「栴檀は双葉より芳しというが、その栴檀はまったく別の植物で、こちらのセンダンは変な匂いがする。」 最初にこの植物を教えてくれたメタセコイアの命名者、三木茂先生がこういわれたのを覚えています。 ことわざにいう香木の栴檀はビャクダンのことで、熱帯の半寄生植物ですから日本では育ちません。
日本で言うセンダンはセンダン科に属する高木で、公園や学校、それにお墓の中などで大木になっているのをよく見かけます。
若い幹や枝は紫色を帯びた褐色ですが、太い幹では縦にすじが入り、
大きなものでは直径30~40cm、高さ10数メートルになります。
樹冠を大きくひろげ、5月の中旬頃、複散形花序にたくさんの花が咲きますが、
よく見ますと花弁は5~8枚あり、外側が淡紫色、おしべはお互いにくっついて筒状になり濃い紫色になっています(写真:大阪府立大学(1999.5.17))。
葉はふつう2回羽状の複葉で、長さは数10cmに達することがあります。
ただし、小葉そのものはそれ程大きくなく、また、葉の量も多くないので明るい樹陰をつくり、
威圧的な感じはありません。直径2cmほどの花は比較的早く落ちてその後に親指ほどの緑色の果実がたくさんでき、
秋には黄白色に熟して、葉の落ちた冬まで残ります(写真:池田市五月山(2011.11.30))。この木のタネに穴を開けて糸を通し、数珠にすると聞いたことがあり、
またそう書いた本もありますが、それにしてはタネはそれ程美しくも堅くもなく、どうもそれほど一般的ではないような気がします。
センダンは、むかし楝(おうち)といい、平安時代には獄門の前に植えて罪人の首をかけました。 今でも、病人が絶えないとか家運がかたむくといって屋敷に植えるのを嫌うところが多いといいます。 一方でセンダンは葬式と関係が深く、火葬の薪や死者の杖にするほか棺桶にもされ、 岡山地方では、これで棺(ひつぎ)を作ると冥土の道が明るいとされているそうです。