サンゴジュ  Viburnum awabuki

赤い果実をつけたサンゴジュ(99.8.19)

赤い果実をつけたサンゴジュ (大阪市北区 99.8.19)

スイカズラ科* ガマズミ属 【*APGⅢ:レンプクソウ科】

Viburnum:樹木の名前(意味不明)  awabuki:アワブキ(木の名前)

八尾の高校から大阪市立大学の植物園へ転勤して、最初の仕事らしい仕事は 安藤萬喜男さんにくっついて大阪市内の公園や学校をまわり、大気汚染の植物影響を 調べることでした。多少植物を知っているつもりでしたが、実際に公園を まわってみますと知らない樹木がつぎつぎと出てくるのにびっくりした記憶があります。 そんな中で、なぜこんな名前がついているのか理解に苦しむという木が幾つか ありましたが、サンゴジュもそんな木のひとつでした。

常緑の厚い葉が太い枝に対生し、大気汚染には大体において強いようなのですが、 中には出城公園(今宮駅のちかく)でのように、棒のように立った数本の短い幹に 小さな葉がついているのをみますと、今さらのように大気汚染のひどさを実感したことを 今でもよくおぼえています。ヒマラヤスギと同様どこの公園にも必ず植えられて いましたので、樹勢の地域的な分布から大阪の大気汚染の様子を把握するには 大変好都合な樹木のひとつでした。

こんなことで、サンゴジュという名前はいやでもすぐに覚えましたが、 この木がなぜ「サンゴ」なのかは、なかなか理解できませんでした。 いまから考えますと、夏から秋にかけても調査していましたから、どこかで赤い枝に 真っ赤な実をつけたサンゴジュをみかけ、なるほどこういうことかと納得する機会が あってよかったはずですが、そういう記憶がなかったのは実を付けるほど元気な木が 多くなかったからかも知れません。

サンゴジュはガマズミやコバノガマズミなどとおなじガマズミ属の樹木ですが、 これらの樹木が落葉性なのに対し、サンゴジュは常緑性です。5月頃白い花を さかせたあと、夏の終わりから秋にかけて、上の写真のように真っ赤な実をつけた果枝 (果実を付けた枝)全体が赤く色付き、まさに「サンゴ」という感じになります。 この頃にこの木の名前を聞きますとまさにそのものずばりで、決して忘れることはないでしょう。 この赤い枝は、実が熟し終わりますと枝全体が幹から落ちてしまいますので、 「サンゴ」らしいサンゴジュを見るにはこの時期しかありません。