ピラカンサ  Pyracantha spp.

ピラカンサ(大阪市北区:2003.11.16)

ピラカンサ (大阪市北区:2003.11.16)

バラ科* (ナシ亜科) タチバナモドキ属 【*APGⅢ:バラ科】

Pyro = 炎(黄熟した果実の色)+acantha = 刺(枝の)   spp. = 複数の種があることを示す

もう、何年も前のことになってしまいましたが、筑波大学へでかけてそこの分析装置をお借りし、朝早くからほとんど徹夜で水の中の窒素やリンの分析をしたことがあります。早朝、人気のない大学構内の一画に、全く剪定をしていないピラカンサの植え込みがあり、野放図にのばした枝いっぱいに、真っ赤な実をつけているようすが、思いもかけず美しかったことを、今でもよくおぼえています。それまでは、ピラカンサというのは樹形がまとまらず、剪定なしでは造園的に使い物にならないと思っていましたので、荒々しい野生美がとくに印象が深かったのかも知れません。

ふつう、一口にピラカンサといっていますが、実は2~3種類のものを全体として差しています。約20年位前には、タチバナモドキ(P. angustifolia)とよばれる、実の色がやや黄味がかったミカン色のものがそのほとんどをしめていたように思いますが、今では色がもっと赤く、沢山の実をつけるカザンデマリ(P. crenulata 、ヒマラヤピラカンサともいう)が大変多くなりました。 タチバナモドキの方は5~6cmの線状楕円形の葉の裏や枝の表面が短い綿毛で覆われており、また、先が鋭いトゲになった細かな枝をたくさんだしますので、生け垣によくつかわれています。和名のタチバナモドキはその実の色がミカン色であるところから来ているものとおもわれます。

一方、カザンデマリ(ヒマラヤピラカンサ)の方は、葉の形もタチバナモドキにくらべてかなり大きく、裏には毛がありません。また実の数もタチバナモドキにくらべてずっとたくさんつきます。それで小さな植木鉢に植え込み、盆栽のように仕立てて園芸店などでよく売られています。また、公園や学校の校庭などにも比較的よく植えられています(実の色が黄色のものもあります)。

ピラカンサにはこのほかトキワサンザシ(P. coccinea)など数種類がありますが、いずれも枝の出方にはあまり規則性がなく、いわば、でたらめに枝を出した感じで、まとまった樹形になりません。これは、この仲間がノイバラのように、元来、林縁部とか伐採跡や山火事跡のような荒れ地の植物であることをしめしているのかも知れません。