セコイア  Sequoia sempervirens

セコイア(西宮市北山緑化植物園(1999.9.12)

セコイア (西宮市北山緑化植物園(1999.9.12))

スギ科* セコイア属 【*APGⅢ:ヒノキ科】

Sequoia:人名(言語学者 Sequo-yah)から sempervirens:常緑の

セコイアオスギの樹幹標本 セコイアという木の名前は、たしか中学生の頃メタセコイアを知ったときに知りましたが、実物を見たのはずっと後のことでした。交野市私市にある大阪市立大学理学部附属植物園ではじめて見た木はまだ細く、これが本の写真で見たような、幹をくり貫いて馬車が通るほどの巨木になるとは信じられませんでした。もっとも、馬車道を通すため幹をくり貫いたというのは、今では別属 (Sequoiadendron) に分類されるセコイアオスギ (S. giganteum) のほうですが、日本では虫害がひどくこの木を見る機会はあまりありません(神戸市立森林植物園にはセコイアオスギの巨大な幹断面の標本が展示されています(写真右:神戸森林植物園(2000.5.4))

セコイアの樹幹(1999.10.11) セコイアは世界で最も背が高くなれる木として大変有名で、現在生きている木の最高記録が何メートルか正確には知りませんが、110mを越える木の生存記録もあり、また、幹の根元の直径も8.5mを越えるものがあり、樹齢も2500~3000年以上に達するといわれます。右の写真は市大植物園の「二の谷」広場にあるものですが、30数年前に定植されたわたしの在職当時にくらべ格段に大きくなり、セコイアらしい風格が出てきたと思います(セコイアの樹幹(大阪市立大学理学部附属植物園 1999.10.11))

樹木はどれほどまで大きくなれるのかというのはなかなか難しい問題です。まず第一に、その種が遺伝的に大きくなれる性質を持つことが必要ですし、また、その木に遺伝的性質があるだけではたぶん不十分で、大きくなった自分の重さを支え、ちゃんと立てるだけの物理的な強さも必要でしょう。そういう意味では、すぐに幹の中心材が腐って空洞になってしまうムクロジなどは、見かけ上幹が太くなってもそれほど背が高くなることはできません。セコイアが樹高100mを越えるほどの高さになれるのは、幹の木部にタンニンなどが集積し、材が非常に腐りにくくなっていることが重要な条件なのです。

セコイア分布図 また、その場所の気候条件なども非常に重要で、破壊的な台風のくる日本ではたとえセコイアを植えても大きくなることはできません。セコイアのはえているのは米国カリフォルニア州の太平洋岸に連なる Coast Rages と称される山地の、幅8~75km、南北約750km、標高30~750mの範囲で、谷地形の所などでは純林を作ったり、ツガの仲間やモミの仲間とともに高さ70から80mという、日本では考えられない巨木林が帯状に点々と分布しているそうです。このような場所は、冬、比較的暖くて雨が多く、夏は雨は少ないものの、カリフォルニア海流という寒流の影響を受けて、いつも霧がかかり、露として大量の水分が供給されるような「温帯多雨林」とよばれるたいへん特殊な環境の所です。