シナノガキ (リュウキュウマメガキ)  Diospylos japonica

大阪市立大学理学部付属植物園:2013.10.13

シナノガキ (大阪市立大学理学部付属植物園:2013.10.13)

カキノキ科* カキノキ属 【*APGⅢ:カキノキ科】

Diospylos:dios(神の)+ pylos(果実) japonica:日本の

枚岡神社(大阪府東大阪市)の社殿よこから梅林の方へ歩いていきますと小さな谷があり、橋がかかっています。その橋のすぐ下、右岸からかなり大きな木が谷を渡るように生え、左岸側で高く立ち上がっています。最初は何かわからず、持ち帰った小枝を乾燥標本にして何度も見ているうち、葉の表面が暗緑色、裏面が灰緑色で、何となくクロモジ属を連想しましたが、クロモジ属にこんな大木になるものはなく、長い間わたしの悩みのタネでした。それが、いつだったか、グリーンレンジャーの行事の時に完全に解決しました。この木に実がなっていて、シナノガキとわかったからです。

シナノガキはリュウキュウマメガキともよばれ、大阪府下でもまれに採集記録があり、桑島正著「大阪府植物目録」(近畿植物同好会,1990)には、本山寺、槙尾山、犬鳴などの地名があげられています。その名のとおりカキの仲間ですが、ふつうわれわれが賞味するカキにくらべはるかに小さな果実(直径1~2cm)しか実りません。また、カキにくらべて葉はかなり小さくてやさしく、先端はとがっており、成葉では表面、裏面ともにほとんど毛がありません。さらに、新鮮な葉では葉脈の透視性はカキにくらべて著しく明瞭です。

シナノガキの分布図を見ますと、この種は四国・九州には多いものの本州での分布密度は低く、とくに長野県には分布がありません。そういう意味ではシナノガキという名前よりリュウキュウマメガキの方が誤解が少ないかもかも知れません。

ところで、シナノガキによく似た種にカキ渋をとるために栽培されるマメガキがあり、牧野の植物図鑑ではこれをシナノガキとしています。こちらは葉柄が8~12mmと短いのでシナノガキ(1~3cm)と区別できます。

マメガキは果樹として広く栽培されるカキとともに、古い時代に中国から導入されたと考えられています。