センリョウ  Sarcandra glabera

センリョウ(花明山植物園:2010.11.6)

センリョウ (花明山植物園:2011.11.6)

センリョウ科* センリョウ属 【*APGⅢ:センリョウ科】

Sarcandra:肉質の雄しべ glaber:無毛の

千両の黄と紅活けてことほぎぬ        春光

センリョウ(千両)は、その名が富を象徴し、マンリョウ(万両)とともにお正月飾りにはなくてはならない植物として、昔から珍重されてきました。しかし、茎の先端に対生するみどり鮮やかな2枚の葉の間に、真っ赤な実が群がってついている姿の華やかさ、美しさを考えると、仮に、にまったく違った名前をもっていたとしても、きっと大切にされてきたに違いないと思います。各地の日本庭園などで木陰などに植えられ、冬の彩りとして欠かせないものになっているのも当然といえましょう。センリョウにはキミノセンリョウという黄色い実のなる品種もあります。

於茂登岳のセンリョウ(石垣市:1996.12.30) センリョウは大阪には自生せず、また、わたし自身、娘の住む石垣市にある於茂登(おもと)岳に登ったとき初めて見るまで野生のもの(右写真:石垣市於茂登岳 1996.12.30)を見た経験がなかったのですが、下にしめした分布図からも分かるように、日本では関東地方の太平洋側の海岸域から四国、九州、沖縄にかけての暖地の林床に成育する植物で、分布はさらに中国中南部、フィリピン、インドシナ、マレ-半島、アッサムにおよんでいます。

多少名前が似ていて、やはりお正月には欠かせないマンリョウ(ヤブコウジ科ヤブコウジ属)とは、分類的には無縁で、センリョウの方はかなり原始的な性質を残した植物とされています。それは茎の中の水を通す組織がふつうの被子植物のような導管ではなく、裸子植物と同じ仮導管でできているからです。また、花は黄緑色で、6-7月頃に咲きますが、花弁や萼はなく、球形の雌しべ(子房)に1本の雄しべがくっついているという変わった形をしています(下の図は、園芸植物大事典から引用しました)。赤く熟した果実をよく見るとその先端に小さな黒い点があり、さらに少し離れてもっと小さな(ルーペで見ないと分からないぐらい)点があります。果実の頂上の点は雌しべの柱頭(花粉をうける場所)のなごりで、もう一つの点は雄しべがくっついていたなごりです。

なお、山草として有名なヒトリシズカ、フタリシズカも同じセンリョウ科ですが、雄しべの数は1本ではなく、3本あります。

(広島にお住みの吉本悟さんから、一緒に生えている暖地性のコバンモチの写真と一緒に、「『野山の木」の分布地図では抜けているが、センリョウは時々広島の神社や海岸の樹林で見ることが出来る」、という情報をいただきました。堀田先生の分布図は多少読みかえて見る必要がありそうです(2002.1.16)。)