タビビトノキ (オウギバショウ) Ravenala madagascariensis

タビビトノキ(石垣市バンナ公園(1997.1.1.))

タビビトノキ (石垣市バンナ公園(1997.1.1))

バショウ科* タビビトノキ属 【*APGⅢ:ゴクラクチョウカ科オウギバショウ(Ravenala)属】

Ravenala:マダガスカルでの名前   madagascariensis:マダガスカルの

東南アジアの熱帯へ初めていったのはもう何十年も前のことですが、野外にこの木が植わっているのを見たときはやはり感激でした。自分自身初めての海外旅行で何となく不安な気持ちでしたから、道を失った旅人たちに進むべき方向を指し示すという(当時はそのように聞いていました)この木が何となく頼りになりそうな気がして、長い間眺めていたのを思い出します。私が東南アジアで見たのはいずれもそれ程大きなものではありませんでしたが、本によりますと高さが10mくらいに達するそうですし、時には一枚の葉だけで10mくらいになると言われています。

咲くやこの花館(06.1.6.) マダガスカル原産のタビビトノキ(Travelers' tree)は、一見ヤシのような幹をしていますがバショウ科に属しています(右写真:咲くやこの花館 2006.1.6)。長い葉柄の先に大きな葉身のある葉を、ちょうど正面に向き合う形で出していきますので、全体が一枚の扇(おうぎ)を広げたような平面的な形になります(それでオウギバショウとも呼ばれます)。そして、この面が磁石のようにいつもある一定の方向を指しているというので、旅人に方角を教えるという意味のこの名前がついたという説があります。しかし、実際に葉が指し示す方向は全くでたらめで、この説はすぐ破綻してしまいます。

それではなぜタビビトノキかと言えば、葉柄の付け根を傷つけると細胞の中の清浄な水が出てそれを旅人が飲むからとか、葉柄の付け根のところにたまった水を旅人が飲んで渇きをいやすからとか言われています。しかしこちらの説もあまり根拠のないことのようで、とくに、葉の付け根にたまった水には虫の死骸やドロが一杯たまっていてとても飲める水ではなく、そもそも、タビビトノキは湿地の植物だから旅人が水不足に悩むことはないはずだとケンもホロロに書いた本もあります。