サツキ  Rhododendron indicum

サツキ(東京大学小石川植物園(2000.6.3)

サツキ(東京大学小石川植物園(2000.6.3))

ツツジ科* ツツジ属 【*APGⅢ:ツツジ科】

Rhodon: バラ + Dendron: 樹木 indicum: インドの

サツキ(大阪府立大学 200.5.17)
5月に入ったころから6月にかけて赤紫色の小さな花をびっしりと咲かせるサツキは、もともと本州西南部から九州、屋久島にかけての渓流沿いの岩場にくっつくように生えている潅木ですが、本州や九州で実際に野生のサツキをみかける機会は多くありません。また、四国にはサツキの自生はないとされています。しかし、なぜか屋久島にはおびただしい量のサツキが生えていて、わたしが野生のサツキを初めて見たのも屋久島でした。株もとからさかんに枝わかれし、小さな葉をすきまなく密生させたようすは、まるでクッションをおいたような感じがします。大雨が降って川が増水したときには水で根が洗われるような岩のわれめなど、植物の成育環境としてはかなり厳しい条件のところでも成育できるという点でユニ-クな樹木と言えるかもしれません。大きなお屋敷の石垣などにはよくサツキが植え込まれていますが、これは本来の自生地の姿をあらわす一方で、必ずしも最適とは言えない条件のところでも丈夫に育つこの樹木の特徴をよくあらわしています(右写真:大阪府立大学 2000.5.17)

サツキは上にのべたような渓流沿いのところだけでなく、ふつうの土壌条件のところでも非常によく成育します。そのため、日本の公園や庭園には必ずといってよいほど植えられており、現在、日本の庭木類の中では最も多く、1年間におよそ1億本も生産されています。サツキが丈夫で繁殖が容易であり、また刈り込みによって自由に形をつくることができ、花だけでなく密生した常緑の葉の美しさを1年中楽しむことができるためでしょう。

サツキは庭木としてだけでなく、花を楽しむために盆栽として栽培されることも非常に多い樹木です。すでに江戸時代にはサツキの栽培ブ-ムが起こり、近縁のマルバサツキなどとの交配により、全国各地で多数の品種が作り出されました。現在までに作り出された品種の数は2000とも5000ともいわれています。サツキの品種には葉の形が丸みをおびていたり、花形や花色がずいぶん変わったものがありますが、これは何代も交配を重ねるうち、祖先の形質が様々な形であらわたものといえるでしょう。