サザンカ Camellia sasanqua

サザンカ(1999.11.27:長居植物園)

サザンカ(1999.11.27:長居植物園)

ツバキ科* ツバキ属 【*APGⅢ:ツバキ科】

Camellia: 人名(Kamellia)から sasanqua: サザンカ

サザンカは冬の花ではありますが、木枯らしのイメ-ジはなく、むしろ、おだやかな小春日和や無風の霜の朝というイメ-ジが強いように思えます。 よく晴れた冷たい朝、人家の塀ごしに純白のサザンカが咲いているのを見ると、 その日一日なにか良い事がありそうな気がします。

よく知られているように、サザンカはツバキと非常に近い仲間の植物で、 どちらも日本の常緑広葉樹林(照葉樹林)をいろどる重要な樹木です。 ただ、ツバキにくらべて分布の範囲がかなり狭く、 自生地は沖縄、九州、四国の西部、本州の山口県に限られています。 したがって、大阪近辺で野生のサザンカを見ることはありません。 わたしが野生のサザンカを最初にみたのは熊本県水俣市でコジイ林の調査をしていたときの事ですが、 そのあたりの民家には、お茶の花に似た感じのクリ-ム色がかった花を付けたサザンカがたくさん植えられていました。

ツバキとサザンカをくらべますと、ツバキの方が葉が大きく、ツヤツヤとよく光っているのに対し、 サザンカは葉が小さく、葉柄などには短い毛が生えていて、ツバキほどのツヤはありません。 しかし、もっと大きな違いは、ツバキではおしべの根元のところが互いにくっついて筒状になっているのに、 サザンカではバラバラであること(ヤブツバキでは花弁も筒状にくっついています)、 めしべの付けね(子房の部分)がツバキでは裸で毛がないのに対し、 サザンカでは白い毛でおおわれていることです。 ですから、花弁をむしって行き、めしべだけを取りだしますとはっきりと両者を区別できます。

長居植物園にて(1999.11.27) サザンカには江戸時代から非常にたくさんの品種がつくられています。 花色も純白から濃い赤みがかった桃色までさまざまあり、 また、花型も多様です。

最近公園や街路にシシガシラという、背の低い、枝を横の方へ広げたような樹形のサザンカがよく植えられています。 花はやや花弁の大きい八重咲き(ピンク)です。 また、花色がもっと濃い桃色~赤紫で、花の小さい寒椿(散椿ともいう)もサザンカの一種です(右写真:長居植物園(1999.11.27))