モミジバスズカケノキ(プラタナス) Platanus ×acerifolia

モミジバスズカケノキ(大阪府立大学:2000.11.26)

モミジバスズカケノキ (大阪府立大学:2000.11.26)

スズカケノキ科* スズカケノキ属 【*APGⅢ:スズカケノキ科】

Platanus:platys:広い(葉の形)acerifolia:カエデのような葉の
(×は雑種をしめす記号)

スズカケノキの樹幹(小石川植物園:2000.6.3.)モミジバスズカケの集合果(大阪府立大学:2000.6.7.)) プラタナスは、ポプラとともに日本でも最もよく使われている街路樹のひとつです。もちろん、街路樹だけでなく、公園木としても頻繁につかわれますから、この木を見たことのない人はまずいないと思います。本来、非常に大きくなる木で、高さ30メ-トルは平気で越すでしょうが、街路や公園では毎年強い剪定を受けていますので、その様な大木を見ることはありません。一見、ウリハダカエデやテツカエでのようなカエデの仲間に似た形の葉をしていますが、葉が互生していることや、実(集合果)がゴルフボ-ルのような丸い形をしていることなどでカエデと無関係であることがすぐにわかります(ちなみに、「鈴懸け」とは能楽で山伏の扮装に使われる丸いボール状の飾りのついた結袈裟(ゆいけさ)のことです)。ふだん私たちが見かけるプラタナスのめだった特徴は、幹の樹皮が不規則な形のかなり大きな薄板状にはがれ、その後が緑色や緑白色のまだら模様になることです(写真左:モミジバスズカケの集合果(大阪府立大学 2000.6.7)、.写真右:モミジバスズカケの樹幹(東京大学小石川植物園 2000.6.3))

図鑑をみますと、スズカケノキの仲間には2つの基本種があります。ひとつはスズカケノキ (Platanus orientalis) でヨ-ロッパから小アジア原産、もうひとつはアメリカスズカケノキ (P. occidentalis) で、名前のとおり北アメリカ原産とされています。しかし両者のあいだには雑種 (モミジバスズカケノキ) があって、世界の温帯地方の都会で沢山植栽されています。プラタナスの葉の形に、切れ込みの比較的浅いものや深いものが色々あるものですから、わたしは日本でもこの3種類が混じって植えられているものと思っていました。しかし、東京大学の小石川植物園などをのぞき、この2つの原種はめったに植えられていないため、目にする機会はほとんどありません。

外国の図鑑で葉の形をみますと、スズカケノキでは葉の切れ込みが非常に深く、葉身の半分くらいまで達しており、また、丸い集合果も1本の柄に数個つくそうで、確かにこんな木を見たことはありません。また、アメリカスズカケノキでは、樹幹に縦の深い溝ができ、集合果は1つづつ枝先につきます。また、葉の形は葉身の長さより幅の方が広く、切れ込みも大変浅くなっています。集合果が1つづつつくという性質は日本で見るたいていのプラタナスで見られますが、葉の切れ込みはかなり大きく、下の写真のような葉のものはふつうには見かけません。

こんなわけで、日本の公園や街路でみかけるプラタナスは、葉の切れ込みが中ぐらい、集合果の数も1本の柄に1~2で2つの原種の中間的性質をしめしており、全部雑種のモミジバスズカケノキとみなしてよいようです。


スズカケノキ(上)とアメリカスズカケノキ(下)の葉身(左)および樹幹(右)。いずれも東京大学小石川植物園にて(2000.6.3)