シダレヤナギ  Salix babylonica

中之島公園のシダレヤナギ(1999/8/30)

シダレヤナギ (大阪市北区・中之島公園(1999.8.30))

ヤナギ科* ヤナギ属 【*APGⅢ:ヤナギ科】

Salix = sal: 近い + lis:水 babylonica + バビロニアの

シダレヤナギの種小名、バビロニカは中東のバビロニア産のという意味ですが、実は中国原産の 樹木で、日本へは非常に古く、奈良時代には導入されていたといわれています。本来、 非常に大きくなる木で、特に水辺ではよく育ち、細い枝を水面近くまでたらした様子は大変 うつくしいものです。早春、3月上旬から中旬にかけて花が咲き始めたころは、細い糸に黄緑色の 小さなツバメが一列にぶらさがっているように見え、それが1日ごとに大きくなっていくのを見る のは毎年の楽しみです。

ヤナギ科の樹木は全部雌雄異株で、シダレヤナギも例外ではありません。さっき、ツバメが一列に 並んだように、と書いたのは、ひとつ一つが花弁のない雄花または雌花が沢山あつまってできた円柱 状の花序(尾状花序)とそのつけねについている数枚の苞葉がそのようにみえたのです。

シダレヤナギに一見よく似た樹木にウンリュウヤナギ(写真左:大阪市北区中津 1999.9.3)があります。シダレヤナギとおなじように 細い枝が(黄)緑色をしていて、ただ、枝がやたらにクネクネまがっているのです。葉の形も大変よく 似ているので、きっとシダレヤナギ(写真右:大阪市北区中之島公園 1999.8.30)と同じ種だろうと思っていましたが、実は Salix Matsudana cv. 'Tortuosa' という別の種になっていました(cv.は栽培品種 であることを示す記号)。

ところで、中国の図鑑を見ていると何か薬として使っているような記載がありましたので、 日本の原色薬用植物図鑑(保育社)をみましたところ、「(シダレヤナギの)枝を柳枝(りゅうし)、 葉を柳葉(りゅうよう)、花を柳花(りゅうか)、根を柳根(りゅうこん)、樹皮および樹根からコルク皮 を除いたものを柳白皮(りゅうはくひ)、毛のついた種子を柳絮(りゅうじょ)と呼び、それぞれ薬用に 用いる」とあり、具体的な薬効として「柳枝は消炎、利尿、鎮痛、去風の効があり、尿白濁、肝炎、 黄だんなどに用い、柳葉は消熱、利尿、解毒の効があるとして、うんぬん」と、それぞれの薬効と 適応症がのべてありました。薬になる成分は、鎮痛解熱作用のある salicin という物質で、 ヤナギやポプラの類には広く含まれ、世界中で多くのヤナギ科の植物が風邪薬に使われているそうです。