Magnolia:人名から grandiflora:大きな花

タイサンボクは北アメリカ原産のモクレンで、日本へは130年ほど前に導入されました。裏側へ反りかえった葉は硬くて大きく、表面は黒緑色でツヤツヤ光り、裏面は鉄サビ色のフェルト状の毛で被われています。日本の気候にうまくマッチしたのか各地で大木になり、ちょうど梅雨時分に白い大きな花を咲かせ、和歌や俳句にもうたわれるなど人々にたいへん親しまれています。

ゆふぐれの泰山木の白花はわれのなげきをおほふがごとし  斎藤茂吉
六月の青葉ぬらして降る雨のなかにも匂う大盞木の花  宮原あつ子

タイサンボクを見るたびに、こんな葉を持つ木はどんな環境に生えているのだろうと考えてしまいます。日本の樹木にはタイサンボクほど硬い葉をもった木はあまりないように思います。ウバメガシの葉は硬いのですがタイサンボクのように大きくありません。タラヨウは大きくて分厚い葉をもちますがタイサンボクほどクチクラ層が発達しておらず、また葉の裏にも毛がありません。

タイサンボクの分布域 ビワやツクシシャクナゲには葉の裏に毛があり、その点では多少タイサンボクに似ていると言えるでしょうか。そう思ってアメリカの図鑑や解説書を読みますと、自然分布域は右の地図のようにフロリダ半島を中心にしたメキシコ湾沿岸の暑い地方で、とくに、ミシシッピー河などの大河の河辺にできた崖や、松しか生えない湿地の周辺などが分布の中心だと書いてありました(U.S. Dept. Agr.(1949):Treesほか)。ジャクソンビルやニュ-オ-リンズの年降水量はおよそ1300~1500ミリで大阪などとあまり変わりませんが、年平均気温は約20度で大阪よりも4℃ほど高いようです。夏、亜熱帯なみの暑さと湿度を持つ日本にこの木が適応できたのも当然かもしれません(分布図はhttp://en.wikipedia.org/wiki/Magnolia_grandifloraによる)

もっともタイサンボクは耐寒性も強く、ヨーロッパの温帯地方でもたくさん栽培されています。ただし、気温の低いヨーロッパでは花の咲く時期が夏の終わりから秋にずれ込むようで、開花までにかなり長い時間が必要なようです。