ロウバイ Chimonanthus praecox

ロウバイ(2000.1.26:大阪府立大学)

ロウバイ(2000.1.26:大阪府立大学)

ロウバイ科* ロウバイ属 【*APGⅢ:ロウバイ科】

cheimon: 冬の+ anthos: 花
praecox: 早咲きの

真冬に咲く木の花といえばサザンカや早咲きのツバキなど案外たくさんあるものですが、 最初に思いつくのは不思議にマンサクやロウバイなど目立たぬ花の場合が多いようです。 どちらも厳しい冬の寒さの中にひっそりと咲き、見る人がふと花の存在に気がつく、といった奥床しさが魅力なのかもしれません。 両者が共にお茶花として珍重されるのも理由のあることです。

ロウバイは高さが4mくらいになる落葉樹で、対生した葉は比較的大きく、長さが15cm前後、幅4~5cmあり、 表面がザラザラしています。夏にこの木を見てもそんなに美しい木とは思えません。 しかし、1~2月、早ければ12月頃から、完全に落葉した枝にくっつくようにして、直径2cmくらいで、半透明でロウ細工のような淡黄色の花がつきます。 しかし、色に派手さがないのでそれほど目立ちません。原産地は中国で、牧野の植物図鑑によれば後水尾天皇のころ(17世紀始め)、 朝鮮より渡来したとありますから、日本への導入の来歴がよく分かっている珍しい例かもしれません。

ロウバイ(素心)の花  この花の構造は普通の花と違って花弁や萼(がく)の分化が明確でなく、たくさんの「花被片」が集まってできています。 花の中心にたくさんのめしべがあり、その外側に数本のおしべがあります。 そして、花の中心から離れた花被ほど形が小さくなり、最後は鱗片状になってしまいます。ですから、花被の数は花ごとに違いますし、ふつうの感覚で言う花弁がどこまでなのかもいうのが難しいわけです。

ところで、ふつうのロウバイでは中心部分の花被片(内層花被)は暗褐色をしていますが、 時にはこの花弁も外側と同じ黄白色をしたものがあり、「素心蝋梅」として珍重されています。 これは芳香も強く、苗木の値段もふつうのものより高価なようです。