サトザクラ  Prunus Lannesiana var. Lannesiana

サトザクラ(大阪造幣局:2001.4.18)

サトザクラ(大阪造幣局:2001.4.18)

バラ科*(サクラ亜科)サクラ属 【*APGⅢ:バラ科サクラ(Cerasus)属】

Prunus: スモモの古ラテン語 Lannesiana: ラネス(人名)の

サクラ類の園芸品種には花弁が一重のものと八重のものがありますが、これらの大部分はオオシマザクラを母種として育成されたもので、 一般にサトザクラと呼ばれています。サクラの園芸品種にはほかにヤマザクラ、オオヤマザクラ、 カスミザクラ、エドヒガンなどから育成されたり、突然変異でできたもの、かけ合わせによってつくられた雑種群などがあります。

 古くから知られている園芸品種のうち、現存しているものは少なくとも300品種以上といわれていますが、 なかでもよく知られ、外国でも人気の高いものはオオシマザクラ系の品種群(サトザクラ)です。 造幣局の桜の通り抜けは大阪の人々にとって大変なじみの深い行事ですが、 サトザクラの主な品種をみるのにも大変都合のよい機会です。 園芸品種の中には樹勢が弱いものがあり、造幣局のサクラも毎年何本かが枯死して別な品種に入れかわっているようです。 それでも、大きく木が育ち個体数も多い丈夫な品種がいくつかあり、 なかでも関山(かんざん)とよばれる濃紅色の花弁をもった八重桜は特に有名で、 公園や庭木としてもよく植えられています。

雌しべが大きく葉化した松月の花(大阪造幣局:2000.4.23) ところで、サトザクラの中にはめしべが小さな葉になっているものが少なくありません。 そのもっとも有名なものが普賢象(ふげんぞう)とよばれる品種で、 白色~淡紅色の八重の花弁の真ん中から2枚の小さな緑葉がちょうど象のキバのような形に外側にまがって突き出して、名前の由来になっています。 しかし、めしべが小さな葉になるという性質については、普賢象によく似て花色がもっと白い松月(しょうげつ)という品種の方がが著しいようで、 松月の花をよく探すと写真のように雌しべがかなり大きな緑葉になっているのを見つけることがあります(写真右:雌しべが大きく葉化した松月の花(大阪造幣局:2000.4.23))

一つの花を作っている花弁やおしべ、めしべは、光合成器官である葉と全く無関係な器官のような気がしますが、 実はこれらはすべて葉から進化してきたもので、普賢象や松月の葉化しためしべはこのことを如実にしめす例として有名です。 また、一葉(いちよう)という品種もめしべが緑の葉になる品種ですが、 こちらはめしべが一枚なので一葉というわけです(ただし、しばしば2枚の葉が出るそうです)。